桜の下で待っている

著者 :
  • 実業之日本社
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感想 : 134
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536644

感想・レビュー・書評

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  • 桜前線が日本列島を北上する春、 新幹線で北へ向かう男女五人それぞれの行先で待つものは…
    ふるさとをめぐる五つの物語、いとおしくなるような優しさにあふれた短編集です。

    家族って、きれいごとじゃない。家族だからこそ本音をぶつけすぎて、後悔する事もある。
    ぶつけられる相手がいるのは幸せなことなんだよ。そんな風に諭されたように感じました。
    読了後は身近にいる人に優しくしたくなること請け合いです。個人的には、生と死についてファンタジー的に描かれていた「ハクモクレンが砕けるとき」が一番好きでした。

  • なんとも言えない読後感。あったかいとか切ないとか一言で表せない。でもすごく良い本だった。泣かせたくはないかもしれないけど思わず泣いちゃう本だった。郷愁が心に残る。

  • 面倒だけれど愛おしい。「ふるさと」をめぐる5つの物語。
    桜前線が日本列島を北上する4月、新幹線で北へ向かう男女5人それぞれの行先で待つものは。
    実家との確執、地元への愛着、生をつなぐこと、喪うこと……
    複雑にからまり揺れる想いと、ふるさとでの出会いを
    あざやかな筆致で描く、「はじまり」の物語。
    (アマゾンより)
    ~~~~~~~~~~~
    東北新幹線・故郷にまつわる短編連作。
    彩瀬まる氏の本は2冊目。好みです。女性らしい文章と・・・
    R-18文学出身だからかな?いきなりセックス云々という言葉がでてきたり(苦笑。でも、もゥオバハンなので、そういうのスルーできるんで、気になりません。)

    彩瀬氏=1986年生まれということですが、イメージとしてはもっと、だいぶ年配の女性が描きそうなイメージです。読者層も、40代以降の女性がターゲット、かな。
    アマゾン紹介で「実家との確執」とありますが、確執さえも、彩瀬まる氏が描くとやさしく癒されます。




    著者の「暗い夜、星を数えて」が読みたいです。
    (図書館で予約待ち中)。

  • 彩瀬さんの本やっぱり好きやなあと思う。今回は新幹線で、それぞれのふるさとへ帰っていく5つの短編集。
    それぞれの家族があって、ストーリーがあって。最後はどこかほっとさせてくれる。終わりが明るいとやっぱりなんだか清々しくていいな。

    月一くらいで新幹線に乗ってるけど、時間帯によって乗ってるお客さんの顔つきが違うっていうのもよくわかる気がするな。

  • 新幹線で故郷へ向かう5人の男女。それぞれ違う想いを抱きつつ、それでも向かったその先での人々のいとしさに満ちた短編集です。

    ふるさとや田舎というものを美化するつもりはないけれど、日常から少し離れているその場所では、懐かしさといとしさ、そして自分が今大切な人に囲まれていることを改めて気づかせてくれる場所でもあるのではないかな、と思えたのでした。

    その場所の人たちとのささやかな交流を通して、小さな決意をしたり、あらためて恋人への想いを強くしたり。自分のいない、けれどつながりのある場所は、どこか心のよりどころとして、持っておきたいものだなあ、と思えました。

    そしてさらりと通り過ぎていた新幹線の売り子のお姉さんが最後の登場が心憎い構成。彼女こそ、ふるさとへ往来する人々の、ほんのひととき、一瞬だけのかけがえのない「ふるさと」のようなあたたかな存在…でもあるのでしょう。

  • 【収録作品】モッコウバラのワンピース/からたち香る/菜の花の家/ハクモクレンが砕けるとき/桜の下で待っている

  • 舞台は春、東北新幹線で故郷に帰る人たちと、乗組員の家族の連作短編。

    初読みの作家さんでした。
    ふんわり優しい話が、読みやすく、好みです。

    故郷に帰るのって、嬉しかったり、ちょっと面倒だったり、気持ちはいろいろ。
    でも、帰りには、行って良かったと思える、そんな話に共感しました。

    婚約者の親に会いに行く『からたち香る』、両親を亡くした兄弟の話『菜の花の家』が良かった。

  • ふるさとって、なんだろう。と、しみじみ。
    私にはふるさとがある。
    そこでずっとそのまま生きていくのは嫌だと思って。ここではないどこかへ行きたいと思って。
    でも、ふるさとから離れたところで生きている今、私にとってふるさとはいつもほっとできる場所で、私の帰りを待ってる場所で、そこで過ごすと元気をくれる場所で。だけど、そこからまた今いる場所へと戻っていくべき場所で。
    そういう、なんていうかふわふわとして温かくて、けどずっとそこにはいられない、っていう場所なんだな、と。
    彩瀬さんの小説って、凛としてるんですよね。一生懸命生きているヒトたちの毎日を、まっすぐに前を向いて歩いているヒトたちの毎日を、小さな小さな出来事の中で泣いたり笑ったりしている毎日を、さらりと端正に描いている。この物語たちもそんな魅力に満ちている、そう思いました。

  • ふるさとに対する想いって、人それぞれだけど、良くも悪くも思い入れのある場所なんだろうな。
    故郷を離れたタイプの人間ではないから、ハッキリとは分からないけど。

  • 例年より早い桜の開花に誘われて、思わず手に取った。

    彩瀬さんの作品は初めてだったけど、心情の描写が素晴らしいと思った。
    それぞれの短編の主人公は、年代も性別も立場も様々なのに、いつの間にか自分のものになっている感覚。

    「ハクモクレンが砕けるとき」が印象に残った。
    鍵っ子だった小さいころ、千里と同じように、死んじゃったらどうしよう、事故に遭ったらどうしよう、と何がきっかけだったのか今では思い出せないけれど、そんなことを考えてこわくなっていたことがふとよみがえった。
    人は知らないうちに、自分が見聞きして、体験したことがその人の血肉になっていくのだと思う。
    幸せなことだけじゃなく、悲しいことも、苦しいことも。震災だってそう。
    「苦しみしか汲み取れないとしたら、お前の目が悪いんだ。よく目を磨いておきなさい」
    暗いものに覆われそうになっても、賢治のようにきらきらしたものを取り零さないように生きていきたい。

    今度岩手に帰ったら、童話村で賢治の目を通した世界に触れて、マルカンのソフトクリーム、食べよう。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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