ミナの物語

  • 東京創元社
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488013486

作品紹介・あらすじ

あたしの名前はミナ。あたしは夜が大好き。あたしは夜をのぞきこむ。フクロウやコウモリが夜空を飛び、月を横切っている。どこかでネコのウィスパーが、月の光でできた影から影へと歩きまわっているだろう。目を閉じると、そういう生きものたちがあたしのなかで動きまわっているような気がする。あたし自身があやしげな生きものみたいな気持ち。あたしはミナという名前の女の子だけど、ただの女の子じゃない。そう、ミナはただの女の子じゃない。型にはまらず自由で、喜びに満ちていて…喜びを歌うために生まれてきた鳥が、篭に閉じこめられて、どうして歌えるというのだ?『肩胛骨は翼のなごり』の前日譚。個性的な女の子ミナの羽ばたく心の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「肩胛骨は翼のなごり」の前日譚で、タイトル通りミナの物語。

    月光に照らされたテーブルの上のまっさらのノート。
    日記を書くつもりだったそのノートにたったいまから書きはじめる、
    ミナが描くミナの物語。

    日記であったり、詩であったり、「特別な行動」であったり。
    好きなことばや好きなものだけで埋まったページもあれば、
    ときには白紙のページもある。
    ミナのことばは、ミナの大好きな鳥たちのように自由にノートという空を翔け、
    仲良しの猫のウィスパーのように思考のすきまにするりともぐり込んだと思ったら、
    意外なところから顔を出したりする。

    夜が好きで、本や詩や粘土工作が好きで、鳥や木が好き。
    でも学校は大嫌い。
    頭が良くて、いろんなことに興味があって、
    自分の意思や意見をはっきり持っているミナ。
    「肩胛骨」で、そんなミナが大好きになった。
    「ミナの物語」を読むと、さらにミナが好きになっちゃいますよ、と
    コメントをいただいていたのだけれど、まったくその通りでした。
    変わり者でちょっとおとなびた印象だったミナのこどもらしい面もたくさん
    描かれたこのお話でますますミナが大好きになった。
    ミナに対して、どんなときでも愛情をもって接する大の理解者の
    おかあさんも大好き。

    ミナがいつもいる木の枝の、
    黄色と緑の木漏れ日のまだらの中から見る世界、ミナが綴ることばの世界。
    頭の固いオトナには閉じられているかのように思われる彼女の世界は、
    自由で大きく、どこまでも広い。
    ブラックバードの卵が、見えない殻の中で日々成長し、雛に孵ったように、
    ミナもミナを取り巻く世界もゆっくりとゆっくりと変化していく。

    新しい物語の始まりを予感させる「肩胛骨――」に繋がるラストのミナが可愛くて、
    仕舞ったばかりの「肩胛骨――」を引っ張り出して、ぱらり読み中。

    • まろんさん
      九月猫さん、こんにちは!

      いいなぁ、読まれたんですね!
      「肩胛骨は翼のなごり」に心を鷲掴みされて以来、
      読みたい本リストに燦然と輝いている...
      九月猫さん、こんにちは!

      いいなぁ、読まれたんですね!
      「肩胛骨は翼のなごり」に心を鷲掴みされて以来、
      読みたい本リストに燦然と輝いている本です。
      自由で行動力があって、「肩胛骨」では抜群の存在感を見せたミナ。
      私もまた、ミナに再会したくてたまりません♪
      2013/05/18
    • 九月猫さん
      まろんさん、こんばんは♪

      文庫になるまで・・・と思っていたけれど、
      ますますミナが好きになりますよーと聞いたら
      ガマンできませんで...
      まろんさん、こんばんは♪

      文庫になるまで・・・と思っていたけれど、
      ますますミナが好きになりますよーと聞いたら
      ガマンできませんでした(笑)

      レビューがうまく書けず省きましたが、
      最後のほうに学校でお友達だった女の子が会いにくる場面が
      とてもいいんですよ~♪
      ミナがマイケルに声をかける勇気を出すきっかけになったんだろうなと。

      まろんさんもぜひぜひ♪
      本当にミナがますます大好きになっちゃいますよ(*´∇`*)

      まろんさん、最近ブクログでお見かけしなかったので、
      体調崩されたのでは?と心配してました。
      やっぱりまろんさんがいらっしゃらないとブクログが淋しいですね(*^-^*)
      2013/05/18
  • 『肩胛骨は翼の名残』の前日譚、しかも本作はマイケルの隣の家に住む少女・ミナが主人公ということでとても楽しみにしていました。

    「あたしの名前はミナ」という一文から始まる本書は、ミナが日記がわりにつけ始めたノートの中身です。
    ミナは同じ年頃の子供たちよりも、自分の意志をはっきりと持った女の子です。
    しかし、そのせいで周囲の人々から変わり者扱いをされ、今は学校に行かずに母と2人で自宅学習をしています。

    ミナの日常はたくさんの不思議や発見に満ちていて、そのたびにミナの心が喜びで震える様子が目に見えるようです。
    ブラックバードの巣をのぞきこみ、粘土でフクロウを造り、始祖鳥について考える。
    ウィリアム・ブレイクの詩を愛し、「死」や「無」について考え、夢の中で空を飛ぶ。
    空き家になった隣家を見にきた新しい家族を、木の上からこっそり観察する。

    自分の周囲に広がる世界。
    自分の内側にある世界。
    世界を見つめるミナの瞳がきらきらと美しくて、とてもまぶしい物語でした。

    • 九月猫さん
      すずめさん、こんばんは。
      はじめまして、九月猫と申します。
      フォローしていただいてありがとうございます。

      先日『肩胛骨は翼の名残』...
      すずめさん、こんばんは。
      はじめまして、九月猫と申します。
      フォローしていただいてありがとうございます。

      先日『肩胛骨は翼の名残』を読了したので、
      前日譚のこの作品も気になってます。
      ミナ、頭が良くて自分の考えをはっきり言えて
      すごく素敵な女の子ですよね。
      文庫待ちだったのですけれど、すずめさんのレビューを読んで
      今すぐ読みたくなってしまいました(^m^)

      すずめさんは司書さんだけあって、
      いろんなジャンルの本を読んでらっしゃいますね。
      すずめさんの本棚、わたしにとって興味深い素敵な本棚です♪
      こちらからもフォローさせていただきました。
      これからどうぞよろしくお願いします(*_ _)ペコリ
      2013/03/28
  • 本書は〝肩甲骨は翼のなごり〟の姉妹編です。〝肩甲骨・・・〟は、主人公の少年マイケルが、引っ越してきたばかりの家にあった、古びたガレージの中で奇妙な生き物を見つけ、隣家に住む少女ミナと共に不思議な経験をするというお話でした。マイケルが出会った少女ミナは、学校には通わず自由気ままに過ごしているのですが、知識が豊富なうえ、自分の意思をしっかり持った頭の良さそうな女の子でした。本書はそんなミナを主人公に据え、ミナがマイケルに出会うまでのことがらと、彼女がどんな少女なのかということを、ミナ自身が書き綴った様々な文書で語られています。
    ミナは学校や、集団生活になじめない女の子でした。ミナは夜が好きで、空想することが好きで、小鳥が好きで、動物が好きで、歩くことが好きで、本が好きで、不思議なことが好きで、考えることが好きで、何よりも庭の木の枝に座って文章を書くのが好きな女の子でした。嫌いなのは学校。けれど、ミナはけっして、自分勝手で我が侭な少女ではありません。ただ、小鳥のように自由でいたかっただけなのです。先生や世の大人たちの目には、かなり変わった、ちょっと手に負えない子供と映るのも、仕方のないことかもしれません。ミナは頭の良い子ですから、それもこれもきちんと自覚しています。でも、幼い子供のことですから、対処する術を知らないだけなのです。母親は娘ミナのことをよく理解し、たっぷり愛情を注ぎこんで育てています。
    〝肩甲骨は翼のなごり〟から十数年を経て発表された本作ですが、内容のきらめきに衰えはありません。ディヴィッド・アーモンドのファンのみならず、ちょっとばかりお疲れ気味の、大人の女性にもお勧めですよッ。

  • これは「肩胛骨は翼のなごり」の前日譚。ミナがマイケルと出会うまでの物語です。ミナが綴る日記のようなノートに書かれる文章はまるでミナの魂の叫びのよう。変わり者のレッテルを貼られたミナは学校に馴染めず、それでも元気に自宅で学習しています。亡くなったパパの事。学校のこと。好きなものの事。いい事も嫌な事もごった煮で綴られたノートはミナそのものです。特に月の光を浴びるミナの描写が印象的。西欧では月の光を浴びると気が狂うと言われています。ルナティックとか月を含む言葉は狂気を孕んでる。でも、ミナは至って正気。
    関係ないけど、私はミナのお話を読んで、ハリポタのルーナ・ラブグッドを思い出しました。少なくとも私のイメージするルーナはミナととても近い。はみ出しもので除け者。でも、確固たる自分を持った個性的な女の子なのです。

  • ストーリー的にはそんなにドラマチックな展開は無く、少し退屈だったが、『肩胛骨は翼のなごり』のミナに惹かれていたので、ミナのルーツを探る意味で興味深く読んだ。

    ミナも魅力的だが、実は母親の方がより魅力的だった。
    型にはまらず、普通の学校やフリースクールさえ行かないミナを受け入れ、ミナの落書きにも理解を示し、仲良くコミュニケーションを取る。お金もそんなミナのために惜しまない。非常に愛情に溢れ、かつ、自分の理想を押し付けることもない素敵な母親だった。

  • すっごく良かった。こういう語り口がとても好き。
    ミナの、生き生きした感じが伝わってくるような文章でした。

  • 「肩甲骨は〜」に出てくるちょっと変わった少女ミナの話。
    いつも思うけど、アーモンドさんの物語に出てくるお母さんて、理解があって毅然としていて頼もしくて、いいよね。きちんと子供を見てる。ああいうお母さんになりたいものだけど、現実はやっぱり体裁とか表面のことに囚われてバタバタしてしまう。白紙のページには何もないわけじゃない。それは書かれるのを待っているだけ。その希望に満ちたスタンスがいいな。

  • 掲載元/Ginza
    2013年1月号
    目利き書店員のリレーコラム第21回
    ブックファースト梅田2階店 藤原洋子さん

  • 『肩胛骨は翼のなごり』のミナがマイケルに出会う前の物語。
    学校と言う枠組みの中に入りきれなかったミナが身の回りで起こった様々なことをノートに綴る日記。
    自由で大胆で時に臆病で…空想と創造の世界を大切にするミナがとても生き生きとしています。亡くなった父を想い悲しんだり、学校で唯一と言っていい友人と再会して喜びつつも恥らったりと純粋だけれど複雑な少女の心がノート一杯自由奔放に広がっていました。
    そんな彼女を理解し、大切にする母親も素敵でした。

  • 本編は未読で、前日譚となる本作から読んだ。
    ミナがとっても魅力的で、作者の理想が伝わってきた。
    本編のストーリーに繋げる為か、最後の辺りの物語の流れが
    若干ぎこちないようにも思えたが、自由で素晴らしい作品だった。

    姉妹作とか関係なしに、これだけでも楽しめたし
    肩甲骨は~も、いつか読んでみようという気にさせられた。

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著者プロフィール

1951年生まれ。イギリスの作家。1988年『肩胛骨は翼のなごり』でデビューし、この作品でカーネギー賞受賞。ほかの作品に『星を数えて』『ミナの物語』『パパはバードマン』などの作品がある。国際アンデルセン賞受賞作家。

「2018年 『ダム―この美しいすべてのものたちへ―』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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