絢爛たる醜聞 岸信介伝 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (587ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344422339

作品紹介・あらすじ

長州の政治家血族として生を享け、少壮官僚として39歳で満州経営に乗り出す。A級戦犯容疑で巣鴨プリズンに3年間拘留されたのち一気に政治の世界を上り詰めた。59歳で保守合同後初の自民党幹事長、翌年第56代首相に就任し60年安保改定を単身闘った。口癖は「金は濾過して使え」。情と合理性と強かさを備えた昭和の傑物を描くノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 工藤は文章が巧みである。工藤の手に掛かればいかなる人物であったとしてもそれなりの物語にすることが可能だろう。我々は文章や言葉に直ぐ騙される。その最大の見本がバイブルである。あの文体は脳を束縛する心地好さがある。イエスという人物があたかも実在したように錯覚させられる。しかも西洋人はイエスの言葉を通して、更に実在の不明な神を信じているのだ。胡蝶の夢のまた夢といってよかろう。
    https://sessendo.blogspot.com/2021/10/blog-post_25.html

  • 岸信介の評伝である。評伝というと、生い立ちから始める本が多いが、あれは本題に入る前に疲れてしまうことがある。安保闘争から始まり、過去に遡ったり現代にもどったりとする本書の書き方は読み手に緊張感を与える。うまい。今考えると、1960年の安保条約改定は明らかに不平等条約を改定である。だから、どうしてあれだけの人が立ち上がり反対し、死者まで出したのか。今考えると不思議である。それにしても、岸信介という人は悪運の強い人である。いつも、なにかに誰かに助けられる。だから、「醜聞」は本書からはあまり感じられない。岸さんが女性好きだったという話が何カ所かに出てくるが、これも昔の政治家では当たり前で、醜聞とはいえない。もう少し醜聞を書いてほしかったと思う。

  • 岸が官僚の道を選んだのは、体が弱かったから。
    状況はんだに狂いがない。タイミングを計るのがうまい。それが政治家の必須条件だとすれば岸は天才。
    ただの運じゃダメなんだ。悪運が強くないと政治家はダメなんだ。
    マスコミから悪口を言われている限りは、社会的影響力を持っている証拠。
    岸はまず怒らなかった。

  • 戦後A級戦犯として巣鴨プリズンに3年間拘留された後政治の世界を上り詰めた男、岸信介。
    保守合同後の初の自民党幹事長、翌年の第56代首相、そして60年安保改定、「ただの運じゃ駄目なんだ。悪運が強くないと政治家は駄目なんだ、運が七分さ」と言い周囲のものを笑わせていた岸信介。確かに巣鴨拘置所に収監されるも、不起訴になり3年後に釈放、自民党総裁選に敗れるもわずか2月後に石橋湛山の辞任によって、総裁総理の座を手に入れる。そんな「昭和の妖怪・岸信介」を作者は数多くの関連書籍を参考によくぞここまで書いたものだ。
    又、現在岸の孫、安倍晋三総理が繰り広げる改憲への繋がりも興味深い。

  • 岸信介。風圧を感じるという。
    昭和の時代を支えるために、戦犯として投獄されていても
    時代の要請で表舞台に。
    宗教家に、かならず、首相になると言われ
    安保改定をやってのける。
    晩年も、飛び回っていたようだ。

  • ちょっと読みにくいのは関係者が入り組んでいるだけなのか?
    この1冊で戦後の日本がどんな葛藤を抱えていたのかがよくわかるのでは。

  • 事を成す、リーダーの命懸けの精神は凄まじい。
    戦中、戦後、国を想い活躍した岸総理の改憲の想いは、孫に託された。

  • 2014年9月

  • 三年前に挫折してたけど、昨日から再開したら、ぐいぐい引き込まれ。昭和の妖怪、と言われた政治家の評伝。中央の官僚としてメキメキ頭角を表し、かと思えば、私有財産の否定や、国粋主義者、北一輝の謦咳に接し。満州国の経営に辣腕をふるい、東条内閣では、商工大臣、国務大臣兼軍需次官としても活躍し、しかし、大臣辞職を拒むことで東条を退陣に追い込み、戦後は、戦犯として三年収監されるも復帰、あっという間に総理大臣まで上り詰め、周囲からの、あるいは国民からの悪評ももろともせず、安保改定にこぎつけ、退陣。その後も、憲法改正に燃えるが、その後の総理には引き継がれず。その思いが、今の安倍総理が引き継いだ、と。/数々の悪運の強さを自認し、権力とカネが大事、ただそのカネは必ず濾過したものを使えと言ってきた宰相/デモ隊のうち何人が古い安保条約を読んできたのかね、と嘆息する岸。/放漫な自由主義経済は弱肉強食に陥るから、ある程度計画的な経済、統制経済を指向。満州国の経済運営にも取り入れる/上級のものにめっぽう強いのが岸の持ち味/日産コンツェルンを満州へ呼び込み/里見、古海、甘粕、岸と阿片資金が流れたと言われるが確証はない/政治は動機良くても結果ダメならダメ、むしろ動機が悪くても結果よければよし、と言うのが本質では/

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著者プロフィール

工藤美代子(くどう・みよこ)
昭和25(1950)年東京生まれ。ノンフィクション作家。旧チェコスロヴァキア・カレル大学を経て、同48年からカナダに移住し、バンクーバーのコロンビア・カレッジ卒業。『工藤写真館の昭和』で第13回講談社ノンフィクション賞受賞。そのほか『国母の気品 貞明皇后の生涯』『香淳皇后と激動の昭和』『美智子皇后の真実』『美智子さま その勁き声』など著書多数。

「2021年 『女性皇族の結婚とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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