- Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344981812
感想・レビュー・書評
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細胞が死にむかうアポトーシスの話。そこから、他の病気への応用や人の死の話につながっていくが、人の死の関連の話は薄い。うーん、そこが読みたかったな。
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「死」についてや、自分の「生」や「人生」についてはよく考える。
寝る前に、いつもついつい考えてしまう。
中学生ぐらいから考えているのでかれこれ30年近く考えていることになるが、未だ自分で腑に落ちる結論というものはない。
結論というようなものは、それこそ自分が死ぬ間際にならないと分からないのではないかとも思っていた。
が、少し大げさに聞こえるかもしれないが、この本に出てくる「性」と「死」の関係や、約15億年前に「性」というものが現れるまでの生命には「死」というものがなかったということなどを知って、まだぼんやりとはしていながらも、今までよりは少し「死」に対しての自分の答えのようなものに、近づいたような気がした。
うすうす感じてはいたが、「死」は「生」と対なのではなく、「性」と対のものなのだ。 -
人が死ぬのは優しさか
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2013/01/13
死が種の保存の為に必要。
この考え方をこの本で初めて知った。
生命を突き詰めると最近はまっている宇宙論につながっているように感じる。
人間が一生物として生きる意味を思想的な視点も交えながらも、純粋に生物学的に分かりやすく語られている。
子供にも読ませたい。 -
宗教的なタイトルに見せかけた細胞の死の科学本。
細胞はどのようにして死ぬのか。細胞が死ぬことによって生物は何を獲得するのか。
大きく印象に残った死の役割は3つ。
1つ目は制御のため。ヒトの手は指の間の細胞が死ぬことによって形成される。
2つ目は防御のため。「多めにつくって消去する」戦略により、ウイルス感染やガン化した細胞などが自ら死ぬことによって、個体が守られる。
そして3つ目が、遺伝的多様性のため。
生物は死と同時に"性"を獲得し、交配によって多様性を持つようになった。
その多様な種の中で、環境に不適応な個体が死ぬことによって、最適な個体のみが生き残る。
即ち不適応な遺伝子が死ぬことで全体としての遺伝を継続する、遺伝子利"他"的説。
"遺伝子"的にはヒトだろうがサルだろうが植物だろうが細菌だろうが、何かが生き残れば勝ちだと考えると、なかなか面白い。
ありそうでなかったジャンルの良書ではあるが、新書ゆえボリューム不足なのだけが残念。 -
細胞の自死、アポトーシスを中心に死の科学を紹介。
死は必ずしも生と表裏を成すものではない。生命進化の歴史を見ていくと、オスメスという性が現れたと同時に死が生まれた、との説明に目からウロコ。 -
【「死」から「生」を考える】
生物学(医学)的な話なのですが、
文系の僕でも充分理解出来るように書かれて大変わかりやすいです。
動物の細胞はなぜ死ぬのかという構造から
遺伝子構造の話
なぜ性別が生まれたか
なぜ生物個体が死ぬのか
などなど、数々の生物学の話に初歩的なことから踏み込んでくれます。
そして、「死」を与えられることによって、「生きるとは何か」を考えることが出来るという話で締めくくられていて臨床的なことまで考えることができます。
個人的な話ですが、
2日前の夜に僕の祖父が亡くなったそうで、
「死」というものについて、
また、残された者の「生」について
より身にしみてきました。 -
前半はアポトーシスを中心とする細胞の「死」についての説明。
僕にとっては新たな知識はなかったのだけど、まったくこのあたりのことに不案内な人も、この部分はすんなり理解できるんじゃないかな。
とてもわかりやすい解説だった。
あとゲノム創薬の可能性についても夢が大きく描かれていて、なんだか未来に希望がもてる。
いつのころか、テーラーメイド治療がごくごく一般的になればいいなあ。
本書の本領は、最後の部分。死を「科学的に哲学」した論考。僕たちはどうして死ぬのだろう?
人間という全体を生かすために細胞いう個が死んでいく、それと全く同じように、地球(人間社会?)という全体を生かすために、個としての人間が死ぬことが必要であると著者は言う。
僕たちが死んでいくことが、僕たちの多様性につながっている。
多様だからこそ生命は連続してきたし、これからも連続していくのだろう。
この回答はちょっと感動的だ。
僕とあなたが違っていること。それはとてもすばらしいことであること。
そのことを、単なる道徳のお題目とはまったく違う視点から僕たちに教えてくれる。
最後に疑問。
「人類という全体を連続させるため」に、人にはいろんなシステムが備わっている。
でもその「全体を連続させよう」という欲望は、どこから来るもんなんだろう?
いつか「もうみんないなくなっていいんじゃねーの?」ってときが来るんじゃないだろうか。来るとしたら、それはどういうきっかけからなのだろう?
ドーキンスでも読み直すか。 -
生命について、なぜ生きるのかという視点ではなく、どうして死ぬのかという、「死」の視点から、死の遺伝子が解説されている。
著者の提唱するアポビオーシスも登場する。ネクローシスとは異なり、遺伝子に支配された細胞死のプログラムとして、脳細胞や心筋細胞のような非再生系の細胞死をアポビオーシスと呼び、生命としての統制を取るための細胞死(アポトーシス)と分けておられる。
ガンやアルツハイマー病、AIDS、糖尿病等の研究における病気とアポトーシスの関係の説明と、その治療やゲノム創薬の解説も、細胞と個体の生と死を考える上で勉強になった。
そして、最終的にはより抽象度の高い「生と死の意味」として、細胞から個体、そして、社会、それからよりダイナミックな循環として宇宙の生死まで語っておられる。
本書の中では、ドーキンスの利己的な遺伝子をより発展させた考え(あるいは反論)として、利”他”的である存在としての死を記しておられる。ここには反論も多くあることだと思うが、ドーキンスの概念と矛盾はないもと考えることができる。
また、生物的な不老不死から得られるものに対する危険性についての警鐘を鳴らされており、現代の科学が目指すべきところは、生物的な不老不死を目指すのではなく、「有限の時間を生きる意味」が求められていると力説されている。
生物学的な話の本と思いページをめくったのだが、もっと広い意味での生死観を問いかけてくる良い書だと思う。
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【内容(「BOOK」データベースより)】
地球上に生命が誕生してから約20億年間、生物は死ななかった。ひたすら分裂し、増殖していたからだ。ではなぜ、いつから進化した生物は死ぬようになったのか?ヒトは誕生時から「死の遺伝子」を内包しているため、死から逃れることはできない。「死の遺伝子」とはいったい何なのか?死の遺伝子の解明は、ガンやアルツハイマー病、AIDSなどの治療薬開発につながるのか?細胞の死と医薬品開発の最新科学をわかりやすく解説しながら、新しい死生観を問いかける画期的な書。
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【目次】
まえがき 私がなぜ「死」の謎を追うのか
第1章 ある病理学者の発見
第2章 「死」から見る生物学
第3章 「死の科学」との出合い
第4章 アポトーシス研究を活かして、難病に挑む
第5章 ゲノム創薬最前線
第6章 「死の科学」が教えてくれること
あとがき
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興味深い話題を散りばめながら、最後のもって行き方に、唸るものがあった。
性と死が同時に発生したこと。遺伝子から宇宙まで見られる、生命の階層構造。死を生存戦略として選んだ祖先から連なっている自分。かけがえのない自分。歴史上、一人の自分。なにか大切なものの見方を改めて学んだような気がする。
・ときおり「ガン」が消えたという話しを耳にしますが、これは腫瘍にアポトーシスを起こす力が残っており、何らかの刺激や免疫細胞の攻撃によって萎縮したり、死滅したりするケースといえる。
・医療品開発の方向性を逆転させるゲノム創薬
・ヒトに組み込まれた2種の死。再生系細胞のアポトーシスによる死。非再生系のアポビオーシスによる死。
・地球上全ての多細胞生物がアポトーシス(細胞死)のシステムを持っていることを考えると、「死によって生を更新する」ことが、時空を超えて生命を遺し伝えるために、最も効率的かつ効果的な手段なのではないかと思われる。
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