- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784479320265
作品紹介・あらすじ
『活版印刷三日月堂』著者が心を込めて描く大人気シリーズ第三弾!
温かな共感に背中を押される感動の書下ろし小説!
書店イベント、作家や歌人との出会いをきっかけに自分を見つめ直す一葉。
今を受け入れつつ歩を進めるその先には…静かな決意に涙し前を向ける物語。
感想・レビュー・書評
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シリーズ第三弾。
連句会「ひとつばたご」に通う一葉を主人公に描かれる、ハートウォーミング連作六編が収録されています。
今回も新たな出会いがあり、作家の柚子さんや詩人の優さんを始め、レギュラーメンバーで歌人の久子さんの教え子の方々が、連句会「ひとつばたご」に初参加メンバーとして登場します。
そして、柚子さんとの出会いをきっかけに、一葉が働いているブックカフェ〈あずきブックス〉にて、少女マンガのイベントが開催される展開になったりと、毎回ながら“ご縁”が素敵な繋がりを見せてくれます(まさに連句のようですね)。
そのイベントへの布石的な流れで、作中に少女マンガの作品名が数々出てくるのですが、『動物のお医者さん』は私もコミックスを全巻持っていたので懐かしかったです。
相変わらず、連句のルールはムズいのですが、言葉を選んで季節や感情を表現し、それを皆で繋げて創り上げて(巻いて)いく連句の世界って感性が磨かれていきそうで、そこに魅力を感じますね。
主人公の一葉は〈あずきブックス〉でのイベントの司会も上手くいき、副業のポップ制作も順調のようで何よりですし、連句に関しても向上心が見受けられてその成長が好ましいです。
「ひとつばたご」のメンバーが皆いい人ばかりなので、その和やかな雰囲気が伝わってきて、読んでいてほっこりします。
できれば“お菓子”もご相伴にあずかりたいところなのですけどねw・・・因みに、前巻で治子お祖母ちゃんの“定番”お菓子が一周したこともあってか、この巻では、新たなお菓子も登場して、特に完全予約制の「越後屋若狭」の水ようかんには“めっちゃ美味しそう!一体どんな味なんかな~?”と、大いにそそられました。
今後、一葉がどのように進んでいくのか(“捌き”にチャレンジする時が・・?)、またどんなご縁や広がりが待っているのか・・そして、どんなお菓子が登場するのか楽しみにしております~。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2024/03/08 読了。
図書館から。
世界が広がっていきますねぇ。
登場人物一覧ができてて助かるー。 -
「言葉の園のお菓子番」の3冊目。
今回はいつものメンバーだけでなく歌人の久子さんが連れてきた作家先生の柚子さんや詩人の広田さんなどが彩りを添えて話が進む。
お菓子も色々な事情でいつもとは異なるお菓子が用意されるなど、3冊目になって目先も変えられて、お陰で今回もまた楽しく読めた。
シリーズを通して一葉の成長物語になっているのだが、連歌を巻いたりトークイベントで司会を任されたりの中で、他のメンバーの生き方にも後押しされて、徐々に心持ちが変わっていく様が好ましい。
同じ連衆が集まって同じ発句からはじめたとしても捌きによってはまったくちがう一巻になる、『正解のない分岐の連続』という連歌のあり様に、人生というものについても考えさせられる。『長く生きればやりなおし利く』なんて句もいいね。
詩人の広田さんの句がなかなか素敵。
緑陰やまだらになりて歩きをり
水滴となりあの人の胸に棲む
長編小説の公募の一次選考にも通らず落ち込む蛍さんの吹っ切れ方も良いな。一度つまずいて知る世界もあるよね。
花が舞うやぶれかぶれで生きている
久子さんの教え子という若い人もたくさん参加してきて今までとは違った感じの句が新鮮に感じられる一方、ベテランの酸いも甘いも噛み分けた句がまた身に沁みた。
山笑えども人のむずかし -
ひとつばたごのメンバーは、年代、性別、職業が多様で、みんな自立していて、穏やかに交流しつつ、句を作る中で踏み込むこともある。
人と人との距離感が気持ちいいシリーズ。
前に進みたい気持ちも、進まなければならないという焦りも、過去を懐かしむ気持ちも、丸く包んでいく。
今回は一葉さんのポップの話はほとんど登場せず、書店のイベント運営の話が出てきた。一葉さんの仕事の話も、緩いのにきちんとしていて、心地よい。 -
亡き祖母の代わりにお菓子を届けたことから連句会に通うようになった一葉。誰かが詠んだ句に別の誰かの句がついて、世界がどんどん広がっていく連句が楽しい。「連句は正解のない分岐の連続」って本当に人生みたいだ。人生も、次々にやってくる選択肢を選んで進んでいく。そして、あの時ああしていれば…と後悔することがあったとしても正解は最後まで分からないのだ。
なんとなく流れで参加するようになった一葉が、もっと連句について知りたい、次に進みたいと積極的になってきたのが良い。これからが楽しみだ。 -
こんかいもひとつばたごの連句の会が2回分、がっちりと描写される。
一句一句、どこで響いているのか、あるいは跳躍しているのか、考えながら追っかけていくのも楽しい。
一葉さんがひとつばたごに通い始め、一年。
会には新人さんもつぎつぎと現れてくる中、一首もとられなくて一葉さんが焦ったりもしているのがほほえましい。
この巻のテーマは創作、特に小説を書くことのようだ。
新たに登場した人の中には、詩人として活動する広田優という人物もいる。
大学でドイツ文学を研究する中で、詩人としても活動する、絶滅寸前の文学青年がそのままミドルエイジになったようなおじさまだ。
それから、人気小説家の柚子さんという元気なお姉さんも登場する。
こうしたガチの創作家に触れて、小説家志望の蛍さんが揺れ動いてしまうことになる。
まだこのお話、最終的にどこに着地するのか見えてこないが(シリーズはまだ続くようだが)、この調子で登場人物が増えていくのかなあ。
お盆休みでゆっくり読めたので、出てくる和菓子も検索することができた。
御菓子司塩野の桜の干菓子、越後屋若狭の水羊羹。
どれも名店のようで、なかなかお高い。
しかも、日持ちがしなくて、当日買いに行くとか、どうやって運ぶかとか、いろいろ苦労もあるらしく、なかなかお菓子番も大変だ。
飲食物は持ち寄り方式なのかなあ、と思っていたのだが、このお菓子でよいかとメールしあったりしている場面があったので、もしかすると割り勘なのか、と今回初めて合点がいった。
そうでなければ、この間まで無職だった一葉さんにとって大変な負担のはず。
くだらないことが気になっていたのだが、まあ一つ解決してよかった。 -
不思議だ。この話を読むと、自分も連句を巻いてみたくなる。短歌とか俳句とか、そんなに興味がある方ではないのに。
いつものメンバーに加わる新メンバーもいい感じ。時代の先端を行く東京で動き回るのもよし、近くの植物園でお散歩するもよし。
おばあちゃんオススメのわらびもち、食べてみたいな。(きな粉食べられないけど。) -
これまで疑問だったお菓子代が割り勘だったことが判明して安心しました。
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シリーズ3作目。
連句という形式にも慣れてきて、なるほど、こんなふうに繋げていくのか、と読者も連句会、ひとつばたご(物語の終わりで出てくるなんじゃもんじゃの木だなんて)のメンバーとしてだいぶ上手に詠めるようになってきたはず。
登場する水羊羹は本当に美味しそう!
いつかは食べてみたいなぁ、プルプルで、まるで水そのもの!
しんとした世界から手渡されるそれは私の想像を刺激して、お腹も刺激する。
マンガの話も出てきて、本作はシリーズの中でお気に入り。
『たんぽぽの綿毛のように』で出てくる、
「大きな木は動けないけど、たんぽぽの綿毛は遠くまで飛べるでしょう?」(103頁)は、軽やかに生きる強さを感じさせる。
個人的には毒っけのあるこの句、
「念のため消せるインクで書く呪い 長く生きればやり直し利く」
が大好き。
一葉の未来もそろそろ動き出しそう。