リボルバー (幻冬舎文庫 は 25-7)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 216
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344433069

感想・レビュー・書評

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  • ハードカバーで読んでください。カバーを剥げばそこに仕掛けが待っています。
    現代パートの登場人物たちがとても好きな人柄をしていて、だからか、もっと現代パートがある方が個人的には好みかも、と思いました。ゴッホの生きた時代の人々から話を深めていくという点では、同著「たゆたえども沈まず」の方が私は好きでした。
    とはいえマハさんの豊富な知識に裏打ちされたストーリーの奥深さ、アートに関わる人々の熱意に対する温度ある眼差しには、読んで良かったという言葉以外ありません。ゴッホとゴーギャンの作品が見たくなりました。

  • 著者の作品の中でも例外的に苦手な部類。
    なんで主人公の調査とほぼ無関係に「秘密を抱えた依頼者」が全てを吐露してしまうの?意味がわからない。
    VIウォーショースキーの名前を作中で使うのならば、本作はハードボイルドの様式を採るか、またはそのパロディーの様式を採るべきだ。そしてハードボイルドの様式とは、探偵が調査を行いその結果として真相に到達する、というものだ。調査と無関係に真相が明らかになってはいけない、
    そしてハードボイルドのパロディーの様式を採るのであれば、前述のような、調査の結果として辿り着く真相、という様式を批判的に乗り越える努力がなされるべきだ。わかりやすいところできえば桐野夏生は『柔らかな頬』で真相への到達を拒絶してみせた。こういうパロディー的な試みはとっくの昔になされていて、たとえば60年代の第二期ハードボイルド(ネオハードボイルド)において身体の欠損とかアル中とか抱えた主人公が、「探偵は探偵たり得るのか」という問いを投げかけている。そういう批判的な乗り越えが試みられるのでれば、本作では主人公は自身の調査と真相への到達への間にほとんど因果関係がないことに自覚的になるべきだ。調査が無意味だったことを自覚し打ちのめされたり、不条理さに翻弄されたりする必要がある。しかし主人公はそのあたり一切自覚することなくお気楽にハッピーエンドを享受している。はぁ?なんなんその能天気さは?とイライラしてくる。
    著者の他の作品は好きだったりするので、本作はほんとにがっかり。

  • 誰が引き金を引いたのか。

    パリのオークション会社に持ち込まれた錆びついたリボルバー。ゴッホの自殺に関係するものらしいが…。
    原田さんの表現してくださる画家たちは、どの人物も何だか愛おしくなる不思議さがある。複雑に絡まった感情の奥に、とても純粋な情熱や願いがあると感じるからかもしれない。
    表紙がゴッホの絵なので、ゴッホの話かと思っていたけど、どちらかというとゴッホに出会ったゴーギャンの話かも。今回も楽しいアートの旅だったことに違いはない。

  • リボルバー一つで、自殺他殺だけでなく、その死に方、様子、経緯、全てを想像できてしまい、人はその物語が美しく繋がりを持つように、都合よく解釈する。

    美術に明るくない私でも、ゴッホのひまわりは知っているし、ゴッホが生前不遇であったこと、日本の浮世絵に興味を持っていたこと、耳をそぎ落としたこと、美術に関係のないこともなぜか知っている。もしかしたら、素人知名度ランキングではトップなのかもしれない。そんなゴッホの、死にまつわると言われている、古びたリボルバー。たった一つの錆びれた鉄屑からこの物語は始まる。そしてそのガラクタは、ゴーギャン、たった2ヶ月だけゴッホと生活、創作を共にした画家の画家としての人生、一人の男としての人生、その男と関わった女性の運命、いや運命ほど大きくなくても、とてつもなく大きな影響を与えてしまった。ゴッホ、というよりも、ゴーギャンの子孫の物語であり、娘、母、祖母、曽祖母、と脈々とつながる祖先への筆舌に尽くし難い、愛おしさを感じることのできる物語だった。

    他人からいくら評価されていたとしても、そんなものは所詮ちっぽけで、心の底から愛してくれる人がいることほど強いものはない。ゴーギャンは、やはりその点が欠けていて、ゴッホに人としてもコンプレックスを抱いていたのかもしれない。そして皮肉なことに、彼がレバーを引いたリボルバーが、彼自身ではなく、最終的に彼が捨てた愛人の子孫の大いなる愛情に繋がってしまった。リボルバーの物語であり、何世代にも渡る母娘の他人からは見えることのない、強い愛情の物語だった。

    マハさんの芸術ミステリーは、海外で日本人女性が、持って生まれた柔らかさと自ら培った強い志で、大きな課題に立ち向かう姿が描かれている。西洋芸術の本場ヨーロッパで、小さなアジアの国を出自としている女性が、強く逞しく生きている様が、とても魅力的で、応援したくなるし、憧れもある。私はマハさんの描く女性がとにかく好きなんだと思う。

  • 先に『たゆたえども沈まず』のほうを読んでおり、とても面白かったので、こちらも続けて読みました。

    史実をもとにしたフィクションですが、もしかしたら当時こんなことが本当にあったかも?と想像を掻き立てられる作品でした。ゴッホとゴーギャンについて少し詳しくなれます。

  • 原田マハさんのアートミステリーを読むと、アートにさほど知識がなくても、どんどん引き込まれる。機会があれば本物を見てみたいなぁと、興味も湧いてくる。
    どの作品も、主人公の画家や作品に対する溢れるほどの愛や情熱が感じられる。きっとマハさんご自身もそうなんだろうなぁ。

    ゴッホのもうひとつの物語「たゆたえども沈まず」
    を読んでからがおすすめ。

  • 読み始めの一文で引き込まれて、読もう、という気になり中盤までどんどんとページを捲る手が進んだが、クライマックスが予想可能で驚きがなかった。美術史の知識を余すところなく織り交ぜられてはいて、知識の部分だけ読み応えがあるのとは裏腹に、フィクションとはいえ現実ではあり得ない程簡単に進んでいく話の展開と人物像・物語性が読み進めるほど落胆に変わった。全ての登場人物が、世に出すために無難で猿でも分かる綺麗な物語にするためにキラキラパウダーをかけて出されたようだった。ゴッホの絵の景色描写は美しく目にも浮かぶが、人物像に深みがない分あっさりとした誰でも読みやすいような小説になっているとも言えるかもしれない。

  • 揺さぶられる感動があった。

    P146引用
    「作り話もたいがいにしてくださいよ、社長。それやっていいのは小説家くらいですから」
    痺れました。
    まさしく、それができる職業で、そして、やってのけた。

    架空の登場人物のはずなのに、血が通っているのが意識せずとも伝わってどんどん本の世界の中にのめり込んであってしまう、この魔力は一体なんなのか。
    原田マハさんのアートフィクション小説の威力の凄まじさ。没入感。たゆたえども沈まずに続いて2作目ですが、唯一無二だなと感じています。

    あと、思うのが、こんなに本の世界に浸れるのはあのゴッホが扱われているからと言うのもあるかも。
    ゴッホの不思議な魅力。いつまでも人を惹きつけてやまない魔力。

    絵画が持っていたエネルギーと魅力を多分に引き出し違う形で見せる良質な作品だなと思いました。

  • 昔と違って(スマホがなかった時代です。)スマホで登場する絵画を確認しながら読み進められて、具体性がある。

    隔世の感があるなあ。

  • 2023年65冊目
    原田マハさん/リボルバー
    「ひまわり」で有名な画家、ゴッホ。
    しかしながら、彼の最期は未だに謎とされているようです。
    オークション会社に持ち込まれたリボルバーの調査をきっかけに、その謎に迫っていくアートミステリー。
    #読了

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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