- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396341152
作品紹介・あらすじ
天才刀工、波乱の生涯
「この刀はおれです。おれのこころです。折れず、撓まず、どこまでも斬れる。そうありたいと願って鍛えたんだ」信州小諸藩赤岩村に生まれた山浦正行、のちの源清麿は、九つ上の兄真雄の影響で作刀の道にのめりこむ。隣村の長岡家に十八歳で婿に入るが、刀に対する熱情は妻子をおろそかにさせるほどたぎるのだった……。幕末最後の天才刀鍛冶、その波乱の生涯を描く!
感想・レビュー・書評
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『利休にたずねよ』で直木賞を受賞した小説家、山本兼一。
残念ながら、2014年に亡くなってしまいました。
未読の作品の中から、”職人”を題材にしていると思われるこの作品を、読むことにしました。
江戸後期、19世紀前半の信濃国。
村役人を務める郷士の次男、山浦環正行(清磨)が主人公です。
9歳年上の、作刀を学んでいる兄に教わり、刀鍛冶の楽しさを知った正行。
十代後半の彼は、となり村の同格の家に婿養子に入り、子供も授かります。
しかし、刀鍛冶の魅力にとりつかれた彼は、実家で刀作を続け、その刀は藩の武具奉行の目にとまります。
刀鍛冶を続けたい彼は、チャンスをつかもうと、妻子を置いて江戸へと向かいます。
彼は望む通り、刀鍛冶としての仕事を得られるのか、どのような刀を世に生み出すのか・・・という展開。
徳川により戦国の世が平定され、戦がなくなって200年以上が経った、この時代。
過去の名刀の数々に圧倒されるも、同時代には「これぞ」という刀鍛冶がおらず、自らの力で、精進していかなければならない日々。
武士にとっては、戦いのための道具である刀。
しかし、幕末に近いこの時代には、外国の情報も入り、戦いが大砲・鉄砲中心に変わってきていることも知られていきます。
そんな中、内面の充実がそのまま反映されるような刀鍛冶の仕事にどう、取り組んでいくのか。
理解してくれる人、そして自分自身の心を奮い立たせてくれる場所を求めて、各地を点々とする清磨。
その姿に、孤高の存在であることの難しさ、崇高さを感じました。
鍛冶の現場の描写など、かなり調査や取材を重ねて書いたのだろうな、と感じる部分が多々、ありました。
他の未読の作品も探して、読んでいきたいと思います。
山本兼一の小説;
『夢をまことに(下)』
https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B06XTM6H28
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近藤勇の『長曽祢虎徹』は本当は『源清麿』だったという逸話がきっかけで手に取ったもの。女から見ると『ダメ男』なんだろうけど、なんだか憎めないのは自身の仕事に愚直なまでに誠実だからか。最後どうするんだろうと思っていたらこうきたか、というラストシーンで物悲しさと同時になにかさっぱりしたものも感じた。
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2015.6.2
山本兼一二作目。狩野永徳とかぶってしまう。
天才的芸術家は、才能と苦悩との間で揺れ動いているのだろう。破邪顕正。 -
全1巻。
「刀剣商ちょうじ屋光三郎シリーズ」にも出てくる
刀鍛冶・源清麿の生涯。
著者の真骨頂、職人もので刀鍛冶。
面白くないはずがない。
いろいろ不明なところがあるらしい清麿を
説得力ある物語で再構築した手腕はさすが。
ただ、なんでだろ、
ちょっとあっさりした印象。
というか、
そもそも清麿が打った代表作ってどれなんだろう。
刀の素人でも名前を知ってるような
有名な刀打ってないのかな。
清麿って名前のメジャーさに比べ、
刀自体はメジャーじゃないのかな。
あっさりした印象の根は
刀自体の印象の少なさな気がしてきた。
最初に打った刀が、
清麿本人にとって重要なのはうなずけるが、
目利き達にも評価され続けるのもちょっと出来過ぎ。
その原因も、
飛び抜けた代表作の不在(物語中で)のせいかも。
著者が清麿を描いたってのは、
個人的には著者が本丸に攻め入ったってイメージだけど、
「いっしん虎徹」の方が好きだったかも。 -
『おれは清麿』という作品…真っ直ぐに己の仕事を追う主人公に、作者が自身の在り方を重ねているという様な読み方も在るかもしれない。私は寧ろ、「世の中は、思い通りに動かない。しかし、おれだって他人の思い通りには動かない」という想いを抱く主人公の姿を、「読者が追うべき」と感じた。或いは「世の中は、思い通りに動かない。しかし、おれだって他人の思い通りには動かない」を「小説で読んだ」とか「清麿が言った」で留まらせずに、「自身のモノ」に出来た時、「何かが大きく動く?」という気もする…
この作者の“職人”を主人公に据えたシリーズ…何時の間にか何作か読了したが、何れも面白い!!