鋼鉄のシャッタ-: 北アイルランド紛争とエンカウンタ-・グル-プ
- コスモス・ライブラリー (2003年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
- / ISBN・EAN: 9784434039942
作品紹介・あらすじ
ロジャーズの先駆的エンカウンター・グループの記録。北アイルランド紛争は、英国が12世紀にアイルランド島を支配して以来続いていた。貧しいカトリックと裕福なプロテスタント。何世紀にも渡った憎しみ合い。紛争は泥沼化していた。1972年、ロジャーズらは、北アイルランドの首都ベルファーストから来たプロテスタント4名、カトリック4名、英国陸軍退役大佐1名と、3日間24時間のエンカウンター・グループをもった。本書はその記録であり、社会的・国際的紛争解決への示唆を与えてくれるであろう。
感想・レビュー・書評
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2階心理学:146.8/RIC:https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410164164
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ロジャーズのエンカウンター・グループがどんな感じなのか、興味あって、読んでみた。アイルランド紛争をその対立の当事者が話し合うというもので、プロセスワークだったら、ワールドワークとでもいうようなもの。
逐語録かと思っていたら、会話の部分はハイライト部分だけの紹介。逐語録はまた別にあるらしい。
だが、これはこれですごく面白いというか、参加者を集める苦労、そして、対話がなかなか深まらないことへの介入、そして、参加者のその後の活動などがまとまっている。
こうした社会問題に関するワークショップで、ここまで前後のプロセスがしっかり書かれているものは、あまりないんじゃないかな?
しかも、対話は記録映画になっているというわけだから、参加者も命がけ。
この取り組みが、アイルランドでの対立の緩和にどの程度役にたったのかは、分からないけど、その後のワークショップ参加者の活動をみると、なんか勇気をもらった。
別途、逐語録も手に入れて、ワークショップでのファシリテーターの介入をみてみたいと思う。 -
「鋼鉄のシャッター」は、一人一人の心の中にあるシャッター。毎日身の回りに溢れる暴力に疲れ、自分を守るために感情も痛みも外に出さなく た人たちが持つシャッター。
本としては中途半端な終わりを迎えた感じがするものの、記録としてはとても示唆に富んでいると思う。付録の計画書も興味深い。
やはり実感するのは、正義と平和を両方実現するための誰にでも効く特効薬は無いんだってこと。アイルランドの話だけれど、中東でも似たようなシーンを見たなぁって、留学時代を思い出した。 -
ロジャーズの基でパーソンセンタードを学んだ筆者は、アイルランド紛争で対立関係にある市民を集め、師ロジャーズをファシリテーターにエンカウンターを行い、それを映画として上映する。その書籍版。
書籍版では如何に参加者を集めたか、その後の参加者達がどうしているかも書かれている。
晩年のロジャーズはエンカウンターを活動の中心にしていた。麻薬に関わる人たちや戦争で苦しむ人たちのエンカウンターをし、社会問題に対してパーソンセンタードを切り口として改善を図っていた。
その決定版とも言えるのが、この「鋼鉄のシャッター」だ。ただ語り合うだけのエンカウンターで本当に世界を変えることなどできるのだろうか。少なくともロジャーズはそれができると信じた。
カウンセリングの極致、究極のカウンセリングというものがあるのだとしたら、私はその一つにこの「鋼鉄のシャッター」を挙げたい。それがロジャーズ本人ではなく、その教え子の発案であるところが、また極めてロジャーズ的ですばらしい。