リテリングを活用した英語指導—理解した内容を自分の言葉で発信する

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  • 大修館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469246438

感想・レビュー・書評

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  • 英語リテリング指導のいろは

    リテリングの指導のバリエーションを増やすのに適した本。評価のことまで含む。リテリングに特化した本は私はこれまで読んだことがなかったので購入した。

    以下は個人的な話
    リテリングは学校教科書を使用したリーディングとスピーキングの統合的な活動の一つです。私の周りでも学校教育で取り入られていること多い。私は初任から3年くらいこの活動は学校教科書を使いながら、インプットからアウトプットまで持っていける理想的な方法を見つけたと思っていたが実践しているうちにいくつかの課題に直面した。

    1つ目はリテリングのコミュニケーション価値の不足である。生徒は同じ教科書を持っているため持っている情報は同じである。それを伝え合うことにどれほどコミュニケーション的な価値があるのかということに懐疑的である。この本には教科書内容のリテリングの後に自分の意見を追加的に発表する活動を提案しているが、個人的にあまり魅力的には感じられない。この問題の根本にはリテリングのコミュニケーション的価値が不足していることにあるのではないかと思う。

    2つ目はリテリングが要約の性質を帯びるものなのかどうかである。本書ではどちら場合もあると認めているが、個人的にはどちらに転がるかで全く活動の目的が変わってくると思う。要約を求めるのなら、語数制限を設け端的にまとめているリテリングが評価させるはずだし、逆にないのであればプレゼンテーションとして要約では省かれることの多い具体例を適宜用いながら聞き手にわかりやすく伝えるもの評価されるのではないか。1つ目の論点と通じるが、やはりリテリングのコミュニケーション的価値とは何かを指導者側が意識していないといけないと思う。

    3つ目は自分の言葉でリテリングすること、そのように指導することの難しさである。全員が同じ教科書からのインプットを教材にしているため、内容にさが生まれない。差が出るとすればいかにパラフレーズできたかであろう。「教科書に書いてある難しい言葉を使わないでね」と言っても生徒はどのようにパラフレーズすれば良いのかわからないという経験をした。ペアやグループで共有活動しても限界を感じたことも多かった。時には教員がパラフレーズの仕方について明示的に説明をする必要があるように思った。ただ一方で、そこまでして自分の言葉で言うこと自体を生徒に求めるのであればリテリングではなく、あるお題に対して自分の考えを述べる意見文を書かせた方がよいのではとも思うところもある。

    以上の疑問点から私はリテリングを授業で行わないようになった。リテリングの代わりに帯活動のペアでのディベートライクや活動や教科書の絵を活用した絵描写などを行っている。

  •  高校で「読んだり、聞いたりしたことを、何らかの補助的なメモ等を見ながら、第3者に伝える活動」である「リテリング」の活動をするために、どんな準備をさせるか、リテリングの種類、バリエーション、評価の仕方、どんな効果があるのかの調査結果をまとめたもの。実際のレベルの違う複数の教科書のレッスンと、どのように活動を行うのかという例が豊富に紹介されている。また、結果として様々な音読活動の方法や、アクティブラーニング的な手法などを知ることができる。
     まず高校なので、今この瞬間に中1を教えている自分には、まだそんなに使えそうにないかなあと思った。もちろん今後のためにはなったけど。あと、結構おれもリテリングやるんだけど、わりと「リプロダクション」になっていて、本当の意味でのアウトプットになってないんだなあと、改めて思った。「むしろ、文字を見ない音読と呼べるかもしれません」(p.7)というのは、正直衝撃だった。そりゃあ、そうだよなあ。生徒は英語だけで長いプレゼンをしているように見えるけど、結局覚えたことを吐き出しているだけなんだしなあ、という。そういう意味でも、これからは段階的にp.8の「アウトプットII」、「アウトプットIII」までいけるように、さらに「毎レッスンのゴールをアウトプットIIであるリテリングに留めずに、即興型の自己表現活動であるアウトプットIIIを定期的に取り入れてトライさせる」(p.116)ということをやりたい。
     ただ、どうしてもひっかかるのは、リテリングをやるということになると、結果的に自然に教科書通りでない表現になる場合(例えばレッスンが終わって数ヶ月後に、アウトプットをさせて、だいたいの内容しか覚えていない状態でやるとか。金谷先生の「山形スピークアウト方式」とかはそんな感じなんだったっけ? あるいは膨大な内容を要約する場合)は、真のリテリングになるんだけど、話す内容は意外と限られているのをわざわざパラフレーズさせる、という第5章の部分が、なんか変じゃないのかと思った。態を変えたら不自然になる場合もあるし、語彙をただ他の類義語に交換するというのも危険だし、パラフレーズする必然性も感じにくいし、ということで、第5章のあたりはわりとモヤモヤしながら読んでしまった。けど、リプロダクションになったとしても、p.84の「高度なリテリング」にあるものを盛り込んで、一応のアウトプットをさせるというのはできるかなと思った。あと「ゲーミフィケーション」(p.122)っていう言葉を初めて聞いた。そしたら中学校の英語の授業なんてほとんどゲーミフィケーションなんじゃないかとすら思ってしまう。(21/06/27)

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著者プロフィール

京都府立鳥羽高等学校教諭。平成22年度京都府現職教育職員長期研修の派遣教員として、京都大学高等教育研究開発推進センターにて研修。平成26年度若手英語教員米国派遣交流事業の派遣教員として、アイオワ州立大学にて研修。意味順関連としては『明日の授業に活かす「意味順」英語指導 理論的背景と授業実践』(共著:ひつじ書房)がある。また単著としては『リテリングを活用した英語指導 理解した内容を自分の言葉で発信する』(大修館書店)があり、この著書に対して一般財団法人語学教育研究所から2022年外国語教育研究賞が贈賞された。

「2023年 『改訂版 「意味順」式で中学英語をやり直す本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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