死と砂時計 (創元クライム・クラブ)

著者 :
  • 東京創元社
3.27
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025434

作品紹介・あらすじ

世界各国から集められた死刑囚のみを収容する終末監獄。死刑執行前夜、密室状態の独房で、なぜ囚人は殺されたのか? 奇想と逆説に満ちた、著者渾身の本格ミステリ連作集。

感想・レビュー・書評

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  • 架空の国の監獄を舞台にした短編集。監獄で起こる事件ということでその時点でホワイダニットが入っているのだがそこから派生してさらに謎が提示される。ただ思っている以上にぶっ飛んだネタは少なく想像出来るレベルのネタだったのが残念。その中でも「墓守の誉れ」が随一かと思う。この動機は中々に凄くて唸ってしまった。ラストに明かされる大オチもまあまあよめてしまうので驚きという点では期待値を超えてはこなかったのだが、異質な世界観を楽しみたいのであればいいのではないか。

  • 架空国家の死刑囚のみの刑務所が舞台の異常設定ミステリー
    書き下ろし2作含めた6つの同世界短編
    思ったよりも世界に馴染んで面白い

  • 死刑囚を収容した週末監獄の中で起きる謎の数々。
    探偵役ももちろん囚人、というのが面白い。
    いずれ死刑になる身で謎を解く。
    エピローグで明かされた真実が一番驚愕だった。なんということだ。

  • 後味悪し。ただ最後まで読むとマリアの話の時に老がとった行動に納得がいくのが良かった。

  • 嵐の孤島や雪の山荘を始めとする、クローズドサークルものがめっちゃくちゃ好きです。
    なので、「脱獄不可能な監獄内での殺人」って言うのはそらもう滾るわけです。

    というわけで、初めての鳥飼否宇作品。このタイトルだけだったら多分手に取ってないよね…表紙の裏にオビ貼ってくれる県立図書館さん、いつもありがとうございます\(^^)/ほんと借りる時の参考になってますー(届かないお礼

    閑話休題。
    さらっと本編感想。

    「死刑執行が確定している死刑囚をなぜ殺さなければならないのか?」

    というワイダニットものといえば、法月綸太郎の短編「死刑囚パズル」も秀作です。

    ですが、本作の冒頭を飾る「魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室」は、何と死刑囚な被害者が2人!な上にかーなーりフェアプレイに優れた作品なんです!これがすごい!既述した法月作品はなかなかアンフェアくさかった(笑)と記憶していて、この手のイロモノはどうしたって動機・犯行手段含めてギリギリになるものだと思っていたので、これは嬉しい誤算でした。

    以下の作品も、魅力的な不可解な謎に溢れています。ワイダニットを突き詰めると殺害&脱出トリックを同時に解決できる作品、犯人の真意が胸を突く作品、変化球が楽しい作品、そして何より、



    驚 愕 の ラ ス ト 一 文



    最高だった…………………………( ˙-˙ )放心


    鳥飼作品、他作品も読まねば٩( 'ω' )و



    ◎魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室…死刑執行前夜に2人の囚人が殺された理由とは?

    ◎英雄チェン・ウェイツの失踪…脱獄不可能な終末監獄から唯一脱獄を果たした男は、何故満月の夜&屈強な見張り番がいる夜にあえて脱獄を図ったのか?

    ◎監察官ジェマイヤ・カーレッドの韜晦…終末監獄の監査に訪れていたカーレッドが腹部を刺された状態で発見された。彼の死の直前に彼に悪態をついていた囚人が最重要容疑者として連行されるが…。

    ◎墓守ラクパ・ギャルポの誉れ…墓の穴を掘る仕事に一人従事する男が、墓を暴き、死体を損壊している現場を押さえられた。彼が死体を損なう理由とは?

    ◎女囚マリア・スコフィールドの懐胎…女しかいない筈の監獄エリアで、一人の女が妊娠したという。シュルツ老とアラン青年は真相の究明に乗り出すが、何故かシュルツは調査を途中でアランに押し付けてしまう。

    ◎確定囚アラン・イシダの真実…シュルツ老のもとに庇護され、監獄内の数々の事件の解決に貢献してきたアランに、死刑執行が言い渡された。執行まで残り4日。アランは自らが犯した罪と犯さなかった罪をシュルツ老に告白し、未だ解けぬ謎を彼に打ち明けるが。

  • 確か新聞の書籍紹介で見かけて何となく借りて読んでみたが読みやすく謎解きもしっかりして連作としてのストーリー性もあり面白かった。読み終わったらちょうど本格ミステリ大賞受賞との報。さもありなん。

  • 舞台設定は魅力的。各章のミステリとしての面白さは、それほど意外性は大きくないが極限状況をうまく利用している。ラストは想像できるが最後の最後の一ひねりはやられた感。7.25

  • ミステリ/近未来/連作短編集
    個人的に、鳥飼否宇さんのベスト作品だと思う。
    独特の舞台を設定することで、異様な事件が起き、異常な動機が解明される。
    雰囲気としては、梓崎優『叫びと祈り』に似た印象を受けた。
    短編集として、各話とも読み応えがあるが、作品全体で一つの物語となっているのも良い。
    特に、最終話「確定囚アラン・イシダの真実」での展開は胸を打つ。そして、エピローグで愕然とした。
    アラン・イシダの数奇な人生は、続くのか…?

  • 探偵犯人被害者の全てが監獄の中な終末監獄を舞台にした連作短編集。最終章の落とし穴に完全にハマってしまい悔しくてたまらない。おぞましさがどの短編からも滲むが特に好きなのは二篇目の「英雄チェンウェイツの失踪」。短編ながら各編で構築される物語が濃密なのが良い

  • どういう話を作ればミステリマニアに受けるかを研究して
    明確に狙って作られたものだという印象。

    一言で言うと、ミステリマニアにファンが多い
    「芦辺拓のSF舞台設定と麻耶雄嵩のブラックな結末で〆る手法」を
    足して2で割ったミステリーランキング狙いの本。

    穿った見方かもしれないが、そう見えて仕方なかった。

  • 世界中から死刑囚を引き取って収容しているジャリーミスタンの終末監獄。いつ死刑が執行されるかはこの国の独裁者しだい…という設定が面白い。親殺しの罪で収監されたアランは、囚人や獄卒たちに一目置かれている頭脳明晰な老人シュルツの助手となって、監獄内で起こったいくつかの奇妙な事件を捜査することになるが…
    翌日死刑になる男がなぜ殺されたのか、なぜ闇夜でなく満月の夜に脱獄を決行したのか…などチェスタトンの香りがする話が多い。
    そして最終話でアランに死刑執行確定の知らせが届き、彼が収監された原因となった事件の詳細が語られる。これがなかなかに怒濤の展開で、エピローグではうわっと叫んでしまった。なんという素晴らしいオチ。
    この著者は作風がバラエティに富んでいるが、今まで読んだ中ではこれが一番インパクトあったかも。

  • 酷い話だ。

    某国に造られた、死刑囚専用の監獄で起きる事件のミステリ。
    オチのオチが本当に、いやぁな話である。

    死刑囚が全国から集められるのであれば、それはいったい何人になるのだろうか。
    ある種便利な国だなあと思わなくもない。
    いやしかし、外は砂漠でマトモな国でもなく。
    生き延びる手段はあるのかまったく一体。
    無理だよなあ。どう考えても無理だよなあ。

  • 結構好き。舞台設定が凝っててそこでしか作れない物語なので読んでいて楽しかった。連作短編というか長編のなかで事件がいくつも起きている感じ?

    ・魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室
    最初なので戸惑ったが謎解きパートで一気に引き込まれた。いちばん伏線がしっかりしている?
    ・英雄チェン・ウェイツの失踪
    めっちゃ好き。好きな部分を書くとネタバレになるが面白い。
    ・監察官ジェマイヤ・カーレッドの韜晦
    爽快、にやりとできる終わり方の作品のなかでこれだけ少し切ない。
    ・墓守ラクバ・ギャルボの誉れ
    グロきた!異常犯罪!と思っていたら綺麗に終わって悲しいようなうれしいような。面白い。
    ・女囚マリア・スコフィールドの懐胎
    完全に予想通りの展開だった。ここまで序盤で全ての展開がわかったのなんて初めてのような気がする。
    ・確定囚アラン・イシダの真実
    終わり方、よかった。アランについてはちょっと物足りない。引っ張りすぎたか?

  • 世界中から死刑囚が集められたジャリーミスタン終末監獄。そこで起こるさまざまな事件を描く連作ミステリ。
    どれもこれもトリッキーで魅力的です。そして人間心理のトリックも見事。特に「英雄チェン・ウェイツの失踪」の動機にはぞくりとさせられました。
    そして「確定囚アラン・イシダの真実」からエピローグにかけてが実に素敵。いろいろ伏線を回収したうえでのあの真相と、怒涛の展開。最後の最後で感動させてくれるのかと思いきや……えええっ! そりゃないよぉ……いやでもそういう邪悪さは大好きなんですが。やられたなあ。

  • ☆4.0

    世界各国から集められた死刑囚を収容するジャリーミスタン終末監獄に収監されたアラン・イシダは、牢名主となっている老人シュルツの助手となりながら監獄内で起こる事件の解決に奔走するようになる。

    死刑執行前夜に囚人が斬殺されたのは何故か?
    この監獄から唯一脱獄に成功した囚人は、どのようにして成し遂げたのか?
    共通の言葉を持たないままに墓掘りの仕事を自らやり続けていた囚人は、何故墓を暴いたのか?
    そしてアランをこの監獄に送ることになった事件の真実は?
    頭脳明晰なシュルツが解き明かす先にあるものとは……

    監獄という設定がいろんな制限を生んみ、それがまた面白そうな謎を作ってくれる。
    死ぬことが定められた場所で、それでもまだ実感には及ばないモラトリアムな空気感と決して深くはならない人間関係が、事件が起こることで何かしら変化する。
    それはアランも同じ。
    エピローグで見える未来は夢か現か。

  • ちょっと寒気がするラストだった
    良い話風に終わりそうだったのに
    繋がりのない事件の短編集かと思いきや、、なのも
    びっくりだった。

  • ミステリーの短編集という事で、それぞれ楽しく読み終わりました。ほとんど無実のアランが、まさかの展開で助かって、さすが実の父親はやる事が違うわ、と感心していたら、本当に愛する者はウイルスだったなんて。普通にハッピーエンドで良かったと思います。

  • うわぁー!マジかー!
    最後の一文を読むためだけにそれまでの300ページあまりをずっと読んできたって感じがするわ。

    正直、前半の摩訶不思議な事件とその謎解き部分はイマイチだったのよ。暇潰しには良いか、くらいの。"世界各国から死刑囚が集められる終末監獄"って面白い設定の割には人間の内面への掘り下げが浅くて事件も現実味が無さすぎるマンガ展開で。期待はずれと思って読んでたの。
    それが、最終章の「確定囚アラン・イシダの真実」だけ急に面白くてさ。この章だけ別格だな、と思ってたらエピローグでの大逆転ね。やられたー!

    アランの真実で父親の話しになったとき、シュルツ以外居ないよね?って思ってそこでの驚きは無かったけど、それでも最終章はなかなか良かった。最後に助けに来てくれた展開も、不可能だろと苦笑しつつ親子愛に心温まったの。なのに!
    いや、返してくれ。私の親子愛への感動を。笑。

    ただ、最終章であれだけ印象的に砂時計を使うなら、ギャルポの話で砂時計を絡めない方が良かったのに。砂時計=ギャルポになってたからモヤモヤしたわ。伏線でもなんでもないしね?なんでなの?

  • 予想外の面白さでした。
    最後の最後まで惹き付けられました。

  • 世界中の死刑囚のみ集めた監獄でおきる事件を謎解くミステリーなお話。
    主人公を中心に短編集。
    派手な表現や盛り上がりはないものの、監獄という条件の中でひねりの効いたトリックで構成されている。
    暗い語り口調が長く多いので好みが分かれるかな。

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著者プロフィール

1960年福岡県生まれ。九州大学理学部卒業。2001年『中空』で第21回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー。主な著作に「観察者」シリーズ、「綾鹿市」シリーズなど。碇卯人名義でテレビドラマ「相棒」シリーズのノベライズも執筆。2016年『死と砂時計』で第16回本格ミステリ大賞【小説部門】を受賞。

「2021年 『指切りパズル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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