- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408536200
作品紹介・あらすじ
桜の花びらで作った首飾りは、いずれしおれる。でも、桜と人のあいだには、さまざまな物語がひそんでいる。泉鏡花文学賞受賞作家が編み上げる、女と男、七つの物語。
感想・レビュー・書評
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桜が出てくる短編集。きれいな言葉ですっと入ってくるのに人間の苦しさやがんじがらめにされたどうしようもない感情も描かれている。でも、美しいお話だと感じられる。読後感が良く、満開の桜が目に浮かぶようだ。
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この時期ですので。桜をテーマにした短編集。いずれも、悩み傷ついてきた人たちが桜の下で得た新たな出会いとともに、ゆっくりと再生していくようなおだやかな話。
【花荒れ】p144
桜なんて毎年咲くのに、いつだって見る度に目を奪われて、懲りもせず胸に切ないものが込みあげてくる。幸福な夢のような日々がまたぽっと咲くのではないかと期待してしまう。諦めても、諦めても。どんなに身体や心が醜く歪んで老いていっても。春の嵐はいつだって吹き荒れる。
(中略)
たとえ一瞬で消えてしまうとしても、花がなくては人は生きてはいけない。心騒がすものが心の在りかを教えてくれるのだから。 -
短編集。桜にまつわる話。一番最初の話が一番好き。
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桜のみせる、幻想と現実のあわい
桜にまつわる7つの短編集である。
春の夜の夢の如く、現実感の薄い幻想的な雰囲気が、どの作品にも表れている。
息苦しさを感じている登場人物らは、非日常へふらふらと迷い込み、そこで何らかの答えを見つけ、現実で生きていく。
ここまで強烈な体験ではなくとも、誰しも非日常に迷い込むことはあるように思う。
そこでは現実のもつ肩書きやレッテルはなく、ただ今その場にいる一人の人間として扱われる。
そういった空間や関係性を欲している時には、このような偶然も起こるのかもしれない。
宵闇にうかぶ、桜の妖しさ -
桜は、美しさとはかなさとそして、狂気をはらんでいる。桜に魅せられた人の心もまたきっとそうだと思う。
桜にまつわる7つの物語。
一人でいるのが寂しくて悲しくて誰かにそばにいて欲しくて。でもそんな自分を認めたくなくて。
そういうどうしようもない夜にきっと人の心は桜の狂気に染まるのだろう。
残酷なほどの美しい文章に心がざわめく。いつか桜の根元に埋めて欲しい、などと思ったりもする。
桜は、美しいけど、怖い -
次に桜を見たときは、この本の話を思い出すだろう。
"人は、心動かされるものに触れて心が溶ける感情を共感できる誰かとは繋がることができる"
桜は儚いから美しいのかな。 -
桜にまつわる人と人の出会いと癒しの短編集。美しいな〜!