湯ぶねに落ちた猫 (ちくま文庫 よ 22-1)

著者 :
制作 : 小島 千加子 
  • 筑摩書房
4.04
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本棚登録 : 96
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480424549

作品紹介・あらすじ

雲、蜻蛉、猫の名前である。「蜻蛉はすこし離れた場所に座り、邪気のない目でそっと見ていた。薄い緑に茶の線が交差した蜻蛉の翅のような目差しだった。彼女は部屋の中の一番静かな場所で息を引き取った。干潮の刻だった」と微妙な独特の距離感で猫を映し出す理恵。愛する猫たちを題材にした小説、随筆、詩を中心に編む、猫と詩人の優しい空間。

感想・レビュー・書評

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  • 何編かは昔読んだことがある。
    なんとも繊細で生きるのが下手な作者の、ひっそりと生きた記録・・・というエッセイは、読んでいて心が落ち着く。
    この前に内田百けんの『ノラや』を読んだので、また、猫が題材のエッセイを読もうと思ったのだ。
    読み始め、いつもの事ながらあまりの文体・・・というか雰囲気の違いに戸惑ったが、愛猫が息を引き取る看病の日々が、同じ献身と悲しみを伝えて、ダブった。

  • 大好きな吉行理恵さんのこちらの本、再読

    お兄さんやお姉さんやお母さん(そしてお父さんも?)
    のかげに隠れて
    目立たないような理恵さんだけれど、
    実際エッセイや小説の内容も
    しんみりとしているけれど。

    読み終わるとしみじみ、大事に大事に読みたい本です。

    猫のお話が多いんだ、と言うかほぼ猫のお話だ。
    超犬派の私からみても猫も良いものかもしれぬと感じる。

    体も弱く、誰かに会えば傷つくから、傷つけるから、と言う理由で
    ひっそりと暮らす理恵さん。

    繊細な分、辛辣で的を射た言葉を言ってしまうのかな?と想像。

    そこに淳之介さんの文が載っている。

    「十四歳ごろも生意気、というか、
    大人が本気で腹を立てるようなことばかり言うので、
    毎日のように喧嘩していた。
    三十近い男が、十五歳年下の妹に、
    本気で腹を立てているのにふと気付いて、
    滑稽な気分になるときがあった。」

    を読んで
    私の想像は間違っていないような気がしている。

    理恵さんを見守る、そして理恵さんが大事にしている家族や
    お友達の話が素敵だ。

    姉の和子さんが入院した時頑張る理恵さん、
    面白く、その後、涙。

    読み終わって、私は私の希望を叶えてあげているかな?
    と振り返る。

  • エッセイと少しばかりの小説と。

    彼女にとってこの世界はとっても
    生きづらかったことでしょう。

    世の中にはきちんと言い返せる人もいますが
    言い返せない状況になってしまう場合もあります。
    彼女は不幸にもそんな悲惨な経験をしてしまったのです。

    あとはクソみたいな大人に
    ひどい思いをさせられたことも。
    これ、本当にやめてな。
    たかだが~円でも詐欺はいけない。

    ちょっと辛いときには読んじゃだめだねぇ。

  • めも
    萩原朔太郎 『詩の原理』←読みたい

  • 流れ星
    猫・ねこ・ネコ
    記憶の小道
    旅・読書・詩人たち
    家族と私のこと
    小さな貴婦人
    黄色い猫
    河野多惠子さんへの頼り

    著者:吉行理恵(1939-2006、東京、小説家)
    編者:小島千加子(1928-、東京、編集者)
    解説:浅生ハミルトン(イラストレーター)

  • 人間関係に恐怖と煩わしさを感じてしまう、硝子細工のような詩人で小説家の著者の猫や思い出、旅、読書、詩人達、家族や自分の事に纏わるエッセイと、芥川賞を受賞した小説『小さな貴婦人』、『黄色い猫』、それに河野多惠子への手紙を収録した本。所々でページを操る手を止めてしまうような表現に出逢う。目の中に涼しい風が流れ込んでくるような感じがして爽快なとき、なんて、ワタシには何時以来ないだろう。2つの小説は極私小説的なのでエッセイの後に付されていても違和感がありません。猫に雲、蜻蛉なんて名前をつけるの感覚が素敵。

  • ずっと昔に吉行理恵さんの『小さな貴婦人』を読んで
    独特の世界観にはまって、何回か繰り返しよんだのだけど
    何故かその1冊しか読まなかった
    この本は短いエッセイで、猫との生活のことばかりなんだけど
    読んでいてふわっとやさしい気持ちになる

  • 不幸がレアコイル・・・
    なんて陰く湿った、それでいてぼうっと仄かにあたたかい
    慎ましい良い本だと思った。

  • ★ミニ猫本フェア
    実際に往来堂の猫本フェアで購入

  • 猫好き、人間嫌い、ほんとは猫なのに人間にうまれてしまったひとへ(chikumashoboさん)

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著者プロフィール

1939 - 2006。小説家、詩人。父は吉行エイスケ。兄は吉行淳之介、姉は女優の吉行和子で、父や兄の影響を受け早くから文筆活動を行う。1968年、詩集『夢のなかで』で田村俊子賞を受賞。また1981年、小説『小さな貴婦人』で芥川賞を受賞。小説作品では猫を題材とするものが多い。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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