憲法政治 ――「護憲か改憲か」を超えて (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480074478

作品紹介・あらすじ

「憲法改正」とは何なのか? 緻密な取材を重ね、永田町を動かした改憲論議を読み解く。アカデミズムとジャーナリズムを往還し、憲法をめぐる政治の潮流を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 憲法改正 そこは最後の政治フロンティア。これは自由民主党が、再登板した総裁のもとに平成~令和において任務を続行し、 未知の改憲プロセスを探索して、新しい憲法と日本を求め、前人未踏の国会に勇敢に航海した物語である。

    上皇陛下の譲位がなければ、改正の発議までたどり着けたのだろうか?と言う巨大なifが残る。

    あと、優秀なルポタージュが突然「あるべき論」になって面食らう。

  • 日経記者が改憲論議を軸に過去10年の政治の動きを整理したもの。一般的な報道では改憲か護憲かで与野党の対立がクローズアップされるが、その他に憲法学者と政治家との対立があることがわかる。この立憲主義(憲法学)と民主主義(政治学)をどう融合してデザインしていくかが問題となるわけだが、学者は各々の専門領域に閉じこもり、官僚は憲法には手が出せず、政治家は日々の問題解決や選挙で忙しく、マスコミは勉強不足で無能という状態で、結果的に改憲議論が進まない状況であることがわかる。著者は記者の中ではバランス感覚もあり勉強もしているマトモな方だと思われるが、300ページ以上もある新書を読むのは国民のごく一部だろうし、どのように世論を喚起していくべきかがあらためて問われているように思える。

  • 312.1||Sh

  • 安倍晋三の改憲の方針が「96条から」となった時から、ある政治記者が憲法について勉強しながら記録をとり本にしたもの。
    憲法が主題だが、当然集団的自衛権を巡る論争、天皇の生前退位、緊急事態条項、コロナ、そして平成デモクラシーとは何か、この10年で政局はどう動いたか、そういったことをまとめて知ることができ大変勉強になった。今は名前をあまり聞かない政治家たちもつい数年前まで活躍してたんだな。

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1627/K

  •  「改憲が自己目的化」したと著者がみる安倍自民党(一部は菅、岸田)期、政治課題が次から次へと憲法争点化された、又は憲法争点が政治論争となった、憲法と現実政治の相互作用を描く。
     政権初期の96条先行改正論。安保法制。有事や大災害の際の議員や選挙期日延長という「お試し改憲」論。天皇退位の意向表明に端を発する、慰霊の旅も含めて天皇及びその行為の憲法上の位置付け論。自民党憲法改正推進本部の盛り上がり。コロナ禍と緊急事態条項。またこの期間を通じ、「三分の二」維持を睨みつつも小刻みな解散総選挙。内閣・政府と改憲論議やプロセスの関係。党内では石破と、また野党との対立。
     著者は、2000年代憲法調査会発足当初の「中山ルール」に何度も言及する。「与党の度量、野党の良識」という紳士協定はその後も一定の重みがあったが、改憲発議の可能性が見えてくると国会の緊張感が増し、円滑に機能しなくなったという。

  • 序 「憲法を巡る政治」の一〇年
    「三分の二の政治」の難しさ
    安倍流改憲の失敗の本質
    「平成デモクラシー」の権力再編
    「改革の不足」と令和の改惑論
    第1章 改憲が自己目的化する力学 2012〜2013
    1 「裏口入学」九六条改正論
    再登板した安倍の「奇手」
    憲法審査会と「中山ルール」
    橋下維新と自民改憲草案
    脱・押しつけへ「何でもいい」
    改憲が遠い特異な構造
    公明が待った、世論も逆風
    安倍と憲法学の断絶
    参院選後の微妙な勢力図
    2 内閣法制局も「首相支配」
    憲法解釈に人事で風穴
    民王党と安倍の通奏低音
    遅々とした「積極司法」
    九条と個別的・集団的自衛権
    「武力行使と一体化」の論理
    憲法学の影薄い官邸会議
    第2章 集団的自衛権と憲法九条 2013〜2015
    1 「解釈改憲」への陰路
    安保法制懇と「芦田修正」論
    安倍の本音「限定容認」
    高村の武器「砂川判決」
    波紋広げた会見のパネル
    元法制局長官らの批判
    公明が甦らせた「幸福追求権」
    シーレーン機雷掃海に穴
    閣議決定で「在庫一掃」
    2 「長谷部ショック」と分断国会必
    与野党論戦は二日だけ
    内閣と国会に協働なし
    憲法学者三人が「違憲」
    「立憲主義の地霊」現る
    失われる「共通の土俵」
    安保成り、改憲は遠のく
    第3章 象徴天皇と「アベ政治」 2015〜2016
    1 衆参両院で「改憲勢力」
    臨時国会の召集要求無視
    自民改惑草案「20日以内」
    「緊急事態条項」浮き沈み
    識員任期など「お試し改憲」論
    元最高裁判事の「覚え書き」
    「機能する憲法」長谷部理論
    参院選後の未体験ゾーン
    至難の改惑マネジメント
    国民投票と選挙の分離論
    2 「天皇退位」で半年空白
    陛下「おことば」の衝撃
    「能動的な象徴天皇」の論理
    世論高支持が決定打
    「先例となる特例法」浮上
    自民改憲草案を棚上げ
    第4章 首相が改憲を提案するとき 2016〜2017
    1 憲法学から「第三の論陣」
    「放談会」と化す憲法審
    退位立法へ「衆参合同」
    共産が合意へ流れ加速
    表の国会審議は形だけ
    ヤフーが「民間版憲法審」
    護憲・改憲超える新潮流
    重み増す個人情報保設法制
    2 「2020年」へのカレンダー
    九条残して自衛隊明記案
    公明取り込み、野党分断
    野党に「逆•長谷部ショック」
    内閣の改憲「発案」の是非
    「国会専権」も中山裁断
    「改憲より解散」へ潮目変化
    第5章 「自衛隊明記」へ自民攻防 2017〜2018
    安倍と枝野、因縁の対決
    臨時国会で冒頭解散
    安倍流権力の「過剰適応」
    一九年発議へ仕切り直し
    国民投票法の遺恨
    「感情」勝った英Eu離脱
    2 消えた「必要最小限度」
    「自衛隊」を書けない理由
    浮上する「自衛権」明記案
    100を超す九条改正案
    石破抑え「本部長一任」
    大災害時の緊急事態条項案
    党議決定を控えた理由
    第6章 「中山ルール」の重みと限界 2018〜2019
    1 憲法審査会の「開かずの扉」
    公明から国民投票法改正案
    「手を切り落とされても」
    「職権開会」巡り緊迫
    総裁三選で「ギアチェンジ」
    「職場放棄」発言で紛糾
    2 「改惑勢力」1ミリも進めず
    参院選で「三分の二」割れ
    憲法審査会長に「国対族」
    発言封殺に石破激怒
    参院に「独立財政機関」構想
    「強い首相」に「強い国会」
    第7章 コロナとデジタル「新しい中世」 2020〜2021
    1 感染症対策と統治システム
    緊急事態条項の論争再燃
    「新型インフル特措法」とは何か
    脇に置かれた「法の支配」
    責任問われる「独裁官」
    くすぶるロックダウン法制
    「オンライン国会」動き鈍く
    20年改惑絶望で安倍「残念」
    2 「ゆるふわ立憲主義」の国
    菅が学術会議で任命拒否
    立憲と国民の野党内対立
    国民が「情報自己決定権」
    物足りぬ「デジタル憲法」
    変容する「個人と国家」
    コロナ特措法に罰則導入
    国・地方の調整混乱
    行政「白紙委任」に違憲説
    「硬質な立惑主義」は可能か
    国民投票法改正案が成立
    終章 憲法改正論議の三原則
    岸田首相「国民の理解を」
    公明が「デジタル憲法」公約
    内閣の「改惑発案権」再考
    「政治主導」に専門家の支え
    政党間競争とは切り離し
    「憲法改正会議」になれるか
    「平成デモクラシー」の検証から
    議院内閣制とは何か

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著者プロフィール

日本経済新聞編集委員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業、同年日本経済新聞社に入社。政治部(首相官邸、自民党、公明党、外務省を担当)、経済部(大蔵省などを担当)、ジュネーブ支局長を経て、2004年より現職。著書に『平成デモクラシー史』(ちくま新書)、『官邸主導』『経済財政戦記』『首相の蹉跌』(いずれも日本経済新聞出版社)、『消費税 政と官の「十年戦争」』(新潮社)、『財務省と政治』(中公新書)、佐々木毅氏との共編著に『ゼミナール現代日本政治』(日本経済新聞出版社)がある。

「2022年 『憲法政治 「護憲か改憲か」を超えて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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