ハンプティ・ダンプティは塀の中 (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017286

感想・レビュー・書評

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  • ★いつも、あそこの壁際に寝転んでます。ゆでたまごを横にしたみたいな格好で(p.17)
    ▶留置室で謎が提示され「とりあえず」解いてみる安楽椅子探偵系ミステリと言えそうです。▶最大の謎は探偵役であるマサカさん自身。

    ■塀の中についての簡単なメモ

    【一行目】鉄扉の閉まる重い音がした。

    【アサコ】オグシの娘。コスプレイヤー。
    【アシハラ】職員。警官か。
    【ウネビ】第二留置室のトップ。留置場全体のナンバーツー。チンピラだが縦も横も大きく腕っぷしが強い。
    【押送/おうそう】取り調べのため留置場から地方検察庁にマイクロバスで運ばれること。
    【カスミ・レイ】二十歳くらいのタレント。青い服にエプロン、頭に巨大な蝶のような飾り。メイド系ファッションでブログが好評のようだ。
    【逆送】その日の取り調べがすんで地方検察庁から留置場にマイクロバスで戻されること。
    【オグシ】第二留置室。罪状は業務上横領。ウネビのご機嫌を取るために? コスプレ少女を呼んで拘置されている連中の運動時間中に見える場所にいるようにさせたという。
    【キリエ】ハセモトさんの奥さん。元看護師。
    【コシカワ】職員。警官か。
    【小西丹/こにし・たん】第三留置室。彼が「コニタン」と呼ばれるようになったことをきっかけに人の名前を「ノブタン」とか「フクタン」とかタン付けで呼ぶのが流行った。
    【サイキ・ユウサク】トマベさんの上司。殺人事件の被害者になったようだ。
    【シオジリ】第三留置室のトップ。留置場全体のナンバーワンでもある。某組の幹部。
    【接見】石鹸ではない。
    【第一留置室】舞台になっている留置室。44番はハセモトさん。デンさん。ノブさん。マサカさん。29番はワイさん。61番はトマベさん。室の表札にある他の番号13番、35番、41番がそれぞれ誰に対応しているかは不明。
    【デンさん】田さん、ファーストネームはジョーらしい。第一留置室の部屋長。黒ジャージ。プロの泥棒。凶悪な顔だが荒事は嫌いで番犬も傷つけたことはない。話を引っ張ったり先延ばしにするのが得意。これは留置所暮らしの退屈さを紛らわせるテクニック。
    【トゴシ】第二留置室。無邪気そうな外見だが根っからのスジもんで背中に龍を彫っている。怒らせなければ問題ないがある意味ウネビより恐れられている。
    【トマベ】苫部。第一留置室の和井の次の新入り。色白でひょろ長く逆三角形の顔につり上がった眼に小さな鼻と口でで口数が多い。某一流大学を出て某一流食品メーカーに入り三年目。世間の風当たりが強いタバコをすう人間をバカにしているが当人の罪状は「麻薬及び向精神薬取締法違反」。父は苫部興産社長の苫部務。
    【トリウミ】マサカさんの弁護士。芸能事務所も担当している。
    【ドルト】和井がバイトしたこたがある店。ビールが美味い。ママのワタハラザカ・アヤカの名前は「ママ」をつけたらア段を全部制覇している。ずっとその名前を口にしていたら口が大きくなったのだとか。緑色と茶色が好き。偶然だがワイさん、ノブさん、マサカさん、ハッサンさんは関わりがあった。
    【ナカグチ】ドルトが入っているマンションの住人。外国語の個人教師でドルトを教室にしていた。女好きという噂がある。
    【根津/ねづ】ハセモトさんの隣人。長女のミドリがなぜかキリエを目の敵にして根も葉もないことを言いふらしているらしい。
    【ノブさん】野武杜夫/のぶ・もりお。赤シャツ赤ジャージ。ミュージシャンの卵。マリファナで捕まる。
    【ハセモトさん】長谷本昭弘/はせもと・あきひろ。喫茶店で忘れられていた財布を置き引きした。渋くてハリのある声で話上手。四十四番。奥さんはキリエ(旧姓は信太/しのだ)さんで元看護師。一族の遺産があり職についたことがない。ミステリのコレクションは膨大。
    【ハッサンさん】第一留置室のトマベさんの次の新入り。
    【土方/ひじあた】和井の担当警官。
    【フクマツ】第二留置室。ウネビを恐れている。いじめで便秘になり医師に診てもらって即日入院となった。
    【マサカさん】真坂六郎。いつも壁沿いで卵を横にしたような格好でゴロンとしている。おとなしいらしい。詐欺のようなもので捕まったらしい。イビキが凄まじい。「塀の中のハンプティ・ダンプティ」。トマベさんによると真坂正一郎という弁護士かもしれない?
    【ミシキ】ワイの弁護士。
    【ムネ】職員。警官か。
    【ユハ部長】サイキやトマベさんの上司。
    【留置室から出る機会】起床時の布団上げ、掃除、朝食後の三十分の運動、夜の就寝準備。運動時間中に本などを確保しとかないと退屈。
    【ローロ】ドルトに出入りしていた猫。サッカーのユニフォームを着せられていた。
    【ワイさん】和井栄/わい・えい。第一留置室。二十九番。フリーター、独身、逮捕も勾留も初。喧嘩になった相手を頭に血が昇って車で引きずったまま走り骨折させたらしい。

  •  タイトルに惹かれて購入し長いこと放置してしまっていました、ごめんなさい。

     留置所という奇抜な舞台を取り上げ、日常の小さな謎をちょこちょこ時間潰しに議論するというのはおもしろいが、いまいちぱっとしなかったのが残念。
     これは感情論に過ぎないが、第一章の稀覯本についてはなぜその終わり方なのかと悲しい思いが込み上げた。本に罪はないのに留置所に持って来させるためだけに傷付いてしまう。謎を解明したとは云え、もう少し違う方法があっても良いのではないだろうかと、最初から探偵役とも云えるマサカを好ましく思えなかった。
     閑潰しができない留置場での小さな謎解きという時間潰しはなかなかおもしろい発想だが、謎解き役のハンプティダンプティそっくりなマサカは、進んで謎を解くわけでも、誰かを救いたいと願うわけでもない。謎を解いた後の使い道は、人それぞれなのだと改めて思った。

  •  このかたの作品は、おもしろいような、おもしろくないような、肩透かしを食らったような、何か物足りないような、そんな感じにいつもなります。
     おもしろいんだけど、何かちょっと突っ込みどころある、て感じ。

     今回は、留置所内が舞台。
     そこに入るはめになった人たちが実際に経験したこととかをもとにした日常系(?)ミステリ。
     1つ1つの話はそれなりにおもしろかったんだけど、最終話は、最後にもう一捻りあると思ってたのに、こんなにあっさりすんなり終わるなんて…。

  • 留置場を舞台にした連作短編ミステリー。


    何せ人物たちが留置場から出られないので、推理しても真偽を確かめようがない(笑)
    でもだからこそ、暇潰しが故の強引な推理ができちゃう。


    お話や杜撰な推理自体は気にならなかったけど、探偵役のマサカさんをはじめとした主要人物たちがあんまり魅力的じゃなかったなぁ。


    話よりも、留置場の裏側が覗けた点が面白かったです。留置場<拘置所とか初歩的なことも知らなかったので。

    「コスプレ少女は窓の外」と「アダムのママは雲の上」が比較的好きな話です。

  • 起訴前に檻に入れられた人々の話。
    主人公が何人かいる短編の様相だが、登場人物は同じでそれぞれミステリーとなる話題を持っている。途中まではみんなで推理できるが、最終的に解決するのはハンプティダンプティ=マサカさん。
    マサカさんが実は法律事務所の職員であったり、主な主人公のワイさんが実はマサカさんを監視していたりと設定としてはなかなか面白い。

  • さてはて、ハンプティ・ダンプティそっくりな体型の探偵役(※留置中)が、同部屋連中の謎を解いたり留置所の謎を解いたり。
    そんな話。
    重くならずに、どちらかと言うと愉快に書いていますが、留置所に行ってみたいとは全く思わない(当たり前ですが)
    変に改心ものとかでなくてよかったと思います。

    …しかし、なんだか最後の話、尻切れトンボな気がして仕方が無い。
    次々に新しい情報が入ってきて、結局何がどうなってそうなったのかよくわからない…

  • 留置場で同室になったマサカさんはタマゴを転がしたような体形で寝てばかり。ところがひとたび不可解な謎があると、たちどころに解いてしまう頭脳明晰な男なのだ…という連作短編集。思いがけない人が犯人だとか、結末どんでん返しとかの意外性で見せる。安楽椅子探偵ものといえるかも。なんたって留置場内しか動きようがないんだもの。「アダムのママは空の上」はちょっとやりすぎだよ〜と思った。初めはトリックがわかってた(つもり)のに、読み進むうちに著者にはめられちゃった。ちぇっ。

  • 留置場版日常の謎。それなりに自由が与えられていながら、身柄が拘束されている状況という異常な状態は留置場内しかないということがよくわかった。ただ本当にその状況が生かされ、留置場でなくては成立しないのは、体操時間に窓の外に現れるコスプレ少女と殺人予告に留置場に避難した弁護士という話だけだと思う。せっかくの凝った舞台設定が消化不良気味なのが残念だ。

  • 拘置所の中が舞台のミステリ。
    一冊ごとに語り手が変わり、そして、最後にひとつの謎が浮ぶという形が好きなので面白い。
    文章もトリックもぐいぐい読ませ、大変面白かった。

  • ある意味安楽椅子推理。刑務所内ってこんなに自由?

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著者プロフィール

1968年千葉県生まれ。大学卒業後、会社勤務を経て執筆活動に入る。2004年、「キリング・タイム」で第26回小説推理新人賞受賞。同年「小説推理」掲載の「大松鮨の奇妙な客」は、第58回日本推理作家協会賞・短編部門の候補作に選ばれた。同二作を含む短編集『九杯目には早すぎる』でデビュー。著作に「4ページミステリー」シリーズ、『ロスタイムに謎解きを』『最初に探偵が死んだ』など。

「2016年 『お隣さんは、名探偵 アーバン歌川の奇妙な日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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