冬雷

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 370
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025540

感想・レビュー・書評

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  • また睡眠時間を削られた。何という吸引力。鷹匠と姫と怪魚のお伽噺。因習に閉ざされた土地。漂う不快感の理由が知りたくて箸が止まりません。ストーカーの壊れっぷりがふっ切れてて戦慄できる。お伽噺をなぞったラストは美しい。

  • 贅の限りを尽くして建てられた館、冬雷閣。
    そこで伝統のために生きる人たちと
    伝統に押しつぶされそうになりながらもがく人たちの姿が描かれます。
    登場するのは神社の巫女と鷹匠、施設出身の捨て子に大金持ちの夫妻
    スートーカーに殺人犯に、、、
    これはファンタジーであり推理小説であり恋愛小説でもある
    波乱万丈ありまくりのお楽しみ満載の物語です。
    現実離れした世界を思う存分楽しめます。
    意外にも余韻が爽やかなのは、主人公の誠実に生きる姿故か・・・
    結末が知りたくてグイグイと先へ読ませるストーリーでした。

  • 因習に縛られた古い港町の名家に、跡継ぎとして引き取られた孤児の代助。家族や恋人ができ、幸せに暮らしていたが、幼い義弟の失踪が原因で町を出ていくことになった。12年後、義弟が遺体で発見されたという訃報が届き…。
    田舎の町の閉鎖的な感じ、ドロドロの人間関係、徐々に明かされていく謎。一昔前の昭和の感じのするミステリです。

  •  本屋でおススメされていて気になったので読んでみた。
     実の親を知らず、施設で育った11歳の夏目代助。日本海に面した魚ノ宮からやって来た千田夫婦に養子として引き取られ、大きな出会いがある。一つは魚ノ宮に伝わる冬の大祭で奉納される放鷹を千田家の跡継ぎとして任され、『緑丸』という鷹と出会ったこと。もう一つは千田家と関わりが深い鷹櫛神社の娘で同い年の加賀美真琴との出会い。その大祭で代助は放鷹を、真琴は『鷹の舞い』を奉納する。鷹匠としてのやりがいを感じ、これまで誰にも必要とされなかった人生から希望のある将来を得ることができた代助。
     でも、幸せは長く続かず、千田夫妻に実子が生まれたことで代助の人生が大きく狂うことになった。いろいろあり、養子を解消し夏目代助に戻り、町を出ていった、18歳の冬。そこから鷹匠を仕事として一人で生きてきた30歳の代助にある知らせが・・・そして魚ノ宮に12年ぶりに戻ることになる・・・
     自分の生い立ちに悩み、それでも誠実でありたいと一生懸命生きてきた代助なのに、なんでこんな試練ばかり・・・と思う。ストーリーに引き込まれ一気に読んだ。ハッピーエンドを思わせる終わりで報われた代助、よかった。

  • 親の顔も知らず施設で育った代助が養子として引き取られた先は、海沿いの小さな町。
    田舎の古臭く狭い人間関係の中で翻弄される代助や琴子をはじめ、登場人物像がことごとく不幸にみまわれる。
    最後に代助は幸せになれたのだろうか。
    間違っても正月に読むような作品ではない(笑)

  • 孤児として施設で育った代助だったが、日本海沿いの小さな町の名家千田家の養子になる。千田家は鷹櫛神社とともに町を守る役割を担っていた。同級生には鷹櫛神社の巫女・真琴がいて、幸せな日々を送っていた代助であったが・・・
    因習に囚われる小さな町の狭い人間関係がもたらす悲劇を描いた作品。

  • 世界観がなーんとなく「君の名は。」だったと感じたのは自分だけ、かな。
    因習にとらわれたような土地という設定はとても興味を持ったが、途中までは★4つだったのに…最後の方のドロドログダグダ感で★が減ってしまった。
    なんだろう、最後の方は急ぎ過ぎ?いっきに丸めた感がぬぐえない。
    二人だけはハッピーエンド?
    いやいや、周りがひど過ぎるわ…どいつもこいつも(笑)
    特に悪態をついてばかりの三森龍が踏んだり蹴ったりでかわいそうだった。(当人めげてない?)
    最初にチラッと出てきた害鳥?駆除の仕事の話とかもっと読みたかった。

  • ここまであるか、という部分はありますが、なかなか複雑な人間関係で読み応えありです。代助に幸あれ!です。

  • 都会の鷹匠として働く青年・代助のもとに、12年前に行方不明になった義弟の遺体が見つかったという知らせが届く。

    孤児だった代助は、幼い頃、鷹匠神事を担う千田家に引き取られ、次期当主となるべく育てられていた。
    また、代助とともに神事を執り行う鷹櫛神社の巫女として育てられた少女・真琴とは、双方の家を継ぐため、結ばれることはないと知りながらも、互いに分かち難く惹かれあっていた。

    しかし、のちに養父母の間に生まれた義弟が行方不明になった時、代助は『後継目当ての弟殺し』と決めつけられ、自ら村を出たのだった。


    代助の、孤独の深さ、義父母に愛されようとする努力、たらい回しにされることへの絶望感、真琴への愛など、静かで激しく、熱く凍るような心の動きが突き刺さる。
    そして、真琴。
    遠田さんの描く女性は、いつも冒し難い硬質な美しさと、内に秘めた激しい愛を持っている。

    グロテスクなまでにドロドロな人間関係のもつれが描かれながらも、ラストの清々しさ!

    『月桃夜』からずっと読んできて、読めば凄い力で引きずりこまれるのがわかっていながら、また読後しばらくはその昏さに打ちのめされてしまうので、気力のある時でないと無理…という感じで、しばらく離れていた。
    けれど、たまたま先に『お葬式』を読んで、いつのまにこんな作品を書くようになってたの!とショック。
    しまったー!

    しばらくは、遠田作品を慌てて遡って読むことにしよう。

  • 因習感強すぎでちと笑えるほど。
    リーダビリティは大。犯人は自明だけれど。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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