でーれーガールズ

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 733
感想 : 138
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396633714

感想・レビュー・書評

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  • 大好きな原田マハさん

    美術系の作品はカタカナが多くて(笑)
    頭を使うので
    違う感じの物が読みたくて手に取りました



    漫画家のアユコが30年ぶりに
    高校時代の3年間を過ごした岡山へ戻る。
    母校の創立記念の講演をするためです


    30年も経っているのに
    色褪せずに蘇る青春時代
    講演までの様子と並行して
    30年前の青春時代が描かれています。


    最初は全体を把握できず
    ちょっと読みにくかったのですが
    中盤にかかるとだいたいわかってきて
    現在と過去を行き来する書き方にも慣れ
    楽しむことができました(^^)



    そして終盤の展開に
    思わず泣いてしまいました…
    そんな展開になるとは思ってなかった。。



    アユコ自身には
    あまり感情移入できない気がしてましたが
    よく考えたら
    思い出すのも恥ずかしいような時期って
    誰にでもありますよね…(遠い目)

    私も封印していた青春の暗黒歴史を
    少しだけ思い出しました笑


    そして図らずも今日はこの後
    学生時代の友人の結婚式なんです!
    アユコのように昔話に花を咲かせようと思います



    この作品は全てがわかったあと
    最初から読むとまた違った解釈ができそう。
    少しだけ読み返してみようと思います(^^)

  • 世代が重なるのでわかることばかり、面白く読めた。
    漫画家とし活躍する鮎子。鮎子は高校3年間を過ごした岡山の母校から講演を依頼される。30年前の回想と現在でストーリーは進行する。普段、行き交う制服姿の高校生に眩しさを感じる。もう何十年も経って当たり前に歳をとり、あの他愛もない(時にくだらない)自由な時間が、自分なりに貴重だったのだと気づく。楽しかったことばかりでなく、胸がチクンと痛んだり、友達に言えなかったことや今でも思い出す。なかったことにはできないが、そうやって私たちは今を生きる。
    私にも武美のような存在の友達がいる。ある時から連絡が途絶えていたが、やっぱり会いたい、と最近どちらかともなく連絡が。友達の名前を大きな声で呼びたい。

  • 『さてさて、大変だったな。覚えてるか、○○だよ。久しぶりだな』。父のお通夜の日、顔を上げた私の前には二人の男性が立っていました。中学を卒業して長い時間が流れましたが、その名前を聞き、彼らの顔を見た瞬間、一瞬にしてものすごい量の記憶が私の頭の中に一気に蘇ってきました。毎日同じ教室で一日を過ごし、部活を共にし、親しい関係を築いてきたかつての友人たち。卒業という線引きによって全く会うことなくそれぞれの時間が流れました。人と人との関係というものもとても不思議なものです。会うことがなくなった瞬間に、様々な思い出とともに、友人たちは時間の中に閉じ込められ、記憶の奥深くにしまわれてしまいました。そんな彼らと再会した時、過ぎた年月の数だけ顔が変わっても、何かしら面影というものが残っていて、それが記憶を呼び出し、時間も動き出すものなんだなと思いました。そして、会話を交わす中で、その話し方、表情に去来する自分の遠い青春時代。かつての友人と再会するということは、ある意味でタイムマシンに乗るようなものかもしれない、そんなことも感じました。

    『拝啓 突然のお便り、失礼いたします。私は、あなたさまの母校、岡山白鷺女子高校で国語教師を務めております荻原と申します』から始まる手紙を受け取ったのは、『初版は二十万部以上、作品は次々アニメ化映画化の超売れっ子』の漫画家・佐々岡鮎子(小日向アユコ先生)。『創立記念事業の一環として、記念講演』を依頼されます。『人前に出ると異様にしどろもどろになる私にとって、マンガ家になれたことは福音だった』という鮎子は早々に断りの返信を考えますが、『追伸 アユたんのデビュー作「でーれーガールズ」が、私の人生最良の作品です』という記述に目が止まります。また、別途届いたかつての友人・南原みずのから講演日前日に開催予定の同窓会の案内ももらい、そこでも『追伸 広島に転校してしまった武美、覚えとる?同窓会には、彼女も来る予定です』という記述を目にし、母校訪問を決断します。岡山に到着した鮎子は『おおげさかもしれないが、死ぬまでにもう一度訪れておきたかった場所』という『鶴見橋』を訪れます。そこに広がる景色に学生時代の思い出が去来します。『東京で生まれ、高校に入学する直前に父の転勤で岡山へ引っ越してきた』鮎子は『伝統と格式で有名だった白鷺女子高の進学コースに入学したが、とにかく困ったのは方言だ』と、友人との日常会話に悩みます。頑張って方言を使おうとするも『ものすごい』というような意味を持つ『でーれー』の使い方を誤り『でーれー佐々岡』と陰で呼ばれる日々を過ごします。その一方で 小さい頃から好きだったマンガを描くことにものめり込んでいく鮎子。自ら創作した作品の中に『神戸大学文学部の秀才。サラサラのロン毛は金色。瞳は海を映したようなブルー。整ったかおだちは、まるで若き日の草刈正雄』似の『ヒデホ』というキャラを描き『ヒデホ君を世界でいちばん好きなのは、私です』と自らのめり込んでいく鮎子。そんな鮎子を『アユ』と呼んでくれる友人ができました。秋本武美。そんな彼女に鮎子はマンガを見せ、ヒデホの話をするようになっていきます。

    過去と現在をいったりきたりしながら進行するストーリー展開ということもあって、学生時代のシーンには、鮎子の青春時代を彩った様々な名前が登場します。『十六歳の私、最近人気の出てきたアイドル、松田聖子を真似てみた。肩までの「段カット」で、前髪はふわりと揃えて眉毛を少し隠すくらいの長さ』、『朝まで「オールナイトニッポン」を聴き、寝不足で大あくびする子』、『なあなあ、きのうの「ザ・ベストテン」見た?また海援隊が一位じゃったが』、これらの名前を見てこの作品自体に一気に興味が沸いた方もいるのではないでしょうか。これらはほんの一部で、他にもこの時代を映す描写がたくさん登場します。というこの説明で興味を抱かれたそんなあなたにはダメ押しでこれはどうでしょうか。『武美が美しく陰のある孤高系アイドル(山口百恵とか)だとすれば、みずのはさわやかむっちり健全系アイドル(榊原郁恵とか)タイプだった』。いつの時代のストーリーなのか具体的な記述を探していると、『とうとう、その日がやってきた』というこの作品中とても大きな意味を持つことになる『一九八〇年十二月二十四日』という日付が出てきました。この日に中高生だった方には、この作品、恐らくどハマりするのではないかと思います。

    人の脳には思った以上に様々な記憶が刻まれているのだと思います。父の通夜に来てくれた中学時代の友人たちと話した短い会話の中にそれを強く感じました。あんなことこんなこと、彼らの顔がスイッチとなって記憶の色んな扉が開いていくのをその時感じました。その時代と同じもの、感覚により記憶は呼び覚まされるということなのだと思いますが、原田さんはこんなことも書かれています。『路面電車という乗り物は私にとって特別な乗り物だ』と岡山に戻って積極的に路面電車に乗る鮎子。『なんといっても、時を超えて同じリズムで走っている、という事実が、私には魅力的』と感じます。そして『私がこの街に暮らしていたのは、もう三十年近くも前のことだ。それなのに、ごとごとというリズムに身を任せると、この街で過ごした時代のささやかな思い出がいっせいに息を吹き返す。友人たちの笑い声がよみがえる』。あの頃と現在を比較し、変わらないものとして路面電車の走行音を体感することをスイッチにしてあの時代が蘇ってくる。なるほどと、とても納得感のある表現、感覚だと思いました。

    あの時代と同じもの、あの時代を思い起こさせるものをスイッチとして過去を思い出す瞬間。『武美も、みずのも、みんな永遠に十代の光の中に閉じこめられている。美しい化石になって、氷結した時を生きている』。色んな美しい思い出が残るあの時代、『あの頃、私たちは誰もが光の中にいた。おかしなものだ。光の中にいるときには、光を意識することなんてめったにない。そのくせ、その場所から一歩踏み出すと、どんなにまぶしい光のさなかにいたのか、初めてわかる』というあの時代。我々は、それぞれに色んなことを乗り越えて、今日を生きています。思い出は美しいことばかり、辛かったこと、苦しかったことは思ったほどには残り続けません。でも、あの時、あんなことを言わなければ、あんなことをしなければ、そんな思いは誰にも何かしら心のどこかに残っていると思います。だからこそ『なかったことにできればいい。でも、そうはいかないんだよ、あゆ。なかったことには、できない。それが、生きてるってことなんだから』という言葉の重みが響いてきます。でも、それらもやがては全て時間の中に埋もれ、苦い思い出であっても氷結していきます。でも、一方でそれは凍っているだけとも言えます。

    『なあ、あゆ。いろいろあるよ。生きていれば。つらいこと、悲しいこと、うれしいこと。出会いもあれば、別れもある。それが、人生ってやつなんだから』というヒデホの声がいつまでも響いてくるこの作品。それも人生、これも人生。青春時代の眩しさを感じると共に、思った以上に深い余韻が残り続ける、そんな作品でした。

    • kuma0504さん
      さてさてさん、おはようございます。
      なるほど、鶴見橋が特別な場所になっているんだ。
      江戸時代の山陽道の、岡山城下町に入る重要な橋だし、「4年...
      さてさてさん、おはようございます。
      なるほど、鶴見橋が特別な場所になっているんだ。
      江戸時代の山陽道の、岡山城下町に入る重要な橋だし、「4年越しの花嫁」でもロケ地になったし、古くは「拝啓、天皇陛下様」でも使われたけど、そんなたいした橋でもないけど、まぁ花火の思い出とか有れば特別な橋になるかな。
      この作品、映画の不評もあって読む候補から外していたんだけど、やはり読んで見ることなぁ。
      1980年の漫画作品なんだろ。文脈からするとアニメかな。私の場合は、この年に人生を左右する作品が連載を始めました。「楽園のカンヴァス」の感想の時に書きます。
      2020/05/31
    • kuma0504さん
      すみません。鶴見橋と京橋とを勘違いしていました。鶴見橋は、岡山市街地と後楽園・岡山城を結ぶ橋でした。あそこは、山陽女子高校から少し離れている...
      すみません。鶴見橋と京橋とを勘違いしていました。鶴見橋は、岡山市街地と後楽園・岡山城を結ぶ橋でした。あそこは、山陽女子高校から少し離れているし、どうして思い出の橋になるんだろ。喧嘩でもしたかな。
      2020/05/31
    • さてさてさん
      kuma0504さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      実は本を読んで、さらに映画まで見てしまいました。鶴見橋、なんだか予想以上...
      kuma0504さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      実は本を読んで、さらに映画まで見てしまいました。鶴見橋、なんだか予想以上に大きくて味わいもありました。そもそも一日で本と映画の両方を読み終え、見終えるというのは濃い体験でした。相乗効果もあって寝る前まで作品が尾を引いてしまって、結果とても印象に残る作品になりました。

      「楽園のカンヴァス」の感想楽しみにしています。
      引き続きよろしくお願いします。
      2020/05/31
  • いいけど••••。

    同級生の数十年ぶりの再会。

    40〜50代なら、ワクワク感と避けたい気持ちが入り混じって、複雑な感じ。

    そんな感情を経験された方も結構いると思う。

    その先が気になって読み始めた。

    好きなことを極め、人との出会いが味方するとこんな人生になるんだなぁ、と思わせるアユコ。

    自分の思い•考えに率直で義理固い。反面、「夢見る少女」でもある武美。

    30年前、少女だった2人の青春物語、かつての友情を再確認し合う物語、と思っていると、それだけではなかった。

    原田マハさん、美術関連の小説がとても評価されているけれど、それ以外の作品も描き方、構成が素晴らしい。

    でも、この小説、切なかったなぁ。

  • あゆ(高1)の彼ヒデホは。。。

    身長182㎝の長身痩躯、しかも日独のハーフで金髪碧眼の大学生。
    4カ国語を操り、ロックバンドのボーカル兼リードギタリストで
    親衛隊が殺到しても、「悪いな。おれには、もう決まった人がいるんで」と
    クールにかわし、あゆ以外には目もくれない。

    なんですか、この、ひと昔(×3くらい?)前の少女漫画のような設定は?!

    と思ったら、なんと本当に、現在44歳になった売れっ子少女漫画家鮎子が
    16歳の時に描いていた漫画のキャラクターで
    後ろに薔薇を背負い、瞳には星が煌めいていそうなこの2次元王子に
    作者の鮎子のみならず、親友の武美までが本気で夢中になっているあたりが
    まさに携帯電話もPCもなかった昭和の青春☆を思わせます。

    16歳の鮎子が、恋に恋する乙女の妄想を炸裂させて描く
    『ヒデホとあゆの物語』での、ヒデホの歯が浮くようなセリフも
    たまり場の喫茶店の自由ノートに書くポエム(!)のようなコメントも
    武美が恋心を封じ込め、あゆとヒデホのために編むお揃いのマフラーも
    なんだか昔の自分の恥ずかしい思い出を焦げ付く寸前まで煮詰めたみたいで
    思わずぎゃー!とかひゃー!とか叫んで床の上を転げまわりたくなったりして。

    たった1年足らずとはいえ、
    この気恥ずかしくも夢に満ちた時間を共有したあゆと武美が
    気まずい別れをして、ずっと会うこともなかったにも関わらず
    27年後に思ってもみなかったかたちで心を通わせ合うラストに
    温かい涙がこみ上げます。

    武美じゃないけど、
    「でーれー、ええ夢見せてもろうたが。」と口に出したくなる本です。

  • マハさんの過去作をずっと読みたいと思っていた。

    途中でうっかり最終ページを開けてしまい、結末におののいた。どういう意味?と思いながら読んだ。

    あゆとヒデホの物語を書いた鮎子、それに魅せられた武美。転校生の鮎子は方言の離せない岡山の高校で若干浮き気味。だが、鮎子の書いたマンガがきっかけで武美と親友と呼べるほど仲良くなった。
    卒業後、マンガかとして生計を立てる鮎子。母校から講演会のお誘いがあり、岡山へ。みんなそれぞれの道を進んだ。
    あのときの思い出に浸りながら、講演会当日を迎える。母校と親友のために講演会をやり切る!

    過去と現在を行ったり来たりしながら物語は進んでいった。自分も高校生に戻ったような気分だった。

  • でーれー、泣いてしまった。それもラスト30Pほどで。

    私の卒業した中学が開校して50周年を迎え、その記念式典が先日開催された。
    私は10期生なので卒業して40年になる。

    同窓生は50年間で約1万5千人。
    私の時代は生徒数も多く、12クラスもあったので、600人近く。
    それでも、そのうちいったい何人に出会えるのか、40年ぶりに会う昔の友達をお互いに分かるのか不安だったが、行くことに決めた。
    当日受付で聞くと、私の代での参加者は6名。しかも名前を憶えているのは1名だけだった。
    そんなものか。
    40年前の中学時代の友達など、今更出会っても会話の弾む余地などないかもしれない。
    それでも、あいつにも、あの子にも久しぶりに会ってみたかった。

    さて、この作品。
    白鷺女子高校創立120周年の記念公演を依頼され、故郷岡山に約30年ぶりに里帰りする、今では人気漫画家となった鮎子。
    同窓会で昔のクラス仲間たちと再会することになる。

    鮎子の心の中で高校時代の甘酸っぱい思い出が昨日のことのように蘇り、過去と現在を行き来しながら物語は進んでいく。

    高校時代に鮎子が描いていた漫画、架空の恋人ヒデホとの物語。
    そのヒデホに真剣に憧れ、恋心を抱いてしまった無二の親友武美。
    二人の友情は漫画と現実の境を超えて、ぶつかりあう。
    そして思いがけない事実を知ったことで武美と鮎子との友情にひびが入り始める。
    30年ほど前の思い出、後悔を今になって二人が本当の気持ちを語り合う。
    そして、ラストでの思いがけない出来事。
    いやあ、泣かされました。
    さすが、原田マハ。
    途中までは軽い感じの物語と思って読んでいたのに、最後で大どんでん返し。
    やられました。

  • 主人公の女子がなかなかぶっ飛んでるなあと
    思いつつ、
    あの妄想癖の片鱗は私にもあったなあ。
    うわー、恥ずいー。

    最後はやっぱり泣いてしまった。
    何が起こるか分からない年になったからこそ、
    しみじみ泣ける。

  • 青春の青臭さを優しく見守る、そっと応援する著者の姿が垣間見えて、賛同したくなる。淳くんは可愛そうというか、そこで幸せになれないのが青春か?

  • マハさんの美術関連以外の作品は初めて読みましたが、これはこれでよいですね。他にも読んでみたいです。

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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