- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480428998
作品紹介・あらすじ
織物をはじめた頃から、染めて織った布の端裂を、貼りためておいた著者の『小裂帖』。本にすることは「まるで長らく書き溜めた日記を公表してしまうような逡巡を覚える」。そこから選んだ小裂たちと、色、糸、織、仕事への、思いあふれる文章で綴る。草木から絶妙の加減で抽出し、絹糸に吸わせた色の鮮やかさ、織の妙味を、製版・印刷技術の粋をもって再現。日本の色と織の見本帳とも言える一冊。
感想・レビュー・書評
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美しい小裂が表紙のエッセイ本。
人間国宝の染色家、志村ふくみの本。
この文庫本のもととなったのは、展覧会に出された『小裂帖』。
織物への愛、裂たちへの愛、想いが伝わる一冊。
あいだあいだに綴られた裂も、文章と一緒に観るとまるで表情がみえるようだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人間国宝である染色家の志村氏が、自身が染め続け、織り続けてきた布、色に対する思いを小裂の写真とともにエッセイの形で紹介している一冊。
読んでいると、自然の力の凄さや、ひとつのことに向き合ってきた人の強さのようなものを感じる。 -
志村ふくみ 「 私の小裂たち 」著者の布きれのコレクション集。自然の色に魅せられる本。色は草木まかせという言葉の通り、色のバリエーションの多さに驚く
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色に対する表現が豊富で、その比喩が美しいと思いました。
→http://ameblo.jp/sunnyday-tomorrow/entry-11908302861.html -
近所のおばちゃんが帰省中なので、猫の世話に数日通う。志村ふくみ好きのおばちゃんが、よかったらどうぞと、読み終わった文庫本を置いてくれていたので、借りてきて読む。
▼織物をはじめた1960年前後から織ったものの残り裂を手元の手帖に貼っていたがいつの間にかたまって、2007年に『小裂帖』として出版した。
このたびその中から裂を選び、小裂帖刊行のときに書き下ろした文章と、今新たに書いた文章とを組合わせて、小さな文庫の形にした。(p.3)
というのが、この本。文庫カバーの裏には「草木から絶妙の加減で抽出し、絹糸に吸わせた色の鮮やかさ、織の妙味を、製版・印刷技術の粋をもって再現」と書いてある。
たしかに、この本に掲載されている小裂たちの色は、草木からこんな色が出てくるのかと驚かされる。さまざまな色が組み合わされた織のもように、目がすいよせられる。
たとえば同じ赤でも、蘇芳と紅花と茜の色味のちがい。樹の芯である蘇芳、花を染める紅花、根の色である茜。「花で色は染まらないのが原則」をはずれた紅花で染める興奮。
衣服がほとんど既製品になった今、糸を紡いで、染めて、織り、それを仕立てて着るものにすることは、とてつもなくゼイタクなことに思えてしまう。でも、そうやって手間暇をかけたものだったからこそ、布は大切に大切に、何度も仕立てなおされ、繕われて、使われていたのかなと思う。
志村ふくみは滋賀出身ということもあって、滋賀の県立近美に収蔵品がけっこうある。私もそれらを何度も見ているが、ガラスケースの向こうに掛かる着物と、印刷だけれど手元でじーっと見られる小裂の文庫本と、見る距離の違いを感じる。
(8/12了)