反転: 闇社会の守護神と呼ばれて

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344013438

感想・レビュー・書評

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  • 大阪地検と東京地検の特捜部所属検事として、数々の経済事件の摘発に関わったものの、政・官権力による事件もみ消しに嫌気がさしバブル絶頂期に検事を辞職、”ヤメ検弁護士”として、山口組など暴力団や仕手筋、自民党清和会などの顧問弁護士を歴任した後、石橋産業手形詐欺事件で被告となり今年2月の最高裁判決で有罪確定して現在服役中である著者の自叙伝。
    ベストセラーになりましたね。
    今年の正月に図書館に予約して、貸出がまわってくるまでに半年かかりました。

    著者は戦中生まれで長崎の平戸の極貧農家で育ち、苦学して司法試験に合格した、という経歴の持ち主。
    検事時代にも弁護士時代にも、多くの闇社会の実力者たちと深く付き合うわけですが、彼らの多くが極貧・被差別などに苦しめられながら生まれ育っていたことにシンパシーを感じるとともに、そういうたたき上げの人間だからこそ巨大組織や巨額の資金を動かす立場を務めるだけの人間的魅力を備えていることを肯定的にとらえています。
    暴力団についても、「必要悪」という言葉こそ使わないものの、複雑な権利が絡み合った状況を解決するには不可欠な存在として、その役割を積極的に評価しているふしがそこかしこににじみ出ているし、バブル時代についても、当時飛び交っていた札束の異常さを認めた上で、敗戦直後どん底から這い上がった日本経済のある意味頂点であった、というような捉え方で振り返っています。

    戦後二回り目世代である自分からすると正直こういう感覚にはなかなかついていけないものがありますが、もしかしたら敗戦直後の極貧生活からの高度成長を経験した世代にとっては広く共感を得る感覚なのかもしれません。
    著者を含め、バブル期にこの世を謳歌した”バブル紳士”たちは、バブル崩壊後20年近い時間を経る間に、その罪を問われたりすでに鬼籍に入ったり、今では”過去の人”になってしまいました。
    また、経済の長期低迷、自民党一党独裁体制の揺るぎなど日本社会が変容していく中で、政官財の強力な依存関係に基づく表・裏の権力構造の在りようも姿を変えていってのは事実なんだろうとは思います。
    が、一方で、著者が長年経験してきたような、裏社会の権力が表社会の権力を支えるような構造がまったく無くなってしまったとも思えない。
    戦後日本の発展をある面で支えてきた闇社会が、その秩序構成力を衰えさせながらも残存している、そうした状況が現代日本社会に軋みとして現れているのかもしれません。

  • 著者は、元検事の弁護士。弁護士といっても、普通の弁護士ではなく、ヤクザや犯罪者、ほぼ犯罪者の顧問や弁護をするアウトロー弁護士(アウトローのローヤー?)。2008年1月現在、石橋産業手形詐欺事件で有罪判決を受け、最高裁に上告中である。こういう特異な人が、自身の半生を書き記したのが本書である。 本書前半によると著者は長崎の平戸生まれで幼少期は極貧の生活で苦労したらしい。その生活を抜け出すため定時制高校卒業後、苦労して大学へ。その後一発で司法試験突破。当時は裁判官を目指すも、ちょっとしたトラブルに巻き込まれ、裁判官を断念、検事となる。主に政治事件、経済事件を担当した。本書では、政治家等の圧力により、立件をあきらめたり、立件したものの全貌を明らかにすることが出来なかった事件などを、政治家や、有名経済人の実名入りで暴露している。 後半では、検事をやめ弁護士へ転進した著者が関係をもったヤクザ、バブル紳士、政治家などに絡んだ事件についての暴露が続く。体制側から、非体制側に立場を移したため、アウトローを弁護する側に回ったことが、本書題名の「反転」なのだろうが、これにより事件の捉え方も、まさに反転する。しかし、この本全体に流れる一種独特の正義感は、反転した前後で変わりがなく、著者の一本筋が通った人間性が垣間見れる。裏世界の様相、登場人物に興味ある人には面白いと思う。

  • 闇社会の守護神、田中森一の自伝/ イトマン事件、石橋産業事件、宅見組長暗殺事件、の詳細/ 許永中は義理堅く自分のための嘘はつかず話は明快で筋を通すタイプ、伊藤寿永光は憎めないキャラクターで人に好かれるが嘘つきで信用できない/ 宅見勝のフランス入院事件は安倍ちゃんの父親が手配した/ 宅見勝は体調が悪く五代目若頭を退こうと考えていた、後任は弘道会司忍と言っていた、その後釜を巡って暗闘があった/ 石橋産業の手形詐欺は検察のでっち上げ/ 石橋産業は兄弟の内紛、弟の株は共政会関係者から許永中へ、兄は住吉会福田晴瞭の舎弟を頼った/ イトマン事件は地方銀行から全国展開したい住友が悪い/ 許永中と伊藤寿永光を使って貸付残高を詰みたがった/ 住友は被害者でなく加害者/ 裁判で許永中を裏切って判決を軽くすることも出来たが、許永中側に回って闘った/ 結果懲役三年/ 「田中森一はあれだけ親密にしていた許を裏切った」と言われるのが我慢ならなかった/ 無茶苦茶面白かった/ 
    石原俊介の黒幕、三井住友銀行秘史、宅見暗殺実行犯のヒットマン、を合わせて読むといい/

  • その「時代」はまだ子どもだったのであまりよくわかっていない部分(新聞報道など)はありますが、壮絶だし、読ませるし、おもしろいです。
    ここまで書いていいのか、という話も当然あると思うのですが、2018年の現在では過去のこと。ただし、2007年発売なので、その時は確かに話題になっていたような。。。
    この本のあと、今は「住友銀行秘史」に進んでいます。。

  • なかなか面白かった。
    人生イイことばかりでなないよ。しかし、努力があってここまで、のし上がられていることは読んでいてよくわかったし、その分、離れていったものも大きかったんだと思う。

    正解はない。

    しかし、ここまで書いていいのか?というところまで書いてあったが、これ、本当なんだろうなぁ。。。

  • オフィス樋口Booksの記事と重複しています。記事のアドレスは次の通りです。
    http://books-officehiguchi.com/archives/4011877.html

    序章では石橋産業手形詐欺事件の公判で判決が言い渡される場面から始まる。第1章からは、生い立ち、検事になってからの活動、弁護士への転身、弁護士になってからの人脈、石橋産業手形詐欺事件の審判へという流れで展開されている。この本を読んで、イトマン事件や住専などの話題が出てくるので、中には当時のことを思い出した人もいるだろう。

  • 面白かった
    いかにして絵を描いて、供述を取って行くか

    そろばんを高速で弾いて、脱税額を指摘して見せるとか
    調書をなんども破いて、被疑者の心に罪悪感をかきたてるとか
    あるいは図らずも相手に持たせた凶器の日本刀について
    「おれがここで振り回すと思わなかったのか」
    と感服して自供するとか

    また国策捜査、として誰を狙うか
    あるいは捜査をいかにしてつぶすか

    19 許永中の狭心症、判決で卒倒
    42 誰も住まない家に5000万円
    47 車代、1000万円3回

    57 デモ参加は女子と仲良くなるため
    79 知事と裁判長以外は挨拶に来る、検事正着任
    82 国税・税務署の腐敗はやりたがらない

    84 マスコミ利用
    89 被疑者起訴で特別報奨金。選挙違反やるとウハウハ
    114 人定、素肌の上にワイシャツ。コイツ遊び人や

    120 ゲイの費用を裁判で隠す
    127 家宅捜索で警官がネコババ、大阪のゲーム賭博
    130 警視庁、スマートでビジネスライク。大阪は古風で職人気質

    141 自白、畳み掛ける時。顔から血がひく。脂汗。
    143 ヤクザより始末悪い同和
    147 家の庭に豚や牛の生首

    149 調書に信用性を持たせるテクニック
    153 経済事件、人間のずるさ発露
    159 大阪の出納長。首相が検察と手打ち

    167 内部からの嫌がらせ。男の嫉妬
    170 ロッキード事件
    172 江坂、関西の同和地域の中でも聖地と呼ばれるほどの被差別地域

    175 金屏風事件
    178 大阪で検事正が引退すると読売と住銀が顧問企業をあっせんする
    179 筋書きありき?平和相銀事件

    185 商事法務で論文合戦
    212 刺青で皮膚呼吸できない??
    229 許永中、ロマネコンティ買占め

    231 1万円が100円の感覚
    235 中岡信栄、金バラまく。拓銀つぶす
    256 西成、住民票移すと、腕っこきでも取り立て諦める

    267 山口敏夫の不始末、しつこさ。
    270 ヤクザと政治家
    287 ライブドア事件

    289 仕手戦、300~500億円。数十人がグループ
    290 終了間際の買い注文で上げ気配にする
    291 インサイダーの抜け道。海外経由で金流す

    294 誠備の加藤、口堅い。ファンがいる。稲川会会長の男気
    295 仕手戦に政治家紹介
    299 株の世界は非情

    304 イトマン事件、伊藤の地上げ成功に住銀がほれ込む
    307 磯田の娘への親バカ遠因?
    315 後藤田、検察人事に影響力持つ唯一の政治家

    326 末野、預金通帳みせびらかす。支払い、ためて値切る
    333 裁判よりトップと交渉
    336 ヤクザへのお守り代を経費にする。裁判で始めて言う。
    重複質問できないとこを突く
    337 偽の破門状でヤクザに執行猶予
    363 バブル紳士は騙しあいの勝ち組

  •  素行の悪い兄弟を持つことで裁判官を目指す。激貧の中であっても機転を利かしながら周囲の助けを得て見事、司法試験に合格する。その後は地方検事から東京地検特捜部と活躍するが、大きな事件ほど、検挙はするが上層部の壁に阻まれ立件出来ないことに苛立ち、あっさり検察を辞職する。一転、ヤメ検として弁護士の看板を掲げ資産を急速に増やし、一時は自家用ヘリまで持つに至る。

     バブル時に政治家は暴力団を使い上手に甘い蜜を吸うのに忙しい、私利私欲が渦巻き正義は行われない。ヤメ検の著者もそんな時代に翻弄されて、結局は詐欺容疑で逮捕起訴される。砂上に立てられた城は見事に崩れ落ちるのだった。

  • 何度も出てくる人物が、親の知り合いだと聞かされて驚きながら読んだ。
    すごい内容だった…

  • 人にはそれぞれの考え方がある。

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著者プロフィール

田中森一(たなか・もりかず)

 1943年、長崎県に生まれる。岡山大学法文学部在学中に司法試験に合格。1971年、検事任官。大阪地検特捜部などを経たあと、東京地検特捜部で、撚糸工連汚職、平和相互銀行不正融資事件、三菱重工CB事件などを担当。その辣腕ぶりが「伝説」となり、名声を博す。1987年、弁護士に転身。2000年、石橋産業事件をめぐる詐欺容疑で東京地検に逮捕、起訴され、無罪を主張するも実刑が確定。4年8ヵ月の獄中生活を経て、2012年11月に出所。
 著書には30万部のベストセラーになった『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』、共著に『検察を支配する「悪魔」』などがある。

「2013年 『塀のなかで悟った論語 現代人を癒す24の答え』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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