限界集落の真実: 過疎の村は消えるか? (ちくま新書 941)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066480

感想・レビュー・書評

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  • 理由はわからない、原因は謎のままだけど、いつからか「郊外」について考えていて、そうしたらこういう本があることを知って、郊外の外についても考えるべきかな、と思って手にとった本。でも、郊外の外のできごとや問題は郊外それじしんの問題と同じような気もしてきて、じゃあ、郊外って、どこなんだ、と思うようになってしまった。

    本の内容としては、「限界集落」という言葉をとっかかりにして、まあ実際に限界集落と呼ばれているところを回ったりして、ああ、たしかに限界だよな、と思ったり、いや、そうでもねえな、と思ったりしつつ、そういう場所って、限界だなんて名付けられていない場所にだって沢山あるんじゃないか、だから限界限界!なところをスプーンですくいとって救っていってはい良かったね、っていうふうなエンディングは不可能なんじゃないのか、うーんじゃあどうするかねえ、というあたりでこの本自体は終わっているような印象。まあ、新書だから。でも、新書だけど、濃い、と思う。

  • 2007年に出てきた時はセンセーショナルな語感があった「限界集落」 1人減り二人減り、そして誰もいなくなった・・ なんて具合に無人の家屋だけが残った空間を思い浮かべたりする。

    弘前大学の教授をしていた関係で主に青森の各集落、またそこにとどまらず鹿児島、新潟、島根、高知などの集落も考察した。そこから見えたのは確かに年寄りだけだが、いずれ弱弱しく消えるのだろう、かわいそうな集落、といったイメージとはちょっと違った現実だった。子供たちは確かに同居はしていないが、小一時間位の中都市に住んで、ちょいと帰ってくる。子供にしても実家の田畑は守らねば、という意識を持つ人も多々いる。こういった現実から、現在限界集落と老人比率でくくられている集落も案外しぶといのでは、持ち直すかも、といった提示をしている。

    各集落の人口動態の変化の4つの類型考察も興味深い。東京などの大都市からの距離などの要因から、戦後ベビーブームで一旦人口増はあるが、金の卵が出て行って後は減少のみ、あるいは第二次ベビーブームを少しは経験したM型、など。

    さらに現在80前後の昭和ヒトケタ世代は親の生き方を守って過疎地に留まっているが、そろそろ人生も終わりとなり、その方たちのいなくなるこれからが問題だと提起している。世代と、人口動態の吸収県と提出県。それは東京と地方、さらに中心部と周辺部の問題であり、過疎問題の現実は特定の山奥の寒村の問題ではなく、日本全体に関わる問題としてとらえる必要があると説いている。

  • この本の中で一番重要な指摘は
    「日本がひとつになる過程で過疎、高齢化集落があらわれる」
    という点だ。

    集落で自己完結するような関係性を越えていくなかで
    地域間での人口の流動化が進み限界集落と呼ばれるものが作られた。

    それは限界集落だけの問題ではない、というのは実に正しい。

    しかし、ここでさらに気になるのは
    グローバル化の人口の動きはどのようなものか、という点だ。
    程度は小さいものの似たようなことは起こりつつあると思われる。

    今はゆっくりした動きだが
    現在あるボーダーは何かのテクノロジーで
    乗り越えられた瞬間に一気に動き出すと思う。

    その時に今ここでの対応が活かされるはずだ。
    重要な課題として取り組むべき価値のある問題です。

  • コミュニティの消滅は限界集落だけでなく大都市の問題でもある。

  • 我が相馬地区のろうそくまつりの里・沢田も紹介されていますし、その調査以来のつきあいの著者のメジャーデビューだけにうれしい本ですが、どうも力が入ってしまって硬く繰り返しの内容が多いのが残念。
    山下先生、くどいです。(笑)

  • 読みたい本リストにいれてたのが図書館に入ってたので借りてきた。なんで読もうと思ったかは忘れた。

    過疎の村、高齢者ばかりのまちなど、いわゆる限界集落について、いろんな調査の結果や事例や筆者の経験をまとめた本。
    高齢化が進みいずれは無くなると言われている「限界集落」、そういう報道はよく見るし私自身もいずれそういう集落が出てくるんだろうなーと思っていたけど、確かに実際に「集落が消えた」っていうニュースは見た覚えがない。
    じゃあ、この危機はどこで誰が言い出したのか。
    この危機は実現しそうなのか。
    危機を避けるためにはどうしたら良いのか。
    っていうかんじ。

    20年前の予測では、高齢化率が50%を超えると、地域は存続しえなくなるとされていたが、現実には実はそうなっていないそうで。
    ではなぜそうなっていないかと考えたときに、これは、我々が気が付いていない地域を存続させる隠れた構造が存在しているのかもしれない。それを探りたい、というのが筆者の目的のようです。
    で、その結果がこの本の6章である程度示すことが出来ている。


    限界集落の周辺に住むひとびと、集落そのものは「限界」だけど周辺に頼れる家族が住んでいるから、集落ごとじゃなく、周辺も見てみるのが重要っていう話が一番おもしろかった。T型集落点検は、住んでるひとや住んでた人はなんとなく感じている「むら外の家族」の存在を可視化して本当の集落の姿を表すっていう方法が、おもしろかった。なるほどこういうつながりのない都市部のひとたちにとってままじで高齢者ばかりの町でどうやってみんなくらしているのか謎だろうなーと。

    なんか思ったことをダラダラ書いてしまったので脈絡のない文になってしまった。
    オススメの本です。

  • 限界集落論が、集落消滅の直接の原因にはならない高齢化にのみ焦点を当てているという指摘が面白かった。紹介されていた集落の再点検は有益だし、意義があることだと思う。コミュニティーはそこに「住む」人だけでできているのではないと実感した。

  • 過疎地域は消えていない。限界集落は限界ではない。限界集落は決して、無能な地域ではない。限界集落はかわいそうな地域ではない。可能性に満ち溢れた土地である。限界集落の真実は現場にある。限界集落のイメージは中央の想像である。この本は使えます。

  • 都市にいる30~40代が日本社会の在り方に気付けるかが、この問題解決のカギと筆者は言っている。萌芽はある。

  • 昭和の日本人が社会の変化に適応してきた結果の極端なまでの世代間の住み分け。
    今でざっくりいうなれば、地方に定住を続けた現在の80代。それを置いて都会へ出て行った60代。都会育ちの40代。もはや都会しか知らない20代。

    自分の両親は、団塊の世代からは外れているけど、大人になると高知から東京へ出ていった。そして60歳になって、郷里の高知へ帰った。
    それは20代の自分から見ると少し異様だけど、なるほど故郷がある人は、都会の便利さよりも、心の価値観で測った時に魅力的なものがあるのだろう。

    あと30数年、自分が60歳になったら、どこかに行き場所があるのだろうか。
    それは皆が抱える問題であるからして、限界集落をかわいそうな他人事としてとらえるのではなく、世代継承という自分たちの問題としてとらえるべき、という主張に納得。
    その意味で地方に転勤した今だから、というのもあるが、心に響いた。

    人口動態はよほど不真面目にやらない限りおよそ予測と外れないのだから、1億2000万人が8000万人になったとき、どんな都市と周縁部ができていれば、一定の流動性を持ちながらもその形を保持しえるのかを考え続けることは大事だ。
    その時は中央から周辺へ、と逆の視点が重要になる。

    単に「限界集落は意外と元気にコミュニティーを保っている」以上のことがわかった。
    特に「世帯と家族は違う」という日本人の価値観は未来永劫続くべきだと思う。
    全員が超高層マンションの都市に暮らす近未来は、あまりにももろくてリスクが大きい。

    平成の大合併が最悪のタイミングだった、というのは日ごろ色んな人の話を聞いていた感覚と合致した。
    あと、限界集落の発生について、ジャレドダイアモンドみたいな地理・生物学から見た構造的分析を誰かしてほしい。

    メモ
    ・集団移動や60年代の過疎の余波が集落消滅の主な原因で、高齢化による集落消滅は今のところほとんどない。でもこれから20年の間に爆発的起こりうる。
    ・日本全体では人口減に入り始めたところだが、地域ごとにみると戦後直後から、生物・社会的な要因がまじりあって人口流出と人口流入が全国で起きていた。50年代が人口のピークなむらもある。
    ・農林業・鉱業の衰退という産業構造、国策、グローバル化の流れをもろに受けたのが秋田筆頭に東北地方だった。漁業はその影響が少し小さい気がする。
    ・近隣のつながりと、この数十年でコミュニティを再編成し続けてきた、という意味では、地方の限界集落よりも、戸山団地や多摩ニュータウンにみられるような都会の集団高齢化の方が救いようがない。

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著者プロフィール

山下 祐介(やました・ゆうすけ) 1969年生まれ。九州大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程中退。弘前大学准教授などを経て、現在、東京都立大学教授。専攻は都市社会学、地域社会学、環境社会学。著書『限界集落の真実』『東北発の震災論』『地方消滅の罠』(以上、ちくま新書)、『「復興」が奪う地域の未来』、『地域学をはじめよう』(以上、岩波書店)、『「都市の正義」が地方を壊す』(PHP新書)、『「布嘉」佐々木家を紡いだ人たち』(青函文化経済研究所)、『地方創生の正体』(共著、ちくま新書)、『人間なき復興』(共編著、ちくま文庫)など多数。津軽学・白神学の運動にも参加。

「2021年 『地域学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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