二十一世紀の資本主義論 (ちくま学芸文庫 イ 1-4)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480089984

感想・レビュー・書評

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  • 貨幣は、貨幣として使われていることで人々の信頼を得て貨幣として使われる、循環論法的なものである云々。
    素養がないので突っ込めないだけかもしれないが、異様に分かりやすい文章。

  • 著者の短篇集。

    貨幣論、ヴェニスの商人の資本論で構築された
    貨幣にたんする考え方を色々な視点の随筆としてまとめられている。

    資本主義は自己崩壊的なシステムである。
    それは予想の連鎖に基づく、ひとつの基軸通貨からなる生態系であるからだ。

    ひとたび、その予想が裏切られると貨幣は実物以下の単なる紙切れとなる=インフレ

    また、投機は悪とみなされるが21世紀において誰もが投機家である。
    投機家=安く買って、高く売る人たち であれば彼らは必然的に誰かと誰かをつなぎあわせており、「予想の連鎖に基づき」そのまた買い手、売り手がまだ安く買える、高く売れると考える余地がある以上、経済合理性を求め彼らもまた投機家となるのである。

    この必要悪を内包した経済循環こそが、資本主義であり、であるがゆえにバブルは生じ、収縮と拡大を繰り返すのである。

    そして、別の視点から見ると収縮と拡大こそすれ、システムの破綻は起きえない。それが社会主義に優る資本主義というシステムだ。

    しかし、我々は21世紀に向かうにあたって情報化社会に伴う、商品の複雑化(情報商品、金融商品)、グローバル経済への進展、電子貨幣など新しいフロンティアが拡大されている。

    よって我々はますます依拠せざるをえないこのシステムを前に、その本質を見極め向きあう必要があるのだ。

  • 主に貨幣論をベースに展開される。各章が独立した形式をとっており、内容の重複が気になる。またギリシャ神話をベースにした経済論など筆者独特の語り口は魅力的である半面やや難解である。とはいえ、貨幣論に関しては終始一貫した論理を貫いており、これに基づいて全ての経済的側面が語られるという一貫性はある。「貨幣は人々が半永久的に価値を持つと考えるからこそ貨幣である」や、投機の問題に対して「ケインズの美人コンテスト」「アダムスミスの市場主義経済、見えざる手」の引用など非常に分かりやすく説得力を持つ展開もあり骨太な経済論の書といえる。時代によって陳腐化する内容ではなく、時がたってまた読んでみるに値する本である。

    追記:2011/09/03現在、アメリカ、欧州のソブリン危機を契機にドルの失墜が現実味を帯びている。

  • 昔吉本隆明さんと対談していたので、この人の名前は知っていた。
    経済学に関する本だが、一般向けで、数式などは出てこないし、わかりやすかった。
    特に貨幣論がおもしろく、(私の言葉で言うと)それが一種の記号として存在しているのだということが確認できた。
    それと、日本の「企業=法人」という考え方が、アメリカあたりではむしろ否定されていて、企業は「(雇用者、労働者等を含む当事者間の)契約の束である」ということになっているとのこと、ああ、そういうことか、と思った。
    しかしこの本は古い。個々の文章は80年代から90年代のもの。
    リーマン・ショック以後の、「まさに、いま」をこの人がどう分析しているかを知りたいと思った。

  • 基本的には貨幣は最大の偽札だという主張を繰り返す。だが、これからの経済の展望についてさまざまなimplicationsについて言及していた。

著者プロフィール

国際基督教大学客員教授、東京財団上席研究員
東京大学卒業、マサチューセッツ工科大学経済学博士(Ph.d.)。イェール大学経済学部助教授、プリンストン大学客員準教授、ペンシルバニア大学客員教授、東京大学経済学部教授など歴任。2007年4月紫綬褒章を受章。

「2021年 『経済学の宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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