家康、江戸を建てる

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396634865

感想・レビュー・書評

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  • 家康の命で、何もなかった土地に江戸をつくる
    ものづくりの人たちを主役とした短編集。

    第一話は伊奈家三代による利根川東遷。
    第二話は橋本庄三郎の貨幣鋳造。
    第三話は大久保藤五郎、内田六次郎、春日与右衛門による上水道工事。
    第四話は江戸城石垣の多くを占める伊豆の石丁場の親方吾平と
    それを石垣に積む親方喜三太の話。
    そして第五話では2代目将軍家忠を通して「なぜ江戸城を白く作ったか」を考えます。

    徳川家康のイヤな噂はいろいろ聞くし、
    肖像画で顔を知っているし。
    そうでなければ「家康さんて、素敵♡」と思ったことでしょう。
    いや、能力は認めていますよ、もちろん。

    ちょっと参考にしたいと思ったのは次の2つ。

    ●家康は、待つことの天才だった。
    というより、ほとんど嗜虐的なまでに「耐えて勝つ」ことを愛する男だった。

    ●この世ではほんとうに大事なことは議論では決まらない、
    数字や脅迫や詐術や根回しで決まる。
    そんな政治のリアリズムが骨までしみ込んでしまっている。
    そのくせ人間評価の尺度は誠意なのだ。

    第一話~第四話はもちろんですが、
    第五話のラストもけっこう感動的なのです。

  • 秀吉の命により、家康が転封した江戸。
    関東の一寒村だったこの地が、今や世界に冠たる大都市となった所以は、やはり家康の先見の目と、職人たちの情熱と奮闘にあったことを改めて教えてくれる。
    街づくりのため、水害をもたらす元凶たる利根川を曲げてしまう伊東忠次。
    家康の意を受け、貨幣鋳造に生涯をかける橋本庄三郎。
    井戸水は、江戸の地の地質ゆえ塩辛くて飲めたものではないため、家康から水利措置を講じられた大久保藤五郎と春日与右衛門。
    江戸城の石垣に自ら見出した最上の最上の石を積もうとする、みえすき五平、喜三太。
    己の意を込めて天守閣を建てる家康とその真意を推し量ろうとする秀忠。
    著者の臨場感あふれる描写と緻密な実証により、直木賞候補になり、また今だにロングセラーを続けていることも、納得できる傑作。

  • 家康、天下人になるって大変という小説。
    都市、いや国家を創る一大プロジェクトのさまざまなプロジェクトXがいっぱいのストーリーです。
    もう少し地図とか写真とかブラタモリ風の編集が欲しかった!

  • 面白かった。江戸発展の基礎となったインフラ整備の話。章ごとに治水事業、貨幣鋳造、水道事業などに分かれていて、主人公の官僚や職人たちも違うので、短編集的にも読める。特に水道事業の話が好きだ。藤五郎のキャラがいい。

  • 「関八州をやろう」小田原攻めの陣中で、秀吉が連れ小便をした家康に発したこの申し出から始まる壮大な江戸開発事業の物語。

    当時はまだ大半が低湿地帯で、海が現在の皇居のすぐそばまで入り込んでいた武蔵野の地を居住可能にし繁栄させるために治水、造幣、上水道、石垣、天守の江戸の基盤造りという難工事を任され奔走した男達が主役のいうなれば裏方奮闘記ですね。 

    各章の主人公達がこれまた熱い。 幾代にも渡り普請に尽力した家もあれば、一代で流れを変えてしまったりと面白い話ばかり。 文章が読みやすいので一気に読み進められます。

    江戸の古地図や現代の東京の地図、そして江戸城本丸図なんかを手元に置いて、出てくる地名等を探しながら読むとより一層楽しめそう。

    書店の手書きポップに書いてあった”ブラタモ好きにおすすめ”ってのは間違いじゃなかった。

  • 徳川家康が関東に国替えになってから、いかにして江戸の町を作り上げてきたかを、河川・貨幣・上水・石垣・天守の5つの切り口の短編から描いた歴史小説。家康が主人公かと思ったら、各切り口毎の立役者が主人公でした。
    各短編はそれぞれ興味深い話なのですが、ほとんど相互に交わることはないので、5短編を通して読みきった時の感覚も、まぁ徐々に江戸ができてきましたねという感じ(短編が時系列に並んでいる訳でもないのですが)だったのがちょっと残念。

    全般的に解説が親切で、登場人物の出自や現代における場所をさりげなく添えてくれる等、非常に読みやすいのですが、話の筋で描く対象の人物が変わっている所など、わかりやすく引っ掛かりを作っている箇所があったのは、これ必要かなぁ?と思ってしまいました。
    個人的には序盤の3篇(河川・貨幣・上水)が好きで、プロジェクト自体や登場人物の決断がダイナミックで思い切りが良く、楽しく読めました。

    小説としての感動は個人的には期待しすぎていた感がありますが、綿密な取材(しかも歴史面だけでなく技術面も)に基づき、正確な情報をわかりやすくまとめているのは凄いことだと思いました。

  • 広大な江戸という地の城郭と城下町の創設。先見の目は天災・人災を防ぐライフライン、経済基盤の礎など公共の大事業に智を廻らし、盤石な積み重ねの各パーツ造りに及ぶ。馴染みの地名のゆかりにも触れ、"なるほど!納得!!"の満足の読後感。

  • 流れを変える:ここは初志を貫かせてくれぬか。繰り返して言う関東には未来がある 金貨を延べる:へりくだる人間は仕事もへりくだる。おのれをたのめ 飲み水を引く:豊臣秀吉による天下統一から15年。この国の気風は、急速に平和へと傾いている 石垣を積む:目的は、次釣りだった。仙台藩と南蛮諸国との間で直接的な交易を開始し、併せてキリスト教の宣教師を派遣してもらおうとしていたのだ 天守を起こす:江戸は永遠に普請中。成長をやめる日は来ない。そこに街がある限り、槌音は響き、道路は均され、海は埋められ続けるのだ

  • すごい壮大な長編かと思ったら、5つの側面から江戸を作っていく、主人公もそれぞれ異なってる連作でした。

    治水、貨幣、飲水、石垣、天守閣。
    主人公はそれらに関わる職人で、もしくは役人。秀忠に関しては殿様だけど。

    細切れになってる分最後に天守閣に登って江戸を見渡す家康の気持ちに入り込めなかったけど、それぞれの物語は面白かった。

    個人的には貨幣、お金で天下を取ろうとするお話が一番面白かった。

    2018.1.28
    15

  • 偶然にも、読み終わった日に著者の門井慶喜さんが直木賞を受賞されました^_^
    直木賞になったのは、『銀河鉄道の父』
    以前読んだ『屋根をかける人』に続き、『家康、江戸を建てる』を読みました。

    寒村の江戸に行くことを命じられた家康。
    その家康に、治水、経済、上水、石垣、天守閣の事業を命じられた5つの物語。
    家康が主人公ではなく、その事業に関わる人たちのストーリーです。

    1)治水工事:湿地帯だった江戸、原因となっていた利根川を東に曲げた伊奈家の4世代に渡る話。その事業の中で、今の東京の地理を作られた

    2)経済:京都・大阪に負けない良質な小判を日本中に広めることで、徳川の力強さを示す。
    京都の大判を造る名家後藤家の使用人、光次。
    寒村であった江戸へ行くよう追いやられた使用人は、家康の思惑そして自身の成功のため、良質な小判を造る。
    なかなか小判は広がらず、後藤家も立ちはだかり、、そんな時ついに起きた天下分けめ関ヶ原。
    自身を追いやった宗家への、一世一代の大逆転劇なるか。

    3)時代とともに、爆発的に増加する江戸の人口。飲み水確保の上水工事は喫緊の課題であった。
    どこかに飲める水は、、、現在の井之頭公園辺りに発見された水源を、江戸の中に運ぶ上水事業。途中、今の水道橋など多くの土地名が出てるのがブラタモ的なワクワクさせられる話。

    4)お城の正面入口には、鏡石と呼ばれる一枚の巨石が観られるようです。
    重機のない時代に、命懸けで取り出した巨石を、どのように設置しようか。
    江戸城の礎を築いた職人2人の話

    5)大阪城の黒に対し、江戸城は白だったそうです。天守閣不要とする二代将軍秀忠と対峙する、家康。
    家康の過去と未来への想いを紡ぐ。

    歴史小説ですが、現在の東京にある土地名がどんどん出てくるので、この本を持って東京散策しても面白いかもしれません。
    #ブクログ

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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