絆: 山田浅右衛門斬日譚

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344013643

感想・レビュー・書評

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  • 土壇場って、ここから来ていたんですね代々、「公儀御様御用(刀の鑑定士)」の職を生業としている山田浅右衛門。その中でも七代目である吉利を題材にした連作短編。同時に死罪人の斬首の職もしており、こちらがメインとなった話。各話の死罪人が罪人となってしまった経緯、そして、その無念、心残りを受け止め、西方浄土をひたすら念じ、首をうつ浅右衛門の慈愛が随所に感じられる。家業を継ぐ息子達の苦悩もアリ。すがって来た者を救えなかった無念を書いた「病魔」や、袂を分かった弟子の行く末を書いた「新人剣」もおもしろかった。首打ちや、その遺体を使った試し切りなど、過激な描写もあるので、血が苦手な人は要注意!

  • 「首斬り役人の山田浅右衛門を呼べ」といった言い回しは,誰かがミスをしたときの軽口として使ったりするのだが,その浅右衛門については何も知らなかった.考えてみればそれが歴史上ただ一人のことではなく,代々継がれていく名前であるというのも当たり前なのだが,そのことさえも新鮮に感じられるほど.いかにして罪人の首を斬っていくのか.「土壇場」など刑場の様子の描写.斬首後の罪人の体を使って刀の切れ味を試す山田流試刀術.罪人の肝から作られる労咳の薬.当代の山田家当主である吉利の視点からさまざまなことを教えてくれる.

    山田流試刀術に関する情報量が多いうちは,成り行きで人を殺してしまった町人の話などシンプルなストーリーから始まる.やがては,心得違いをして吉利のもとを離れていく者の顛末,辻斬りによる門人の斬殺など山田家との関係が深まった話に展開してゆく.最後に,門人の長州藩士が吉田松陰の救出を企てて捕らえられるくだりとなってはじめて時代背景が幕末であることに気づかされる.後半に向けて一気に読ませる.

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著者プロフィール

1946年埼玉県生まれ。埼玉大学教育学部卒。90年、『剣の道殺人事件』で第36回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。近年は剣豪・時代小説の分野で活躍し、「はぐれ長屋の用心棒」「まほろし銀次捕物帳」「闇の用心棒」「八丁堀剣客同心」「流想十郎蝴蝶剣」シリーズなど作品多数。

「2023年 『剣狼の掟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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