クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫 ク 17-2)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480092151

感想・レビュー・書評

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  • 邦題は「クルーグマン教授の経済入門」。わかりやすくて、面白くて。こういう経済書って、意外とないよな、と言いながら、そもそも経済書なんてそんなに読まないのであれだけども。でも、経済ってのは面白いなぁっていう印象は持てた。それだけでも意味がある。(11/10/1)

  • 今まで読んできた経済の本とは全く違ってて、すこし混乱した。ただ、財政赤字をGDP比で見るとか、保護貿易の額もGDP比で見てみるとか、なにが大事で、なにが大事でないかがわかりやすくて、そこに至るプロセスまで説明してくれてて、わかりやすい。学問の分野や政策の分野で戦ってる議論も公平に紹介してくれてるし、なぜ、解決できないのかとか、政治的立場だったりが全部わかったといっても過言ではないだろう。そして、たしかにインチキ経済学とまでは、ぼくはド素人だから言えないけど、今まで鵜呑みにしてたことも「あれ?」と思えるようになったり、すこし近視眼的なのかなと思えるようになった。インフレは絶対悪だという勘違いや、トンチンカンな知識が刷新された。ただ、もう少し詳しい説明が欲しいところもあるがそれは専門的に勉強しないといけないことだろう。歴史は繰り返すというけど、歴史を知ることが大事なのは、その事象が起こる事を加味するのでなく、歴史の教訓は謙虚になりなさい、そしていろんな可能性を考えなさいということらしい。さて、リーマンショック、ギリシャ危機、ベビーブーム世代の引退。どうやって切り抜けるのだろう。日本もものすごい債務超過。少し前に日本はインフレを起こすと日銀が宣言したような…。景気回復の可能性が上がると見てよいのか…。
    期待しない世代の期待がさらに下がって危機を回避するようなら少し寂しい気もする。もっと勉強しよう。知らないことが多過ぎる。あと1回は読み直したい本。まずはぼくの家計のバランスシートの資産を増やす企てを考えてみようかな。

  • ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマンによる経済の入門書。

    初版は1990年代に書かれたものだそうだけれど、ちくま学芸文庫版は2009年刊行で、あとがきにはリーマンショックについても触れられている。

    基本的にアメリカ経済についての本であり、アメリカのおかれている状況、特にアメリカにとって日本がどういう存在なのかがとても良く分かる。

    債務超過、財政赤字、貿易収支、為替レート、インフレ/デフレ、失業率、医療・社会保障問題。

    これらの問題が、それぞれどう絡み合っているのかを知るにはとても良い本だし、こういった問題は日本も同様に抱えているので、知っておいて損はない。

  • 非常におもしろくてためになる。
    ノーベル賞経済学者、クルーグマンが経済の諸案件をバッサリ。
    アメリカが当時(90年代前半)に陥っていた状態や悩みを過去の事例や経済学の内容を元に解説してくれる。

    しかし、言われてみると納得なのだけど給料が高くなっても生産性なんて上がらない(少なくとも人間の手を使うところは)。
    今考えると国際貿易の対GDP比は結構増えてる(15%とか20%とか)のでちょっとこのあたりの指摘は違うかな?という感じ。この本が書かれた当時から10ポイントぐらい上がってるので仕方ないのだけど。
    経済と経済学をマクロという視点で結び付けるには素晴らしい本だと思う。

  • まさしく「経済」入門。「経済学」入門ではない事が重要。
    経済を見る場合のポイントはどこに在るのか、どんな視点で考えれば良いのかを、簡単な説明で明快に教えてくれる素晴らしい本です。
    でも何よりも驚いたのは、これを書いた時に著者のクルーグマンは35歳だったという話だったり。凄い人は凄いんだな。

  • 20110805読了。
    経済の入門書。
    経済って色んなニュースがあってるけど、本当に大事な問題って何?
    それは生産性、所得分配、失業の3つだけ。
    他の問題(貿易赤字など)はこれらに影響をうけて発生しているんだよ、と説く。

    この説明がシンプルで明快。
    なおかつ事例や反対意見もとりまぜて紹介するから公平感もあるし納得感もあって良い。
    文章も読みやすい。

    漠然とした知識で「インフレってよくないのだなあ」と感じたりしていたものが
    なぜ悪いのか/悪くないのかがわかったりできて非常に勉強になる。

  • 入門書だけど経済の表面的なことだけ書かれているのではない。なぜ貿易赤字がいけないの?(将来支払いのコスト、金融危機のリスク、政治的リスク)→なぜ貿易赤字が起こってるの?(いろんな人の議論→根本原因はアメリカの貯蓄率が下がったこと→大量の資本流入を招いた)→貿易赤字はなくせるの?というように、現在経済学者の中で議論になっていることも紹介しながら、疑問をわかりやすく説明している。訳文はかなり砕けた文体で賛否両論ありそうだけど、私は読みやすくていいと思った。クルーグマンの専門は国際ファイナンス。彼は人々の生活水準を左右するものは、生産性、所得分配、失業の3つしかないと主張している。インフレや国際競争力や財政赤字というのは国の状態のよしあしには間接的にしか影響しない。例えば、インフレについて心配しなければならない理由は、間接的に生産性の成長を引き下げるから。財政赤字については、それが国の貯蓄を下げ、それが生産性成長への脚を引っ張るから。単純化して物事をまず考えてみるというのもわかりやすいと思った理由のひとつかも。この本をきちんと読めば、入門レベルを突破できそう。まだまだ自分のものにはできていないので、また読んでみたい。

    *メモ*
    ・統計は技術や質の根本的変化をつかまえるのが苦手→算産出の変化はどうやって計るべき?
    ・インフレ率を一定にしておくには、いつも一定の失業率がいる。

  • 東日本大震災後、週明け月曜からの株式市場と、日本円の行方が非常に気になるところだけど、『クルーグマン教授の経済入門』は、ノーベル経済学賞受賞の人気教授によるマクロ経済学入門書。山形浩生訳。翻訳が過度に口語調。ブログやツイッターでよく見かける軽い通俗語が並ぶ。けれど内容はすこぶる本格。1 ページあたりの情報量が濃密なので、読むのに時間がかかる良書。

    何故こんなにも口語訳なのか。訳者あとがきに解説がある。原書でも、経済学の難しい述語を日常英語にして、一般読者向けに書かれているとのこと。そう言われればそれでいいのかなと思うけど、でもちょっとやりすぎ感あり。

    マクロ経済学の入門書であり、別に新しい発見とか今後の見通しとか、大々的に書いてある本じゃないと前書きに断りがある。そんな面白い本じゃないのかなと思って読み始めると、内容濃密で面白い。既存経済学説の網羅的紹介と、通説に対する痛切な批判が並ぶ。

    マクロ経済において重要なのは、生産性、所得の再配分、失業率の3点のみだと言われる。経済問題でよく話題に出るインフレ、国際競争力、財政赤字、ファイナンス等は、前にあげた3点よりあまり重要ではない。3点から派生する問題に過ぎないとのこと。

    日本は財政赤字が膨大とよく言われるけれど、アメリカも財政赤字に長年悩まされている。というか、先進諸国はどこも財政赤字が膨大。日本は貿易黒字だけれど、アメリカはずっと貿易も赤字である。

    アメリカは日本批判を繰り返してきた。アメリカいわく、日本は自由貿易をしていない、日本はアメリカに輸出するばかりで、アメリカ製品を輸入していない、不公平な貿易である云々。アメリカは自国の貿易赤字を解消するため、ドルの価値を急激に変更したり、日本に自由市場開放を求めたりした。著者は、日本がアメリカ製品を買うようになってアメリカが貿易黒字になっても、別にアメリカ経済はよくならないと言う。かつ、90年代日本経済がバブル崩壊でどん底に陥ったのも、別にアメリカの介入のせいではない、日本独自の問題だと見る。国際貿易は、国内のマクロ経済にとってそんな重要じゃないという立場から、通説に対する批判が続く。

  • 世の中、<span style='color:#ff0000;'><b>森羅万象は、動と反動、短期と長期、リスク回避とリスクテイクの綱引きで決まる</b></span>し、それゆえに一定の率で変化することはなく、振動することは避けられない。ところが、得失を比較考量するよりも安易な希望に基づいた行動を選びたい人々、そして悪いニュースよりは景気のよい目標を打ち出すことを好む政治家は、インフレ政策を歓迎し、無限の財源があるかのごとくに政府と中央銀行に無駄遣いを強いるだろう。80年代以降、<span style='color:#ff0000;'>金融政策の技術が進歩したおかげで、相対的に(以前よりも)低成長が続き、閉塞感・不全感が浸透</span>した国では、そういう傾向が段々に強くなっている。それでいいのか?

  • 経済学の本はあまり読まないけれど、訳が語り口調で楽しく読めた。経済の専門家でも将来の予想は難しく、経済対策もやってみなければ分からない部分が多いんだなと感じた。、ニュースで一辺倒に悪いとされてている問題が大したものではないのには驚いた。

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著者プロフィール

NY市立大学教授。2008年、ノーベル経済学賞受賞。
イェール大学で学士号を、MITで博士号を取得。イェール大学、スタンフォード大学、MITで教鞭をとったのち、プリンストン大学経済学部教授。1982~83年には1年間大統領経済諮問委員会(CEA)のスタッフも務めた。主な研究分野は国際貿易。収穫逓増と不完全競争に焦点を置いた「新しい貿易理論」の創始者の1人である。国際金融、特に通貨危機の問題にも取り組む。1991年、アメリカ経済学会のジョンベイツクラーク賞受賞。日本語への翻訳書多数。

「2019年 『未完の資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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