- Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344019997
感想・レビュー・書評
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イスラエルの紛争に対する日本や各国のメディアの論調に何だかモヤモヤして、図書館で取り寄せた本が、ハマス創立者の息子でありながらイスラエルのスパイとして活動した男性の手記となる本作。パレスチナ偏重の記事が多い中で、こういうのが知りたかった!と思えた一冊。
冒頭は、イスラエル軍に捕まった著者が劣悪な軍施設で暴力的に扱われるシーンから始まり、そりゃイスラエルを恨むのも分かるわぁ…と思える。そんなイスラエルをおとしめるためにスパイになったふりをしてパレスチナのために働こうとする著者が、パレスチナ側の権力者と組織の腐敗と残虐さに辟易し、少しでも犠牲を抑えようと諜報活動をするも果てしない暴力の連鎖に失望していく様子が克明に記されている。そして衝撃だったのが、
「もしイスラエルが消滅したなら、パレスチナ人は一体どうするのだろうか?すべてのユダヤ人が聖地を捨てても、私たちはまだ戦っているだろう。スカーフをかぶらない女性をめぐって。誰が一番強くて重要で、誰が一番良い席に座るかをめぐって。」(一部抜粋)
という、たとえいかなる状況になっても(イスラエル建国前の状態になったとしても)争いをやめない姿勢だ。
いかにパレスチナの権力者たちが共存や和平を望んでおらず(口ではそう言っても全く実行せず)、各国からの援助や資金が自治区域インフラ整備や住民の社会生活に全く使われずに幹部たちの贅沢な暮らしや武器購入に費やされ、そして民間人(ユダヤ人もパレスチナ人の両方)の犠牲は彼らにとって「成功」となる図式が本当におぞましい。
イスラエル軍から暴行を受けた経験を持ち、パレスチナの権力側にいながらその暴力構造に絶望した中でキリスト教を信じ、ユダヤ人とパレスチナ同胞の両者を愛した著者の手記には説得力を感じる。復刻版が出たみたいなので、購入検討中。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イスラムのことに詳しくないのですが、興味深く読みました。
私と年の変わらない青年がこんな日々を送っていたとは。
ハマスの息子である著者がイスラエルのスパイを働き、結果的にテロで多くの人が殺されるのを防いでいた。ことがわかる。
彼がキリスト教に改宗することも大きなおどろきだ。
そして、家族とも絶縁されて、アメリカで亡命生活を送っているが、ホームレス同然という現状が何ともいえない。
「正義」はどこにあるのだろう。
豊かさとはなんなのだろうとか、思ってしまう。