宇宙船地球号 操縦マニュアル (ちくま学芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480085863

作品紹介・あらすじ

20世紀を代表する技術家、バックミンスター・フラ-が遺した記念碑的著作の新訳。地球を一つの宇宙船と捉える彼の刺激的な発想は、人類が直面している全地球的問題の解決に示唆をあたえ、またエコロジー・ムーヴメントやインターネット的思考を生むきっかけにもなった。「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」(マーシャル・マクルーハン)といわれているフラーのメッセージは、私たちに発想の大転換を迫り、新たな思考回路の形成を強く促す。

感想・レビュー・書評

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  • 内容の難しいところが多かったけど、フラーの思想や考え方に少しだけでも触れることができてよかった。とても半世紀前に書かれたものとは思えない。再読してもっともっと理解していきたいと思う。

  • バックミンスター・フラー(1895~1983年)は、米国の工学者、思想家、デザイナーであるが、生涯を通して、人類の生存を持続可能なものとするための方法を探り続け、その多岐に亘る活動から、マーシャル・マクルーハンをして「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と言わしめ、1969年にはノーベル平和賞候補にも挙げられた。
    本書は、1969年に発表された主著『Operating Manual for Spaceship Earth』の全訳で、その時代と深く共鳴した作品である。
    フラーは、人間について、「人間のほんとうにユニークな点は、自分が持つ数多くの人体器官の機能を分離し、配備し、拡充し、より鋭敏にしていく、その幅の広さだ。もっとも適応力があり、どんな環境にも入り込み、そこを開発していくということでも、人間はあらゆる生命現象のなかでユニークに見える。この組織体は知性と自己訓練によって巧妙にものを発明し、自分を拡張するための道具をつくりだす能力を、本質的に身につけている」とし、「総合して考えれば、富の物質的な構成要素、つまりエネルギーはけっして減らず、超物質的な構成要素、つまりノウハウは増える一方だ。ということは、私たちの富は使うたびに、増えていくということになる。エントロピーに逆らって、富は増えるだけなのだ。エントロピーはエネルギーの分散によって引き起こされる無秩序の増大だが、これに対して富というものは、局所的に秩序を増やしていく」と語る。
    即ち、人間が潜在的に持つ高い適用力を発揮し、地球を包括的・総合的な視点から考え、理解することにより、地球・人類の成長は持続可能であると、我々に向かってエールを送っているのだ。(逆に言えば、専門分化された学問分野や国家というシステムに警鐘を鳴らしている)
    尤も、訳者の芹沢高志氏が述べているように、フラーが前提とした世界のグローバル化・フラット化の推進など、50年後に生きる我々から見れば、修正を要する点があることも事実ではあるが。。。
    フラーにとってのマニュフェスト的な作品であり、読みにくい部分も少なくはないが、「宇宙船地球号」というコンセプトを有名にした作品として一読の価値はあるのではないだろうか。
    (2017年9月了)

  • そこまでページ数のある書籍ではありませんが、大変読みごたえのあるものでした。
    僕個人として一番印象に残ったのは、宗教誕生背景です。
    また、まだまだ内容が難しく、全ては噛み砕けてないため、再度読み返し天才の理解に近づきたいと思います。

  • [出典]
    「越境する巨人 ベルタランフィ」 マーク・デーヴィドソン
    P.44

  • 副操縦士が暴走してるしシナジー期待薄。

  • 本文中には出てこず注釈年表に書かれていたことだが、「人間の頭脳と心を混同してはならない」というフレーズが心に残った。

  • バックミンスターフラーといえばこの宇宙船地球号。ジオデシック・ドームで知られる建築家ですが、地球上の資源の有限性や資源の適切な使用について語るため、地球を閉じた宇宙船に例えて1963年に「宇宙船地球号」という概念・世界観を発表したその内容が記載されています。アップルストアなどを手掛ける著名な建築家であるイギリス人建築家ノーマン・フォスターも彼の思想に影響を受けており、その他数々の建築家、デザイナーが影響を受けている思想でもあります。

    また、ダイマクション(Dymaxion)という言葉が、彼の作品には多用されているが、 ダイマクションは、発明品のいくつかにつけたブランド名であり、技術の発達は「より少ないものでより多くを成す」方向に向かって進むものだというフラーの概念を元に、広告業者が考案した名前でもある。

    本書は、地球上の資源の有限性や資源の適切な使用について語っている文が、現代のサスティナビリティ思考にも通じる考え方で、有限性の感覚を得るのには理解しやすい内容となっている。この思考の極限の状態を、一つの宇宙船で資源となるものが「人」も同様であるといった描き方を、弐瓶勉作の「シドニアの騎士」にも見て取ることができるので合わせておすすめしたい。

  •  前半部分の大海賊に関する話は面白かったのだが、後半の技術論が面白くなかった。専門分化を否定するという主張を裏付けるかのように、大海賊に関する話では専門用語がさほど使われず、この人はやはり分かり易い人なのかなと思わせておいて、後半の技術論ではわけのわからない用語を連発するものだから面喰ってしまった。特に宇宙に関する定義のくだり、アインシュタインやらプランクといった同時代のスター物理学者による分かりにくい宇宙の定義を持ち出して読者を混乱させておきながら、後半では自己流の宇宙の定義を主張する。最初から自己流の定義を主張すればよかったのではないか。また技術革新による格差解消など、あまりにも楽観的な未来予測にも賛同できなかった。現在はコミュニケーションが支配する社会であり、好き嫌いが評価基準、技術なぞ何の役にもたちはしない。そういう社会のろくでもなさに向き合う必要があるのに、フラーの時代の連中は本当に楽観的でおめでたいやつらばかりだったんだなとつくづく思った。

  • 表題だけじゃ各章の内容がわかりにくい
    ☆本の要約
    第一章  フラー独特の世界観 海の支配者について/やたらと線を引きたがる専門化したがる人類の批判
    第二章 一章をさらに掘り下げる
    第三章 エントロピー的な考え、マルサスの罠について批判する
    第四章 いよいよ宇宙船地球号について フラーの独特な富の概念についても説明する
    第五章 シナジェティクスの導入
    第六章 争い合わず自然のエネルギーを使って富を増やせばいいのにという愚痴
    第七章 第六章の続き 人間が如何に富を増やしてきたか...尤も総力戦を勝ち抜くための努力が一番大きかった
    第八章 自動化で富を増やそう 莫大な太陽のエネルギーがあるのに資源を燃やすのは馬鹿げてる
    以下注釈 訳者あとがきが半分程度
    ☆以上要約

    以下フラーの批判
    1.自分の専門分野トポロジー、幾何学に囚われすぎている
    やたらにトポロジーや幾何学的な問題にこだわり、また今有る技術のみを利用して問題を解決しようとする。
    2.夢想的すぎる 世界を一つに纏め上げるのは馬鹿げている
    性善説に偏りすぎ。私生活でも仕事でも夢想的でやることなすことが雑。

    例として、本書より"クリティカル・パス"で見たフラーの提案だが 世界規模の超高電圧送電網構想が挙げられる。
    フラーは超高電圧送電網構想で世界を一つにすることで夜中あまり使われていない発電所の稼働率を高めることを提案した。昼間しか手に入らない太陽光のエネルギーを融通することも考えられる。手始めに米露間ベーリング海峡を結ぶとした。類似計画としてサハラソーラーブリーダー計画(SSB)が挙げられる。
     そんなもの本気で実現できるとでも?送電線は一箇所でも切れれば機能しなくなる。テロや災害の良い的になる。長くなればなるほど脆弱性は高まり稼働率は悪化しコストパフォーマンスは悪化する。
    だいたい今の極短いノルド・ストリームのパイプラインですら戦争政争の具にされ批判が殺到しているではないか。
    送電線の保守管理は地域の気候の影響を強く受けるので自動化も困難だ。
     それよりは水素輸送のように化学エネルギーに変換して海上輸送したほうが遥かに簡単ではないか。
     
     それだけでない。ダイマクション・カー、ダイマクション・ハウス、フラーの出したアイデアのほぼ全てが商業的に失敗し、誰もが使う、誰もが欲しがるというコンセプトとは裏腹に好事家のコレクションに成り下がっている。
     今有る技術をうまく組み合わせようとするシナジーや幾何学の知識が、世界がまとまることで課題を解決しようとするフラーの信念が、かえってフラーの視野を狭め、外でもない"専門バカ"そのものにしている。


    もう一つ、戦争についての批判。
    フラーは世界をより大きくまとめ上げれば世界はより効率的になって富を増やせると言うが、富をどれだけ増やしたところで誰もが一人以上の使用人や奴隷、望みの異性を手に入れられる争いのない世界など来るわけが無いではないか。
    直近のナゴルノカラバフを巡る44日間戦争も、ウクライナ・ロシア戦争も、WWI・IIのように資源を目的とした、社会的ダーウィニズム・マルサスの人口論に基づく戦争ではない。宗教、民族対立...火種は他にいくらでもある。富を増やせば争いがなくなるとでも?


    フラーは今有る国家は腐敗して地球規模の協力関係を阻んでいると言うが、国レベルでもうまくまとまれない人類がどうして一つにまとまれるというのか?
    私の考えはフラーとは真逆だ。世界はもっとバラバラになるべきだ。特定の相手に依存してはいけない。協力関係と言えば聞こえは良いが特定地域の資源・技術に依存すれば言いなりにされる。制裁で戦争を抑止したくてもできなくなる。

    一つの教室の人数が増えるほど争いやいじめは増える。嫌いな相手・横暴な相手とでも付き合っていかなくてはならない。
    フラーの言う宇宙船地球号は一つの教室に193人も詰め込もうとするようなものだ。

    最後に一つ擁護しておくと、自然エネルギーの利用、自動化は大賛成。21世紀にかけて大きな成功が得られた。これから先ますます自然エネルギーが利用され、化石燃料はほとんど使われなくなるだろう。既に太陽光のコストは火力より大幅に安いし、電力価格の高騰も一過性のもの。長期的には下がり続ける。

  • 2022.03.10
    snsで時々見かけるテンセグリティ構造。その発明者のバックミンスターフラーは、大学の授業で聞いて以来知っていた。この本面白いという口コミを見て、いざ読んでみた。
    波に浮かぶ泡を数式で記述する際に、無理数であるπが含まれることに対して違和感を持ち、直交座標による数学の限界を悟り、正四面体を基準とする技術体系を考えたという思考プロセスの凄みを感じた。
    人類は今あるものだけで、十分な富を得ることができる。もう奪い合う必要などない。この言葉は突き刺さる。ウクライナ侵略が始まってしまったからだ。

    そのほか印象に残ったこと。
    ・海賊が記憶に残らない社会の支配者、ルーラーだった。
    ・海賊に代わって、専門分化した人間が増えていく。しかし、過度に専門分化した生物は環境の変化に対応できず絶滅する。狭窄した視野は、人々を争いへ向かわせた。コンピュータが台頭することで、スペシャリストは不要になる。包括的に、グローバルな視野で地球を考えよう。
    ・建築家、プランナーは、スペシャリストであり、包括的な視野を持つことが求められる!
    ・物質というのは、エネルギー保存の法則に従い、一定量であり続ける。しかし、超物質的(メタフィジカル)な富、つまりノウハウはいくらでも増えていく。実験を繰り返してノウハウを得ると、世界のエネルギー量は変わらないが、ノウハウは無限に増えていく。これらをシナジー的に用いることで富は増えていく。
    ・頭と心は違う。頭は、情報を収集整理記憶する。心は、総合的な直観力により、さまざまな問題をシナジー的に解決する。直観をもっと信じろ。

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