残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344018853

作品紹介・あらすじ

ワーキングプア、無縁社会、孤独死、引きこもり、自殺者年間3万人超など、気がつけば世界はとてつもなく残酷。だが、「やればできる」という自己啓発では、この残酷な世界を生き延びることはできない。必要なのは、「やってもできない」という事実を受け入れ、それでも幸福を手に入れる、新しい成功哲学である。

感想・レビュー・書評

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  •  経済小説作家の著者による、風変わりな“自己啓発書”。「風変わり」というのは、本書が既成の自己啓発書に対する根源的批判を土台に書かれているからだ。
     「あとがき」には、次のようにある。

    《この本は、自己啓発のイデオロギーへの違和感から生まれた。
     能力に恵まれた一部のひとたちが、その能力を活かして成功を目指すのになんの文句もない。でもぼくは自分が落ちこぼれだということをずっと自覚してきたから、「努力によって能力を開発しよう」といわれるとものすごく腹が立つ。その一方で、「能力がなくても生きる権利がある」とナイーヴにいうこともできない。いくら権利があったって、お金が稼げなければ生きていけないのだから。》

     この短い一節の中に、本書の立ち位置が言い尽くされている。

     少し前の「勝間和代対香山リカ」論争の読み解きから始まる本書は、脳科学や進化心理学、遺伝学、動物行動学など、さまざまな学問の知見を自在に駆使して、自己啓発イデオロギー(能力は開発できる・わたしは変われる・他人を操れる・幸福になれる)の「間違い」を完膚なきまでに論破していく。能力は増強できないし、わたしは変えられないという、身も蓋もない話がさまざまな角度から論証されていくのだ。

     といっても、自己啓発書をバッサバッサとやっつけていくような、下品で威勢のよい本ではない。著者の語り口はウイットに富み、すこぶる知的で上品。本書自体が現代社会論として価値をもっている。

     著者は経済の専門家ではあっても科学者ではないから、本書で開陳されるさまざまな科学的知見は、ありていに言ってほかの本からの受け売りだ。
     しかし、地の文に引用を織り込んでいくやり方がすごくうまいので、「人のフンドシで相撲をとっている」感じがしない。積み重ねた受け売りを、著者独自の見識として構築し直しているのだ。そのうまさたるや、凡百の自己啓発書とは別次元にある感じ。
      
     能力は増強できないし、わたしは変えられない。よって、「わたしは変われる」を前提に幸福を約束する自己啓発書の内容も、眉ツバと言わざるを得ない。
     ……と、そこで終わってしまったら夢も希望もない本になってしまうが、本書は最後に“いまの自分のままで幸せをつかむ方途”を教えてくれる。

    《残酷な世界を生き延びるための成功哲学は、たった二行に要約できる。

     伽藍を捨ててバザールに向かえ。
     恐竜の尻尾のなかに頭を探せ。》

     「はじめに」で提示されたそんな言葉の謎解きは、終盤――4章の最後と終章でなされている。意味については、本書を読まれたし。

     既成の自己啓発書のようにやるべきことを具体的に指南してくれる本ではないが、私は十分啓発された。“グローバル時代の幸福論”としても面白く読める。

  • いやはや。おもしろすぎる。
    この橘玲。ただ者ではない。
    沢山の本をベースにして、論理を展開する。
    本の紹介のまとめ方が じつに シャープなのだ。

    「この世界が残酷だと言うことを、ぼくは知っている。
    国家は市場に対してあまりにも無力で、
    希望は永遠に失われたままだ。」

    ①能力は開発できる。→開発できない。
    勝間は言う「やれば出来る」「努力すれば報われる」
    →自己啓発ブーム。
    →無限の能力、無限の可能性。→学習と訓練。
    インディペンデントな生き方が必要。
    「経済的独立がなければ、自由もない」
    Think and Grow Rich
    ②私は変われる。→私は変われない。
    ③他人を操れる。
    ④幸福になれる。
    勝間は言う「努力をすると、より簡単に幸せになれる。」
    →努力しないのは自分の責任である。

    「仲間との競争に勝って異性を獲得し、
    自分の遺伝子を残そうと思えば、
    もっと得意なものに資源を集中するのが、最適な戦略なのだ。」

    「伽藍を捨ててバザールに向かえ。」
    「恐竜の尻尾の中にアタマを探せ。」

    適者生存の競争原理。
    敗者は淘汰される運命にあり、社会が不平等なのは、
    当たり前で、努力しない貧者を救済することは有害である。
    努力しない者に生きていく資格はない。
    運動能力が、遺伝的な要因は認めるが、
    知能が、遺伝できまると言うのは不平等を容認する。
    知能(IQ)は、70%は遺伝によって決まる。
    知能は 記憶力と概念理解にわけられる。
    犯罪が 遺伝するのではなく、
    ヒトが犯罪者になるのは、環境のセイである。
    グローバル化では、格差社会の到来が不可避である。

    シンボリックアナリスティックサービス
    (クリエイティブクラス)が20%の富裕層に。
    インパースンサービス
    ルーティンプロダクションサービス

    手持ちの資本を総動員し、市場を活用して
    「利益」を最大化する複雑なゲーム。
    人種や国籍、性別、宗教や思想信条、容姿や家柄、出自で評価しない。
    学歴、資格、職歴(経験)で評価する。
    人的資本を介して教育と富が直結することで「自己啓発」の終わりなき競争。

    マクドナルドは、空腹から満腹に移動するために利用できる最適な方法。
    量と時間が重視される。意外な驚きがどこにもない。
    快適性の秘密がある。合理的なシステムは、快適。
    仕事がマニュアル化されていないと、個々の判断に責任が発生する。
    能力主義と合理化(マクドナルド化)が、合体する。


    好きなことに夢中になれるように遺伝的にプログラムされている。
    好きな事が市場で高く評価されているわけではない。
    好きな事を仕事にすれば成功できるなんて保証はない。

    権力ゲームは、集団の中で一番になること。
    爱(生殖)と友情(仲間)が大事。それから、貨幣が加わった。
    返報性の掟ー何かしてもらったらお返ししなければならない。
    贈与と返報性。そして マイナスの贈与が復讐。
    一貫性がないと信用できないことで、社会的価値をなくす。
    そのために、一貫性の罠に落ちる。
    抗争の目的は、武力によって叩き潰すことではなく、
    抗争しないことである。
    心とは、相手の気持ちを知るためのシミュレーション装置。
    生き延びること。社会秩序を保つこと。楽しむこと。
    「評判を獲得」ゲームには、金銭の介在によって機能しなくなる。
    幸福になるためには、快楽だけでは足りない。
    「幸福とは旅の目的ではない。旅の方法である。」

    ふーむ。おもろいね。
    努力しても、変われないことが 重要なのだ。

  • 岡田斗司夫さんが「影響を受けた」と公言する橘玲さんの本を初めて手に取った。震災前の本なので流石に目新しい主張はないが、「日本人ならではの認知バイアス」が数多く説かれている。この「自分で築いた自分を閉じ込める檻」から解き放たれるためには、まず知ることが一歩目だ。橘玲さんの「(日本人)」という本も読んでみたくなった。

    本書で紹介されていた山岸俊男さんの「安心社会から信頼社会へ(99年)」と、ジェイコブズさんの「市場の倫理、統治の倫理(03年)」は00年代に何度も読んだ。BtoBプラットフォームを志向するならバイブル的存在だ。「市場の倫理(あるいは信頼社会)」を実現するために今でも血肉になっている。

  • 分かったような分からないような・・・まー、兎に角悩んでもしようがないので明日も会社に行こう。

  • 巷にあふれる自己啓発本は「やればできる」と読者に努力を促すが、成功に達する(お金を稼ぐ力を得る)には才能(恐らく努力できる才能も含まれる)が必要で、それほど簡単なことではない。能力主義の世の中では、仕事ができる人ほど収入が多いのは当然のことだが、誰もが勝間和代のようにはなれない。生きていくうえでお金は必ず必要だが、お金持ちが必ずしも幸せではない。勝間和代の「やればできる」といったイデオロギーに対して、香山リカは精神科医の立場から、「勝間和代の本を読んで精神的に病んでいく人たちがいる」ことを指摘する。では、才能の無い人間がどうすれば幸せになれるかといった切り口で、いたって単純な「好きなことを仕事にする」、「フリーエージェントになる」、「マイクロ法人を設立する」といった事が紹介されている本です。

  • 1回読んだだけでは、理解しきれないな。

    この人、いろんな分野からのアプローチをしていて、すげーなと単純に思いました。
    カツマーを取り上げたと思ったら、遺伝子の話。
    そこから、伊坂孝太郎の重力ピエロの話まででてきて、幅が広いうえ、その取り上げている内容も深いなーという印象。

    「伽藍を捨ててバザールに向かえ」
    というのが結論らしいのだが、
    イメージでは
    伽藍⇒仏道修行に入っている人
    バザール⇒バーゲンセール

    仏道修行からバーゲンセールに向かえ??
    なんのこっちゃ?と思いながら読んでおりました。

  • 他の本のレビユーを書いた方の本棚で見つけ購入(中古)もの凄く脱線していきむずかしいのだがおもしろい。
    ラスト近くで急に本題にもどってくる。
    終わり方はほっとする感じでよかった。

  • 風呂敷を広げ過ぎなタイトル。今筆者が関心を持っていることをつなげて紹介してみました、という感じの本。それぞれ気になるトピックがあったら紹介されている本を読んでみたらいい。

    頑張れば能力が高まるわけではないという話で始まってこのオチだと、能力がない・うまく立ち回れていないと感じている人は「じゃあ死ねってか」って感想になる気がする。

  • 既存の自己啓発の考え方を否定し、能力が無い人間の成功の方法を説いた本である。

    本書の主張は、
    ・伽藍(がらん)を捨ててバザールに向かえ!
     (会社を辞めて、ネットで商売しろ)
    ・恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!
     (ネットは広大だから、ニッチビジネスでもチャンスがある)
    といったところである。

    内容は、
    ・天才は勝手に稼いで資本主義の勝者になる
    ・しかし凡人は自己啓発をしてもできない
    ・自分の性格は変えられない
    ・他人を動かすこともできない
    ・組織に属していても幸せになれない

    ・会社を辞めて、好きを仕事にして、ニッチビジネスを広大なネットで売れ。

    といった内容であった。

    身も蓋もない内容であり、やもすると「資本主義の勝者になる」といった
    モチベーションを大きく減退させる内容となっているが、
    極めて現実的であり、他の自己啓発本より説得力がある気がする。

    しかし、結論の部分は他の自己啓発本とほぼ変わらない内容であり、
    どのようなロジックで掘っていっても同じ結論にたどり着く点が
    興味深かった。

  • 超面白かった…!自己啓発本のように自分は変えられない…それでもこの世界をどう生きるのかを学べる。情報量が多いけど見解が面白く読みますい◎分厚いのにすぐ読み終えた。

  • 努力すれば報われるというのは幻想。勝間vs香山論争や、今までの実験や実証例をもとに書いていた。結論としては、この世が残酷だということはわかっていただろうということ。でもお金があればあるほど幸せでもないのだから、自分の好きなことを見つけてそれなりに生きろってことかな。

  • 趣旨不明確、根拠薄弱で読む価値はない。
    『「やってもできない」人のための成功哲学』とか、何をもって「成功」といっているのか。
    本書では、
    ・そもそも自己啓発をしても、能力は向上しないし、自分は変えられないし、他人は支配できないし、幸福にはなれない
    ・だから、自分が自分のままでいられるニッチな場所に逃げるしかない
    という身も蓋もない結論に至る本です。

    ただ、まったくもって根拠が弱い。
    例えば、「知能は遺伝による影響が大きく努力による変化はない」というが、では知能の高い両親の子どもは何の学習をしなくても三ヶ国語が話せたり相対性理論が理解できるのかというと必ずしもそうではないのであって、では知能と学習と努力とどう切り分け、どのように判断するのかという一番大切なことが書いていない。
    しかも、根拠について自分は専門家ではないからわからないと逃げている。
    これはもう論外で、そんな人はこんな本を書いてはいけない。

    そんな感じで、はっきり言って意味不明な本。
    古本で108円で購入したけど、読むだけ時間の無駄でした。

  • 知能や心も遺伝要素高く、また、人格形成には親の子育ては無関係。この説は、ジュディスリッチハリスによる「子育ての大誤解」からの引用だ。これを引く事で勝間和代の「やればできる」に反論する。努力では変わらない。その事が不都合な真実だと。あまりにも、説が浅い。というか、文献を無批判に受容しており、説ですら無い。人間の努力の結果は表層に現れるもので、心は変わらずとも、表現は変わる。知能は変わらずとも、知識は増えるのだから、努力とはそもそも、その表層を改善するためにあるのだ。双子の性格や癖が類似しているからと、遺伝子の限界を説く文献をそのまま引用し、「やってもできない」など言ってはならない。著者の言う、残酷な世界とは、そのような一論文の視点でしかない。

    しかし、本著の魅力は、このスタートからの展開にある。努力が無駄、という受け入れ難い切り口ではあるが、そこから巧みに論文を引き、野生動物とさほど変わらぬ人間の真理を解く。そこから導かれる、人生の攻略方法は、これまた万人が納得するものではないかもしれないのだが。岡田尊司という精神科医兼作家がいるが、著者である橘玲の手法と語り口はそれに似ている。岡田尊司好きにも、楽しめる一冊ではないだろうか。

  • 能力は開発できる、私は変化できる、他人を操れる、幸福になれる。
    好きなことを仕事にすれば成功できる。
    人は自分に似た人に引き寄せられる。
    グローバルな市場経済ではお金持ちは人種や宗教、国籍、性別、政治的な主義にかかわらず、だれとでも積極的に付き合い、ビジネスを拡大しようとする。
    高度化した知識社会のスペシャリストやクリエィティブクラスは市場で高い評価を獲得することによって報酬を得るというゲームを楽しんでいる。夢中になるのは、それが楽しいからだ。

  • 読むのを途中でやめてしまった。
    序盤の遺伝についての記述には少なからず納得させられたが、その後の極論で一気に読む気が削がれた。
    続く内容も人間心理やら遺伝に関してなどが短いエピソードで綴られていく。ふーん、それで?の繰り返しで飽きてしまった。

  • 伽藍(閉じた社会)を捨てバザール(開いた社会)に向かえ!
    帯が気になり前に購入しましたが、やっと読了。
    伽藍のなかではネガティブな評価が重みを持ち、バザールでは 、ポジティブな評価が重みをもつ。目から鱗の考えです。
    読んでいて納得できる本でした。少したったら再度読み返します。

  • 努力がいつでも報われるなら誰でも成功できるはず。でも誰もが成功できるという方法を聞いたことがない。それは常に競争があるからだ。争っている限り敗者は生まれる。全員が勝つことはできない。グローバル競争は勝者の総取りだ。 本流の争いは激しい。 支流でも勝てれば相対的な幸福は得られるということ。昔は支流じゃ商売にならなかったが今やマーケットは世界だ。 ニッチでも低コスト運営で成り立つ可能性があるならばチャンスはある。

  • ”かんばれ”自己啓発を出発点にして、”わくわくすることをやれ”自己啓発にたどり着くのがおもしろい。

  • やればできる、効率化がすべて、と言われる今、実はやってもできない人がいるわけで。遺伝学的にも証明されているのに、頑張ろうとする現代人。そんな残酷な世の中で、勝ち組を目指す必要はなし。恐竜のロングテールの中にあるショートヘッドを探してニッチな分野で生きていけたらそれも良し。

  • 進化心理学をベースにして、幸福の追求について淡々と合理的に私情を交えず述べられている.
    ドライな文章は橘玲の持ち味だ.

    評判獲得ゲームに基いて、金銭的報酬がなくても人のインセンティブは高まる.
    世界を下記のように分類すると、人間の行動も理解しやすくなる.
    「愛情空間」=家族や恋人、「友情空間」=友人、「政治空間」=先輩後輩・上肢部下など、「貨幣空間」=貨幣でつながる空間

    多様性と流動性のあるバザールではネガティブな評判を恐れる理由はない.不都合な評価を押し付けられたらさっさとリセットして自分を高く評価してくれる場所に移っていけばいい.
    一方、いったん伽藍に閉じ込められたら外にはでられないのだから、そこでの最適戦略は匿名性の鎧でネガティブな評価を避け、相手に悪評を押し付けることだ.
    日本の村社会、会社、学校など日本には「伽藍」が沢山残っている.なので自殺も多い.
    生き残るためには伽藍(閉じられた場所)を捨てて、バザール(開かれた場所)へと向かわなくてはならない!

    勝ち組=恐竜の頭=ショートヘッド、負け組=恐竜の尻尾=ロングテイル.だが流通コストが減少したネット社会ではロングテイルの中にもショートヘッドが存在して階層化されている.ニッチなニーズは必ずある.

    でも橘玲は心理学より経済を題材にした話のほうが面白いなあ.

  • 2013/01/18
    おもしろい!著書は常に常識を反証してくれる。
    楽しまなくてどうする!

  • 好きなことやりながら、暮らせるくらい稼でいこうとうい話しと、
    ロングテールの中、ニッチでなんとか暮らせるくらい稼ごうという話。かなり好きな内容でした。自己啓発本を読む人たちの中には、自分は「やれば、できる。」と思っている人がたくさんいます。ですが、「やっても、できない。」という厳しい現実もあるのも事実です。どこか、自分のことを特別だと思っている人には、刺激的な内容だと思います。

  • 9割がた、筆者が見てきた世の中について書かれています。

    もう、ウンザリするぐらい残酷。

    正直読むのをやめようかなと思いました。
    でもそれって、世の中の残酷な部分に目を背けている事だと気づいて、読み続けました。
    救われたのは、ホント最後の1割程の部分。

    『伽藍を捨ててバザールに向かえ』
    『恐竜の尻尾の中に頭を探せ』

    目から鱗。
    僕のように、自己啓発の本を読んでばかりで、なかなか行動に移せない頭でっかちの人にオススメです。

    【余談】
    なかなか行動に移せないで、「あがいている」その過程は、行動に移したときに大きな力となるかも知れません。

  • マネーロンダリングでおなじみの橘玲さんの著書。
    色々と読みたい本があった中、意外にも初めてだった。

    感想はシンプルに一言。
    「大変面白い!」

    橘さんは非常に見識が広いなぁと感じさせてくれる内容で大いに満足だった。

    興味を持ってもらうために、はじめにを引用。

    ワーキングプア、無縁社会、孤独死、引きこもり、自殺者年間3万人超など、気がつけば世界はとてつもなく残酷。だが、「やればできる」という自己啓発では、この残酷な世界を生き延びることはできない。必要なのは、「やってもできない」という事実を受け入れ、それでも幸福を手に入れる、新しい成功哲学である。
     自己啓発の伝道師たちは、「やればできる」とぼくたちを鼓舞する。でもこの本でぼくは、能力は開発できないと主張している。
    なぜなら、やってもできないから。 人格改造のさまざまなセミナーやプログラムが宣伝されている。でも、これらはたいてい役には立たない。なぜなら、「わたし」は変えられないから。
     でも、奇跡が起きないからといって絶望することはない。ありのままの「わたし」でも成功を手にする方法(哲学)がある。 残酷な世界を生き延びるための成功哲学は、次のたった二文に要約できる。
     伽藍を捨ててバザールに向かえ。恐竜の尻尾のなかに頭を探せ。
    なんのことかわからない? そのヒミツを知りたいのなら、これからぼくといっしょに進化と幸福をめぐる風変わりな旅に出発しよう。

    どうだろう?橘さんの世界に浸りたくなったのではないだろうか?
    自己啓発に始まり、ゲーム理論、遺伝学・動物行動学、フリーミアムにブラックスワンなど幅広い内容に脱帽の一冊。おすすめ。

    目次
    序章 「やってもできない」ひとのための成功哲学
    第1章 能力は向上するか?
    第2章 自分は変えられるか?
    第3章 他人を支配できるか?
    第4章 幸福になれるか?
    終章 恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!

  • 能力は開発されない…
    非常に衝撃的なフレーズから始まり
    いろいろなデータと角度から記述してあり
    最後には解決案で締めくくる
    非常に興味深い読みやすい一冊

  • 私が投資を始める きっかけとなった
    橘玲さん
    さすがに また厳しい指摘をしてる

    「やってもできない」人のための成功哲学

    「やればできる」神話を突き崩す
    知能の70%は遺伝で決まると データを示し
    能力は向上しない
    自分は変えられない
    それを 進化心理学など 多くの専門書を引き合いに論証する

    じゃあ、そんな「やってもできない」人はどうするか
    そのための方法も 最後にちょこっと

    アプローチの方法も 分野も 全く違っているのに
    「わが心の木内野球」と 同じ内容で

    いやぁ、まいった。

  • 人が世の中を生きていく要点がかいており、自己啓発を否定している。俺にはまだ早い内容だ

  •  世の中の自己啓発ブームに異を唱える1冊。自己啓発本はそれなりに今まで読んできましたが,こういう否定的な本は初めて読みました。
     
     「(子どもは)自分の遺伝子を残すために,最も得意なものに資源を集中するのが最適な戦略」には非常に納得がいきました。つまり,生まれてから日々は戦いであり,その中で突出して「認められる」ことが大切なのだと。

     納得のいくこともありましたが,ではどうやって生き延びればいいのか,いまいち分かりませんでした。(世界へ飛び出す・「好き」を仕事にする等書いてありましたが)結論までが長すぎ,少し読むのが疲れました。自己啓発本にどちらかと言うとどっぷりはまっていたせいか,この本に書かれていることはすべてマイナスに思え,少し気分が落ち込むことが多かったです。しかし,この本に書かれていることも現実であると思います。

     自己啓発本に疲れた方には読んでみても良いかと思います。こういう考え方もあるな,と思えた1冊です。

  • 結構衝撃的な本です。でも書いていることには一理あって、目からうろこが落ちました。世界は、残酷です。どうしようもなく、残酷です。でも、そこで生きるときにここに書かれていることが役に立つと思っています。
    『伽藍を捨ててバザールに向かえ』

    『恐竜の尻尾の中に頭を探せ』

    という、一見なぞめいたこのキーワードのもと「やればできる」から「やってもできない」という現実をうけいれて、それでも幸福を手に入れる、そのやり方がつづられています。この本の中では勝間和代的な『努力をすれば成功する』的な生き方を香山リカさんとの対談を引き合いにして批判したり、

    俗に『マックジョブ』と呼ばれるような低賃金で誰がやっても同じことができる働き方が若者の仕事から高齢者たちの仕事にシフトチェンジしているというくだりには正直な話、
    『あぁ、なるほどなぁ』
    とヒザを打たざるをえませんでいた。先日、マクドナルドに行ったときも、カウンターで注文を受けていた女性も確か年配の女性でした。そのときはさして気にも留めなかったのですが、この本を読んで、ああこういうことか、とうなずかざるをえませんでした。そして、最後のほうになる第4章の『幸せになれるか』というくだりでは、

    今まで『常識』として信じられていたことが次々と覆されていきます。いわく『日本人は会社が大嫌いだった』や意外と日本人は個人主義だったという現実には驚きを隠せませんでした。そして、『恐竜の尻尾に頭を見つけろ』ということは本書を読んでいただけるとありがたいのですが、相場格言の中にある
    『人の行く、裏に道あり、花の山』
    に通じるものがありました。

    「しあわせのかたち」
    が多様化してしまった以上、この本に書かれていることに私やあなたにふさわしいニッチ探すこと。それが『オーダーメイド』の幸福を探す有用な方法の一つではないのでしょうか?と僕は考えております。

  • やってもできない、自分は変えられない、など巷にあふれる自己啓発本の主張に真っ向から異を唱える。
    自己啓発のあまりの流行に何とも言えない居心地の悪さと善意の残酷さを感じていた自分としては、科学的根拠や歴史的事実を駆使しての論理展開は非常に気持ちがよかった。

    結局はやりたいことを見つけて行動している人が一番幸せ、という結論だと理解した。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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