二歩前を歩く

著者 :
  • 光文社
3.36
  • (10)
  • (39)
  • (86)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 287
感想 : 71
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929343

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 短編で読みやすい。石持ワールド。

  • 一見スピリチュアルな現象を論理的に解き明かしてオチを付けるという手法はミステリでは珍しくありませんが、本作はスピリチュアルな現象を論理的にスピリチュアルであると証明していくという珍しい短編6編。非論理的推理過程が気になる著者ゆえ、逆にこちらの方が説得力を増すようです(笑。特に最終話は秀逸◎。

  • 証明されていないことが無いことだとは言えない。
    僕は可能性を捨てていないだけです。
    研究者小泉とその周辺に起きるちょっぴりホラーな短編集。

    超常現象をさらりと推理する小泉がかっこいい!
    ホラーでオカルトなのになぜか科学的な気さえしてくるあたりが石持マジック。
    救いようのない結末のお話もあったけど最終話「九尾の狐」でほっこり。
    このまとめ方も素晴らしい。

    いつも思うことだけど
    この作家は内容もさることながらタイトルが秀逸。
    今回も新刊案内を見た瞬間に読まずにいられないと思った。
    これも石持マジックか。

  •  前作『三階に止まる』を読んでいる石持ファンは、こう思っただろう。嗚呼、そっちに行っちゃったのね…。あの1編がターニングポイントになったのか?

     うーむ、大変内容を説明しにくい作品集である。あらすじすら書けない。探偵役はある会社の研究職の男、小泉。一応理系の僕が思うに、彼は柔軟性が高く、むしろ理系としては珍しいタイプだろう。研究者としても優秀に違いない。

     全6編とも、小泉は社内の知り合いからの相談に乗る。「一歩ずつ進む」。おい、そこまでわかっていてそれでいいのか…。「二歩前を歩く」。おい、さっぱり解決していないがそれでいいのか…。「四方八方」。最初からドン引きだが、結末もドン引き…。

     「五ヵ月前から」。最後まで言わないのは小泉の優しさなのか。「ナナカマド」。このご時世にこんなことが起きたら万々歳だが、意図を知ったばかりに…。それにしても、読み解く小泉も小泉だが、この会社はこんな社員ばかりでいいのかよ。

     最後の「九尾の狐」だけ毛色が違う。意外といえば意外だが、そもそも石持さんはこの手のネタは得意だったはず。このような作品集をこのようにまとめられるのは、石持浅海だけ。新機軸のようで、やることは同じ。ファンなら苦笑しつつも許せるだろう。

     石持マニアの満足度はそれなりに高いと思うが、一般読者には薦めにくい。石持作品の傾向を熟知していてこそ、こういうネタも感慨深いが、普通のミステリファンが受け入れられるかどうか。最初に読む石持作品にしてはいけない。

     『三階に止まる』に収録のあの1編は、本作に含めた方がよかったかもしれない。あの1編で心構えができていたとも言えるし、意外性を削いでしまったとも言える。今後このシリーズを継続するのか、注目したい。

  • 「理系だからこそ、現代科学ではわかっていないことは山ほどある」という小泉の言葉にはっとした。
    鵜呑みにして信じこむか、頭から否定してかかるか。それが文系のとりがちな行動である、とも言える。
    確かに、科学的な証拠を揃えて否定するまでは、あるともないとも言えないのが「超常現象」というものだろう。
    そうやって、小泉は論理的に解明していこうとするわけだ。仮説、実験、検証の手順を踏んで、なおかつ残るもの。それがこの作品に描かれている物語というわけだ。
    結びつけ方がとても面白かった。
    押さえつけていた蓋が外れて、隠していたものが溢れてくる様子が、時にホラーっぽく、時にしんみりと描かれている。
    「ナナカマド」という増えるガソリンの話がどうにもやりきれなかった。

  • 一から順にカウントアップするのかと思ったら、飛んでる数字もあるのね。
    大体ラストがちょっと怖いけど、まぁ読めないほどじゃないかな。
    超常現象かも、て話も途中まで出て来ないし。

  • ホラーなのかな?
    ミステリーなのかな?
    小泉氏がお父さんっていうのが1番、謎めいてる。

  • オカルト現象を科学的に解明しようとする面白い作品。解決しないものもあり、皮肉が効いている結末もあり割と好みです。

  • 2022.3.20読了

  • 超常現象とミステリーが合体したような作品。短編で読みやすいけど、オカルト要素もあって、ちょっと怖かった。。

  • 最初の異変は、脱ぎ散らかして出かけたスリッパが、帰宅したときに揃っていたことだった。
    独身の「僕」の部屋には出入りする人間もいないのに。
    それから毎日、帰宅するたびスリッパは少しずつ奥の方に移動していって…。
    スリッパは、ひとりでに、一歩ずつ進んでいるのか!?
    「僕」は同僚の研究者・小泉に相談を持ちかけた(「一歩ずつ進む」)。
    六作品を収録した異色のミステリー短編集!
    (アマゾンより引用)

    何か幽霊っぽいお話ばっかりでした。

  • 超常現象(霊的な)に見舞われた人が、小泉さんという同僚に推理してもらうお話。オカルト要素あるので、怪談嫌いな人はご注意。

    座間味くんシリーズみたいなテイストだが、探偵役が実際の現場や当人と知り合い。

    とりあえず超常現象なんだけど、起きちゃったこととして置いといて、「なぜ」「どのような目的で」起きたかを思考する。

    (以下少しネタバレ)




    最後のお話だけ読後感悪くないものにする作者の気遣いがさすが。

  • 「三階に止まる」と雰囲気が同じ短編集、と思ったら謎解きをしてくれる小泉さんが共通なのでした。不思議なものを相手にするのですが、小泉さんは出来事を論理的にとらえ超常現象としての理屈と説明をつけてしまいます。「発見されていないことと、いないことは同一ではない」として幽霊の存在を理系として否定しないところが印象的です。背筋がぞわっと寒くなる物がばかりかと思っていましたがラストの書下ろしは意外にも後味が優しくて嬉しくなりました。不思議な魅力の小泉さん。話が進むと彼の生活が垣間見れたりするところも楽しかったです。

  • ミステリ。オカルト。短編集。
    『NOVA5』で読んだ短編「三階に止まる」と似た雰囲気のホラーミステリ。
    特殊な設定でのミステリ、という意味では著者らしい。
    どの作品も似たような展開ではあるが、どれも結構面白い。
    最後の「九尾の狐」が爽やかな結末で、読後感が良い。

  • ミステリ+オカルト短編集。
    小泉さんの、謎解明一歩手前まで持っていって、あとを主人公に任すスタイルがいい。
    最後の「ナナカマド」の林田さんみたいな女子いいな。

  • 10/10/2016 読了。

    図書館から。

  • さらりと読めた。
    ホラーに分類されかねない出来事を、あくまでも超常現象として片づけていく。「一歩ずつ進む」はヒヤリとする結末だったが、それ以外はなぜか後味が悪くない。

    …これはストーリーとは関係ないしこの作品に限った話ではないけれど、ソフトカバーに多い上下の余白が苦手だ…もうちょっと文字詰めてくれ、と思ってしまう…

  • 理系超常現象系ホラー。
    最後の話に全て持って行かれた感がある。
    というか、最後の話は書き下ろしだから、連載だけを読んでいた人はもやもやしたままかもしれないと思ったり。
    まあ別に謎を解くというより、こうしたら原因わかるのでは?と言われた体験者が、それをやってみて原因を探るということなので、ミステリではないか。
    こういう系で後味が悪いのも仕方がないと思いつつも、そればかりではつらいしなあ。

  • 後からゾワッとくる話ばかり。
    1番の謎は小泉だけど。
    何もかもお見通しなのに答えは自分で導き出すようにもっていくだけで裁かない。
    何者?
    『五ヶ月前から』と『九尾の狐』が好きです。

  • 誰も動かしていないのに玄関のスリッパが動くというような不思議な現象が起きて、それを検証して理由を暴く。
    おちに驚いた。驚かされた。

  •  ホラーとミステリがうまく融合されていて、すごく好みな感じでした。
     
     両方の要素がある場合、京極堂シリーズのように、怪奇現象のように見えて実はちゃんとカラクリがありました、という作品が結構多い。でも、この作品では、怪奇現象が起こる「原因」についてはミステリ的手法で解き明かすけど、怪奇現象そのものは依然としてそこにある。

     例えば、トイレに花子さんが出たとして、花子さんが死んでしまってトイレに出るようになった経緯は科学的、理論的に証明されるけど、花子さん自身は幽霊として確かに存在している的な。
     
     怪奇現象については、スリッパが勝手に進むとか、ガソリンが減るといつの間にか給油されているとか、派手じゃないけど「何それ!?」と興味をそそられるものが多いです。ラストはホラーとしてのオチもついていて、なかなか怖い。最後の話だけはちょっとほっこりする内容でした。

     連作短編になっていて、どの話でも「小泉」が登場人物から相談を受けて謎を解き明かします。各話の主人公たちは何らかの罪を犯している人が多く、それが怪奇現象の引き金になっているのですが、小泉に相談する前に自分の胸に聞いてみたらどうなんだ。心当たりありすぎでしょ!

     中には展開が読めてしまった話もありましたが、全体的にはミステリとしても、ホラーとしても楽しめると思います。

  • 石持浅海らしかった。上手く数字が組み込まれててどの短編も楽しめたけど、テーマの都合上か似てしまっているので若干単調に感じる。
    一歩ずつ進む、がいちばん好き。ナナカマドはラストが納得いかない…。

    三階に止まるは何故これに収録されなかったんだろう?

  • 静かにぞわりとさせられるような、不気味な短編集。
    最後の話のおかげで後味も良い。

  • 石持浅海の、怪奇系ロジカルミステリ。連作短編集。
    非科学的な現象に対し、その発生理由をロジカルに解き明かしていく、という作品集。
    結構面白かった。
    フーダニットやハウダニットが丸ごと削がれているのはさすがに少し寂しく、ミステリとしては評価しがたい。
    しかし、人外のなにかが、人間味溢れる理由でささやかに生活に入り込んでいく感じは、温かいエンターテイメントとして読み応えがある。
    作品が、1-2-4-5-7-9と進んでいくのも、遊び心があって好き。
    「ナナカマド」はどこの雑誌で既読だった。一番好きなのは「五ヶ月前から」だろうか。
    3-

  • 2015.5.12

  • 幽霊的なものが存在する世界における安楽椅子探偵もの。
    ホラーテイストだが、連絡短編でパターンがわかってしまうと、あまり怖くなくなってしまう。ネタはホラーなのだが。
    なので最初の「一歩ずつ進む」が、もしやそう来るのか?しかし? という感じで、一番怖さはあったかも。あと、こういう人がそういうことしてるって話なんだろーか、というのもまだわからなかったので。
    しかし、この小泉の同僚たち、ヤバすぎでしょう。いわゆるDQNじゃないのにDQNなことしすぎ。そこが石持ワールドではある。
    現実に考えると一番怖いのは表題作。見えないものにいつ後ろから突き飛ばされるかわからないなんて怖いわー。
    下種さ爆発なのが「四方八方」。もお石持っぽいなあ、と思ったが、そういえばこれによく似た実話があった…。というかそれだけじゃなくよくある話かも。現実の方がもっと下種で怖いかも。ごめんなさい石持さん。
    「ナナカマド」は、ミイラ化した水子の足が脇腹に刺さるってそんなことありえんのかよと笑った。ミイラのほうが損壊しそうなものだが。
    「九尾の狐」でなんかほっこり締めにしているのが石持っぽくなかった。
    ほかに「五カ月前から」を収録。

  • うひょー!星新一?じゃあないけど同じ読後感。久しぶりだなあ、この感じ。小泉さんいいですね。

  • ホラーだと何でもありになってしまうからなー。

  • 超常現象と論理という相反するものが見事に組み合わされている。

  • ・家に戻るとスリッパが勝手に位置が変わっている。
    (一歩ずつ進む)
    ・道を歩いていると向かって歩いてくる人が必ず
     ぎょっとした顔で二歩前で避ける。(二歩前を歩く)
    ・亡き妻の髪の毛を壁一面に貼り付けた男(四方八方)
    ・朝、消したはずの風呂場の照明が、
     帰宅すると必ずついている(五ヶ月前から)
    ・車のガソリンが残り三割になると必ず
     勝手に七割ほどまで増えている(ナナカマド)
    ・先輩のポニーテールが、自分に仕事を頼む時に
     意思を持っているかのように二つに割れる…
    (九尾の狐)など6話収録。

    たまたま図書館で見つけてこの作者さん
    最近読んでないな~と借りたのですが
    思ったよりも面白かったです。
    ミステリだと思うと「ん?」となりますが
    SF(すこし不思議)かホラーテイストで
    楽しめました。

    連作短編集ですが、それぞれのタイトルに
    数字が入っていたりで凝っているわりに
    最後の話で共通の登場人物である小泉自身の
    話になるかと思ったらほったらかしで終わったのが
    残念。でも最後にほっこり話が来たので
    後味は悪くなかったです。

    全くどんな内容か知らなかったので怖!と
    思ったのは「一歩ずつ進む」
    本気でホラーではないか…とおののいたのが
    「四方八方」。

全71件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

1966年、愛媛県生まれ。九州大学理学部卒。2002年『アイルランドの薔薇』で長編デビュー。03年『月の扉』が話題となり、〝碓氷優佳シリーズ〟第1弾となった05年『扉は閉ざされたまま』(祥伝社文庫)が 「このミステリーがすごい!」第2位。同シリーズの最新作に『君が護りたい人は』(祥伝社刊ノン・ノベル)。本作は『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社文庫)の続編。

「2022年 『Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石持浅海の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×