貧乏サヴァラン (ちくま文庫 も 9-5)

著者 :
制作 : 早川 暢子 
  • 筑摩書房
3.69
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  • (15)
  • (7)
本棚登録 : 1666
感想 : 114
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480033659

作品紹介・あらすじ

家事はまるきり駄目だった茉莉の、ただ一つの例外は料理だった。オムレット、ボルドオ風茸料理、白魚、独活、柱などの清汁…江戸っ子の舌とパリジェンヌの舌を持ち贅沢をこよなく愛した茉莉ならではの得意料理。「百円のイングランド製のチョコレートを一日一個買いに行くのを日課」に、食いしん坊茉莉は夢の食卓を思い描く。垂涎の食エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 食いしん坊による食のエッセイ。
    どこか子供のような無邪気さのあるユーモア抜群の著者の語り口。
    ランチの合間に読み進め、食べることの楽しさと幸せ、違う文化圏の食の食べ飲み比べの面白さを、明治〜大正〜昭和の時代の流れとともに楽しめる。
    森鴎外の長女である彼女の生い立ち、生活、親の育て方が、彼女の小説家としての面白味を作り上げたのだろう。

  • ハラヘリ読書というエッセイから気になった本でした。

    森茉莉ら、シュークリームのことをシュウクリイムと表現したり、チョコレートのことをチョコレエトと表現したり、コカコーラのことをコカコオラ、ソースのことをソオスなどなど

    表現方法が独特です。

    だけど、シュウクリイムとチョコレエトの方がより美味しそうだなと感じます。
    表現って不思議ですよね。

    内容自体は、そこまで面白いなと感じることはなく、どちらかと言うと読みにくいなーと思いパラパラ読みでしたが、ハラヘリ読書でも紹介されていた森茉莉独自の表現方法をキャッチしたく、目を光らせていました。

  • 茉莉さん素直で大好き。
    「お茉莉は上等」って言われて育ったの羨ましいし、そう言われる所以がすごくわかる。
    牟礼魔利の字面が、まぶたにこびりついて、離れない。

    ただ、個人的には、本の中のグルメ描写が好きではないことを痛感した。

  • 読書室ポワロで読んだ、宮田ナノ「ハラヘリ読書」つながり。著者がしびれたという森茉莉のエレガントさの一端にふれてみたくて。ルウム・クウラア、エヴァ・ミルクにグラニュウ糖、クレエム・ドゥ・カカオ、フルウツ・ポンチ、シュウクリイムなどのクラシックな表記はたしかにちょっと心惹かれた。もっともそういう表面的なところではなく、著者いわく「私は貧乏でもブリア・サヴァランであるし、精神は貴族なのである。」「贅沢というのは高価なものを持っていることではなくて、贅沢な精神を持っていることである」という心意気が真骨頂なのだろうけど。あと、息子のジャックとの関係というか距離感が絶妙で読んでて心地よい。特にp.132あたりの。鴎外が、杏子を煮て、砂糖のかかったのをご飯の上にかけてたべるエピソードも、まねしてみたく。

  • みなさんの評価が高い…
    私の読解力が低いのだろうか…
    頭の中に思いついた言葉をそのまま書き連ねたような文章で、括弧書きがやたら多く、括弧の中の文章がとても長い
    一つの文章なのに最初と最後のほうでは、語られてる対象が変わっているような感じをうける
    読んでて疲れる
    もう読み終わられへんかも…と何度も本を置き、気を取り直してページをめくる…
    読み終わっても
    え?ほんで何をいいたかったん?
    何について書こうと思ったはったん?
    と思う
    料理の話も同じ料理、同じ食材ばかりのデジャブ

    彼女がとても恵まれた環境で40過ぎまですごしてきたことから醸し出される一種の優雅な雰囲気は漂ってきているが…

    エッセイだから?
    小説だとちゃんとしてるの?

  • 森茉莉の世界から抜けられない。抜けたくない。貧乏な、ブリア・サヴァラン。一行目からひきこまれてしまう。食べ物の描写は独特のカタカナ使いもあって、食べたくなること間違いなし。明治大正の日本を体験してみたいと思う。森鴎外が飲んでいたチョコレエト。ロシア・サラダ。トマトをバタアを入れて煮て、ご飯にかけて食べる。トマト好きなので、試してみたい。ご飯にかけず、そのままを白葡萄酒でいただきたい。そう、ワインも葡萄酒と言われた方が、幸せなのでは?と思ってしまう。バラも薔薇の方が素敵。独りよがりな世界と言われればそれまでだけど、どんどん独りよがりになりたいと思う。年表まで作り、森茉莉のいた時代を感じたい今日この頃。

  • 一部読みにくい箇所もあったが、雰囲気は良い

  • 何度も読んだけども、今回は文章を味わうようにして読んだ。様々な料理を、豊かな文章で、表現しているのが、さすがの筆力。とてもおいしそうだった。

  • 家事はまるきり駄目だった茉莉の、ただ一つの例外は料理だった。オムレット、ボルドオ風茸料理、白魚、独活、柱などの清汁・・・江戸っ子の舌とパリジェンヌの舌を持ち贅沢をこよなく愛した茉莉ならではの得意料理。「百円のイングランド製のチョコレートを一日一個買いに行くのを日課」に、食いしん坊茉莉は夢の食卓を思い描く。垂涎の食エッセイ。
    こないだEテレでお金が欲しい時に読む本で森茉莉が紹介されていて、若い人にも茉莉さんの素敵な文章が広まればいいなと思ったばかりです。何度読んでも、やっぱりいいな。空腹のときには決して読んではダメですが(笑)彼女の過激だけれど愛にあふれた言葉の数々が私にとってはまぶしくて、豊かな精神性を目標にしたいと思いながら生きてます。

  • 長らく気にはなっていたのに、読む機会がなかった作家。
    このほど、ようやく、はじめて読む。

    サヴァランというと、洋菓子を思い浮かべる。
    あのお菓子の由来となったフランスの政治家にして美食家のブリア・サヴァランという人がいるらしい。
    「グルメ」の謂いかと思われる。

    自由な形式。
    一つ一つの文も、長かったり短かったり。
    最初読みにくいなあ、と思ったが、あっという間にハマる。

    ただ好きな食べ物について語っているだけなのに、人となりが伝わってくる。
    食いしん坊で、好き嫌いがはっきりしている。
    少し前に流行った「丁寧な生活」なぞとは大きく違う。
    こんなふうに、好きなように生きて行っていいんだ。
    勝手に、そんなふうにも思えてくる。

    フランス料理は大好きなのに、ビスケットだけはイギリス流がよく、「ビスキュイ」は認められなかったらしい。
    氷屋さんで買うダイヤ氷。
    婚家で覚えた「八杯豆腐」とは一体なんぞや?
    薔薇や菫の砂糖菓子。
    記述から、今の世にはない生活が彩をもって目の前に現れてくる気がする。

    家族からの評価も高かったという彼女の料理の特徴は、日本酒をたくさん振りかけることと、上等のバターが使われること。

    母のしげと自分は世間から「悪妻」認定された、と書く。
    けれど、どこかおおらか。
    別れた夫、山田珠樹との生活も、それなりに楽しかった、と思っているようだ。
    父鴎外から、「上等、上等」と言われて育てられたため、実際より幾分上等に育った、とご本人はいうけれど、そうした人柄のよさが見える気がする。

    思いついたことを散漫に書いてしまうけれど、白雪姫のことが気になる。
    彼女が子供の頃(明治の終わりごろ)には、まだ子供用のおとぎ話の本には入っていなかった由。
    両親はそれを「ゆきしろひめ」と呼んでいたという。
    たしかに英訳では「Snow White」。
    「しらゆき」という言葉がなんとなく嫌い、という茉莉の感性が、わたしにもなんとなくわかる。

    それから、文化人の仲間、先輩とのつきあいも割と多い人という印象も受けた。
    三島由紀夫、室生犀星、三好達治、吉行淳之介・理恵きょうだい。
    白石かずこ、矢川澄子、富岡多恵子、三宅菊子。
    人間関係も豊かだった人のようだ。

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著者プロフィール

1903~87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父への憧憬を繊細な文体で描いた『父の帽子』で日本エッセイストクラブ賞受賞。著書に『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等。

「2018年 『ほろ酔い天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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