千年の黙: 異本源氏物語

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  • 東京創元社
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感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488023782

感想・レビュー・書評

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  • 枕草子を読んだ後だったので
    視点が違うとこんなにも平安の世界が変って見えるのかと
    面白く読んだ。

    面白く読めたのは
    枕草子で平安の世界観や民俗的なことが分かっていたからだと思う。

    あまり好きではない紫式部や源氏物語への考え方がちょっと変った。


  • 源氏物語読者をうならせ、満足させる一作。

    源氏物語の全訳(与謝野版)を読んでいるときに、
    いろいろと調べている中でこの本を知った。
    失われた一帖「かかやく日の宮」の謎にせまる!
    というこの本をすごく読みたくなった。
    源氏物語を読んでいて、矛盾というかおかしな点があるのを不思議に思っていたから。

    はじめは私が鈍いからかと思ったのだけど、何度読み返しても突然登場する朝顔の君に源氏がどうしてあんなに惹かれているのか分からないし、里に帰っている藤壺と逢瀬を交わしたのは「2度目」のニュアンスが漂っているのに、なぜか肝心の1度目の逢瀬の場面がないことなど不思議で、調べていくうちに失われた一帖があるということを知ったのだった。


    失われた一帖の謎にせまる!というキャッチコピー(?)のこの本だけど、実際に読んだらそれ以上の本。
    紫式部が源氏物語を書き始めた時代の史実を忠実に
    描く中で、登場人物が生き生きと描かれている。
    それに、紫式部が源氏物語をどんな気持ちでどんな様子で書いたかをよく描いていて、メイキングレポート風なのも、源氏ファンにはうれしいところ。

    豪華な調度の藤壺の局について描写したいけれど、宮中へなど行ったことはないし、そんな豪華な調度も見たことがないのに、どうやって描写しようと悩んだり、作者の手を離れて一人歩きしている物語を心足らず思ったり。
    宇治十帖をどんな気持ちで書いたのか、「道長」をモデルにしているとも言われるその訳や、紫式部が巻の名前だけつけて本文を意図的に書かなかったと言われる「雲隠」の帖の話についても面白い。
    もちろん「かかやく日の宮」についての話も。

    こうした時代小説は、架空の人物を物語りのキーマンにしたりとか、史実とは全然違うストーリーにしても(例えばあのとき死んだはずの人が生きている、とか)それはそれで面白いんだけど、史実に忠実なストーリーにしようというなら、これくらい忠実にしたほうが断然面白い。
    まるでその時代に読者が生きているかのように思わせてくれるから。


    この作者、そうとう古典好き、歴史好きな方のよう。
    随所に古典からの引用が見られる。
    中宮定子様の出産の際の里下がりで、大きい御所車が門を通れず、人に顔を見られながら歩いて家に入ったこと、それに猫の命婦のことも枕草紙の中に書かれていたはず。
    惹かれるものがあったので検索したところ、水を生んだ元子女御も実在の人物で、一条天皇崩御のあと源氏の中将と恋愛したことも史実だし、「あてき」という女童は紫式部日記に登場していて、あてきもまた実在人物なのだという巧みさ。


    3つのお話は、話ごとに時間が進み、登場人物の立場が劇的に変わったり、結婚したり、夫が死んだり、また登場人物が亡くなっていたりしていて、話を語る目線の人物すら変わっているその流れは、源氏物語と似ていて、第二の源氏物語とすら言えるかもしれない。

    ああ、本当にすごい。
    なんでこんな小説が書けるんだろう?
    作者は紫式部の生まれ変わりなのかもしれない。

  • 名探偵紫式部登場!卒業論文でも読んでいるような感じがしました。自分的には北村薫の女性版みたいです。「七姫幻想」や丸谷才一の「輝く日の宮」が読まずにはいられません。

  • やはり彰子はすごい。
    道長の第一子として生まれ、その人生は道長にすべて決められたわけだけど。
    でも、自分の力で生きぬいた。
    紫式部という素晴らし家庭教師のおかげで、どんどんその力を吸収していった。
    彰子の人生、すごく興味あります。

  • なんでまた、実資の『小右記』がチョイチョイ顔を出すのかと訝しみつつ読み進めたが、なんとまあ、そういうこと!ミステリだ。
    鮎川哲也賞受賞作品なので、巻末に選評が載ってる(笠井潔と島田荘司!)。

    前半の猫騒動はなくても良くね?とも思ったが、式部の探偵ぶりが秀逸。あと、承香殿女御こと藤原元子と源頼定の恋バナが何気に華を添えてる。この物語でも、具平親王は伝聞の形でしか人柄を窺い知れない。残念。

    斎宮女御こと徽子女王の逸話が六条御息所母娘の元ネタってのはよく聞くが、他にも確かに彰子と紫の上、元子と朧月夜…と当時のリアルが巧みにとりこまれているようだ。

    久々の二段組、堪能した。しかし「賢子ちゃま(乳母がそう呼ぶ)」はないわあ。

  • 読みたい。

  • 鮎川哲也賞(2003/13回)・「異本・源氏 藤式部の書き侍りける物語」を改題

  • 2010/04/08:平安時代や源氏物語の知識があるとより楽しめます。

  • おもしろい〜!紫式部でミステリー??残念時間切れ! 続きが楽しみ♪

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著者プロフィール

1969年静岡県生まれ。日本画家・屏風作家。筑波大学大学院芸術研究科美術専攻日本画分野修了。渦巻きをモチーフにした屏風制作を行う傍ら、神社、寺院,協会への奉納絵画をライフワークとして続ける。 主な奉納・収蔵作品大徳寺聚光院伊東別院 墨筆による「千利休座像」軸一幅/駿河総社静岡浅間神社四曲一双屏風「神富士と山桜」。主な出版物 絵本『おかあさんはね、』(ポプラ社)/絵本『メロディ』(ヤマハミュージックメディア)/絵本『サクラの絵本』(農文協)/詩画集『国褒めの歌巻一』(牧羊舎) 
自身の日本画制作に加え、寺社奉納絵画、絵本制作、コラム等の執筆、講演会等を行う。人と人、人と自然、人と宇宙が穏やかに調和する日本文化の特質を生かし、新しい世界に向けたパラダイムシフトを呼びかけている。静岡ユネスコ協会常任理事。

「2020年 『ジャポニスム ふたたび』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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