日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480814968

感想・レビュー・書評

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  • 情報科教員MTのBlog (『日本語の亡びるとき−英語の世紀の中で』を読了!!)
    https://willpwr.blog.jp/archives/51256420.html

  • 10代20代とほとんど本を読まなかった。漱石作品もまともに読んでいない。という私でもすっかり夢中になって読んでしまい、寝不足になってしまった。文豪の著作を読みたくなってしまった。むむ。

  • この本は2009年3月の「週刊ブックレビュー」でジュンク堂書店の田口久美子さんが紹介しました。
    その後もこの本のことが話題になったりして、読みました。
    水村美苗さんは、1990年に「続明暗」で話題になったことがあり、記憶にとどめていました。
    夏目漱石の「明暗」は漱石の死によって未完となっていますが、その続編を書いたわけです。

    水村さんは12歳の時に父親の仕事のためにニューヨークに渡り、20年間アメリカで生活します。
    アメリカにも英語にも馴染めず、日本近代文学を読みふけったといいます。
    30歳を過ぎて日本に帰ります。

    福沢諭吉、二葉亭四迷、夏目漱石、森鴎外、幸田露伴、谷崎潤一郎などの明治の作家を水村さんは評価しています。
    「日本文学が文学という名に値した頃の日本語がもっと読まれるべきである」という視点でこの本を書いたということです。

    近代において世界で最も尊敬されていた言語はフランス語です。
    フランス語が尊敬を集めていた時代は確かにありました。
    私の学生時代でも、英語に次ぐ第二外国語はフランス語を選択するのが一般的でした。
    サルトルやボーヴォワールに憧れる気風もありました。
    英語、フランス語、ドイツ語が世界の三大国語という印象がありました。
    いまでは、中国語やハングル語も一般的になっているのではないでしょうか。

    アメリカでは、地域の差、貧富の差、能力の差に応じて、全く違ったレベルの教育が与えられているそうです。
    水村さんが体験したことだそうですが、上中下の3クラスが作られ、上級クラスではホメロスやギリシャ神話を含めた古典の素養を身につけたといいます。
    中級クラスでもアメリカ文学、シェイクスピアやディケンズを読んだといいます。
    文学の伝統を継承するのに主眼が置かれていたわけです。
    しかし、下級のクラスでは、文学の伝統の継承とは無縁の読み書きができるということに主眼が置かれていました。
    このクラスは「おばかさんのクラス」と呼ばれていたそうです。

    水村さんは日本の国語教育は日本近代文学を読み継がせることに主眼を置くべきだと主張します。
    漱石の「三四郎」を読んでその良さが分かるように教育すべきと言います。
    中味が理解できなくても分からなくても優れた古典的作品に触れることが大切だと言います。

    近代文学を大切にすることにはわたしも賛成です。
    漱石と鴎外が教科書から消えつつあるという現象も現れています。
    現代作家の作品も教科書に取り入れられていますが、評価がまだ定まっていないものもあります。

    水村さんは、特に漱石の「三四郎」を評価しています。
    「三四郎」についての新たな視点も持つことができました。

    この本はしっかりした評論文で読み応えがありました。
    勉強したという感じになれる本でした。
    「明暗」と「続明暗」を読んでみたいという気持ちにさせられました。

  • ざっと読んでそのままにしたままでした。ここで何故ママが二度出てきて、パパが一度も出て来ないのか、きわめて問題であるとは、多少なりとも思うところでありますが、今は不問に付します。

    明確に認識しないで読み流すなどということを世人はせず、しかして私はする。そのツケ常に多いに自身を悩まし、そら見たことかという事体訪れるは先月4月のこと、2作目3作目の『日本語で読むということ』と『日本語で書くと言うこと』が刊行されるに及んで、この先行する問題の書を読み説かざるを得ない窮地に突入せし。

    読み流した中で、内容的なものとほとんど外れた言葉が、記憶に残っています。

    叡知を求める人というのは、その時代に人類が知り得ることを全て知りたく思う人のこと・・・。

    ・・・まるで私のことを指差さされているようで、顔を赤らめたものです・・・。

    ・・・・・

  • 登録:2009/05/26 図書館
    読了:2009/06/02

  • 200905

  • どの時代にも、引きつがれて<読まれるべき言葉>がある。そして、それを読みつぐのが文化なのである。

  •  

  • この本を読み終えた瞬間から、いやもっと正確に言うならば第二章を読み終えた時点から作者の言うとおり「言葉の非対称性」について常に思考することを強いられた。なんともすごい。

    今まで自分たちの使っているこの“言語”と“翻訳”に関して深く考えることなんてなかったなぁってしみじみと思う。福沢諭吉や夏目漱石、彼らの行動を覗くことで彼らがいかに<叡智を求める人>であり世界と日本について思考していたかも理解した。

    現在世界を覆い尽くす勢いをもつ普遍語である“英語”。この言語が日本語にどのような強い影響を与え、なおかつどのように日本語を変化させていくのか見守りたい。



    「然し是からは日本も段々発展するでせう」と弁護した。するとかの男は、すましたもので、「亡びるね」と云った。

  • 正直に言って興味があるタイプの本ではなかったのだが、流行っているようなので読んでみた。
    予想通り興味を惹かれるような話ではなかったので低評価、こればっかりはどうしようもない。
    そもそも「日本語が亡びる」ってタイトルが気に食わない。
    本の内容からは「日本文学が亡びる」とでもした方が良いような気がする。
    英語が世界的公用語になるとか、日本語の表意文字としての特性とかのくだりには同意できるけど、
    それとこれ(文学の話)は別物だと思う。
    そしてソレ(英語とかの話)については今更掘り起こすような話でも無いように思う。
    純粋に純日本語が使われた文学礼賛の本にでもしとけば良かったんじゃないかな。

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著者プロフィール

水村美苗(みずむら・みなえ)
東京生まれ。12歳で渡米。イェール大学卒、仏文専攻。同大学院修了後、帰国。のち、プリンストン大学などで日本近代文学を教える。1990年『續明暗』を刊行し芸術選奨新人賞、95年に『私小説from left to right』で野間文芸新人賞、2002年『本格小説』で読売文学賞、08年『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』で小林秀雄賞、12年『母の遺産―新聞小説』で大佛次郎賞を受賞。

「2022年 『日本語で書くということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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