官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983236

作品紹介・あらすじ

日本人はなぜこれほど不倫に厳しくなったのか?妻・愛人・女友だちの三人を必要とした古代ギリシアの男たち。夫承認のもと、若い恋人と戯れた十四世紀フランスの妻たち。たいていの妻に愛人がいるエチオピアのボラナ族。いまでもこの世界には、一夫一妻制度におさまらない社会が広く存在する。時代によって愛の価値観はいかに変化してきたのか?世界の結婚制度、不倫の歴史とは?数々の民族調査、芸術作品を例に挙げながら、男女の豊かな関係を探る画期的な書。

感想・レビュー・書評

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  • 第1章から、人にはなぜ愛人が必要なのか。という、随分と飛んだ入りだな、かつて何処ぞの芸能人が、不倫は文化だ!なんて言葉を残していたことを思い出した。

    そして、この一冊では正しく、不倫を古代や中世に遡り、文化的側面から探求してゆく。
    ギリシャ、ローマ神話と神々の情事まで行き着く。

    また、チェーホフまで引っ張り出して、愛と性についての講釈が続く。
    谷崎潤一郎も漏れなく。

    後半のキスについての考察は、中々に興味深いものがあったな。
    日本人は多く、幼少期や青年期には、人前でもどこでも、立ってするものであったが、いつの日か、密室で寝てするもの。
    そう、キスがただのセックスの前戯になりさがる、と。
    そこにときめきや、その他の昂る感情は衰退すると。
    キスだけで、ときめいたあの感情を思い出せ、と。

    1947年生まれ、東大卒、宗教人類学者の柿島氏の一冊でした。

  • 全章を通して、いろいろと御託を並べてはいるが、結局「不倫OKにしましょうよ」ということが言いたいだけのように思えてしまった。セックスする関係性にまで到達した相手に対して、興味が失せて他の相手に走ることを、手を変え品を変えて正当化しているだけに見える。

    もちろん一夫一妻制が万能であるとは思わないが、女性の人権が認められていなかった古代ギリシャや未開の民族の風習などを引き合いに、ヒト族の自然は婚外セックスOKなんだ!婚外セックスを禁じるほうが非人道的だ!と言われても、到底納得することなどできない。女を自分の所有物として客人に好きにさせるなどといった、前時代的で非人道的な風習を肯定できるわけもない。そうした抑圧から女性を解放してきた歴史があるわけで、一夫一妻制から一歩進んだパートナーシップのかたちを模索するにしても、そうした歴史や、ジェンダー平等への議論が抜け落ちているように思われた(紙幅の関係かもしれないが…)。

    ただ、最後のほうの章で、「フラート」という概念について紹介している箇所はとても興味深く読んだ。恋愛の前段階の戯れを指し、視線のやり取りやちょっとした接触、人目を忍んだ口づけなどが含まれるらしい。著者はセックスの前戯ではないキスの重要性にも言及していたが、既にセックスしているパートナーと、そうしたキスを含んだ「フラート」を楽しむことによって、もう一度恋愛プロセスをやり直すことが可能なのではないか。そうすることで、持続可能な関係性を獲得できるのではないかと感じた。そちらへ議論を広げていったほうがよほど建設的なのではないか。本書は、浮気男を勇気づけるだけな気がしている。

  • このタイトルが物語っているように、時代によって官能に関する教育観はまったくちがう。

  • 秀逸。

    <目次>
    第一章 人にはなぜ愛人が必要なのか
    第二章 愛はいつまでも続かない
    第三章 官能教育
    第四章 どうして不倫はいけないのか
    第五章 究極の贈り物
    第六章 セックスに対抗するにはキスしかない。

    <メモ>
    「不倫はいまではぜったいに必要な、なくてはならない人間関係なんですよ。絶対なんです」(3)
    本書の目的は、愛およびセックスの歓びについて、人々は社会によってどのように教育されてきたか、影響を受けてきたか、および、これからの愛とセックスはどのような変化を遂げていくのか、その全体像を俯瞰して示そうとするものである。(7)

    西欧との接触以前には、ヒト社会の80%以上が優先的に一夫多妻制を行っていた。(40)
    男性も女性も複数のパートナーと好ましい関係(性的な関係のみならず)を築くことができるような社会規範の成立こそ、いまもっとも求められているのではなかろうか?(40)


    2013.12.15 新刊巡回で見つける。
    2014.01.26 読書開始
    2014.01.31 読了

  • 性器教育ではなく。ときめきをこそ生きている歓びとしたい。キスまでの関係でいいさ

  • 読了。まあ、いいんじゃない。という気持ち。

  • この本に書いてある生き方は正直憧れるし、こちらの方が何だか性に合ってるような気がするが、世間や環境が許さないんだろうな。

  • 一夫一婦制がどれほど抑圧的なのかということを、歴史的な考察を踏まえつつ明らかにし、紋切り型の恋愛に陥らない、男女の情念が通い合う関係性について考察している本です。

    個人的には、著者の主張がどうしても道徳的に許せないとは思っていないのですが、この程度のことを言うのにそんなに力んでみる必要があるのかという気がしてしまいます。

  • 助平な内容かと思って読んだのだけども、後半になるに従って、哲学・文学・宗教とのなかでの恋愛について論じられるようになる。
    全体的にはいわゆる不倫肯定の色が強い。

    生物としての性交位の意味と、社会(ルール)の中での価値とに行き違いが生じているんだなと感じる。
    日本では三組に一組が離婚している。
    そのなかで、一夫一婦制が現実として、どのような意味を持っているのかということを考えると、やはり制度として崩れてきているのではないかと。
    不倫や一夫多妻を推奨するわけではないのだけども、それが多く存在することのの意味や理由ってなんだろう?

    一夫多妻やそれに近い制度・文化の紹介が多くされているのだけども、すこし、気持ちが悪くなる部分もある。
    やはり、僕にとっては、そういったことは秘部であってほしい気もするからだ。
    あまりあからさますぎるのは応える。
    しかし、現実は現実で、事実は事実だろう。

    少し驚いたのは、一夫多妻性について、一見、男に有利な制度かと思われるが、実は女性に有利であるとも考えられるくだり。
    逆に一夫一婦制は男に有利だというのは、子孫を残す上で男にチャンスが回ってきやすい(一夫多妻だと、優秀な男に女性が集まる)ということらしい。

    まぁ、そういう見方もあるんだなと。

    終盤は、性交位の価値が軽くされてしまった現代において、キスの価値について言及。
    それをチェーホフの短編「接吻」から引いているのは、さすがだなと。

    タイトルからは期待していなかったのだけども、真面目に考えることができた。
    (※正直な所、アダルトビデオがどうとか、そういう内容かと思っていた。)

    読みやすくもあり、高尚な話もあり、得した1冊だった。

    ----------------
    【内容(「BOOK」データベースより)】
    日本人はなぜこれほど不倫に厳しくなったのか?妻・愛人・女友だちの三人を必要とした古代ギリシアの男たち。夫承認のもと、若い恋人と戯れた十四世紀フランスの妻たち。たいていの妻に愛人がいるエチオピアのボラナ族。いまでもこの世界には、一夫一妻制度におさまらない社会が広く存在する。時代によって愛の価値観はいかに変化してきたのか?世界の結婚制度、不倫の歴史とは?数々の民族調査、芸術作品を例に挙げながら、男女の豊かな関係を探る画期的な書。
    ————————
    【著者略歴 (amazonより)】
    植島/啓司
    1947年東京都生まれ。宗教人類学者。東京大学卒業。東京大学大学院人文科学研究科(宗教学)博士課程修了後、シカゴ大学大学院に留学、M・エリアーデらのもとで研究を続ける。NYのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ(人類学)客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授などを歴任。四十年以上、世界各地で宗教人類学調査を続けている
    ————————
    【目次】
    目次
    はじめに
    第一章 人にはなぜ愛人が必要なのか
    ・一回ルール
    ・いまの恋愛はかつての恋愛ではない
    ・もし愛人がいなければこの世は生きるに値しない
    ・女にもたくさんの選択肢ができた
    ・愛情を長続きさせるために四日に一度は別の異性と眠る
    ・男が戦いに行くように女は愛人をもつ
    ・「貞節」よ、さようなら
    ・「不倫」に定義はない

    第二章 愛はいつまでも続かない
    ・情熱が倦怠に変わるとき
    ・浮気をするから人間?
    ・年下の男が好き
    ・受け身の男こそすばらしい
    ・一夫多妻がベスト?
    ・複数婚が安定社会をつくってきた
    ・妻・愛人・女友だち
    ・絶世の美女フリュネー
    ・吉田喜重「エロス+虐殺」

    第三章 官能教育
    ・若い娘が知っておくべきことを知った娘がその後知りたがったこと
    ・男女の性行為の記録
    ・肉食系
    ・暗号のファンタジー
    ・メイベルの性愛生活

    第四章 どうして不倫はいけないのか
    ・不倫の歴史
    ・フロベール『ボヴァリー夫人』
    ・いったいだれがいけないのか
    ・「運命の女」(ファム・ファタル)
    ・ひそやかな欲望が情事に発展するとき
    ・なぜ自然界の雌はそんなにも頻繁に交尾を行うのか

    第五章 窮極の贈り物
    ・窮極の歓びとは与えること
    ・歓待の掟
    ・どちらが主人公か
    ・妻に自分をたくす男たち
    ・女になりたい

    第六章 セックスに対抗するにはキスしかない
    ・あらゆる葛藤は魂のなかで起こる
    ・恋の戯れ
    ・大人のキスってむずかしい
    ・セフレよりもキスフレ
    ・キスが人生を豊かにする
    ・エロチシズムと想像力
    おわりに
    注一覧
    ————————

  • 愛って何でしょうね。いつまでたってもよくわからないけれど、たった一人に一生の愛を誓うのも素敵だし、人生で知りあうたくさんの異性に、その都度好感をもつのも素敵だと思う。

    どこまでが良くて、どうすればモラルに反するかというのは、個人基準が大きく違うでしょうけど、「周りの人がみんな嫌い」よりは「周りの人はみんな好き」なほうが幸せそう。

    ほかの著書でも書かれてる「フラート」、なんとなく好ましい関係みたいなのを楽しめるのは、余裕があるからだろうし。大らかさとか明るさって大事だなーなんて思います。

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著者プロフィール

1947年東京都生まれ。宗教人類学者。京都造形芸術大学教授。東京大学卒業。東京大学大学院人文科学研究科(宗教学)博士課程修了後、シカゴ大学大学院に留学、M・エリアーデらのもとで研究を続ける。NYのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ(人類学)客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授などを歴任。四十年以上、世界各地で宗教人類学調査を続けている。主な著書に『生きるチカラ』『偶然のチカラ』(共に集英社新書)、『官能教育』 (幻冬舎新書)、『賭ける魂』(講談社現代新書)ほか。

「2017年 『運は実力を超える 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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