王とサーカス

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 4265
感想 : 590
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027513

感想・レビュー・書評

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  • 「氷菓」などの軽めの学園ものと違って、ジャーナリストの冷めた視点でのミステリ。
    歴史的な事件が絡んでいるので重い雰囲気の中、物語は進んでいきますが、お話しの進め方がとても上手いと感じました。
    最後まで緊張感を感じながら楽しめた。
    面白かったです。

  • 太刀洗万智が主人公の長編。
    前年の「満願」に続き、ミステリのいろいろなランキングで1位を獲得した作品です。

    2001年。
    太刀洗万智は新聞社を辞めて、初仕事。
    海外旅行特集の取材のために、ネパールの首都カトマンズへ。
    雰囲気をつかもうというゆるいスケジュールのはずで、宿で懐いてきた少年にガイドを頼んだのだが。
    突然、王宮で国王たち王族が何人も殺害される事件が起き、あっという間に異様な空気になる。
    太刀洗は、ジャーナリストとして取材しようとするが、暴動寸前の空気と報道規制に阻まれる。
    そして、取材しようとした関係者に事件が‥!

    『さよなら妖精』の出来事から10年がたち、海外のことも他人事ではないと感じている万智が遭遇した、思わぬ事件。
    報道に携わる人間として、情報をどう集め、どう発信すべきなのか?
    クールで真剣なヒロイン、太刀洗万智のこれからの生き方が問われると同時に、読んでいる人へも疑問を投げかけてきます。
    実際に起きた事件を背景にしているため、重厚感も。
    鋭い切り口と壮大なテーマが新鮮で、強い印象を残します☆

  • 舞台はネパール。

    マスコミ関係の仕事をしていた主人公が、たまたまネパールにいたら皇族殺人事件がおこり、その取材をする事に。

    取材中に、皇族の殺人事件が起きた時にいたと思われる軍人に会うことになるのですが、大した話は聞けず。

    その後その軍人は背中に「密告者」という意味の文字を刻まれて殺されます。

    ネパールの皇族殺人事件は実際にあった事で。その話に触れつつ、軍人の殺人事件がメインになっていきます。

    主人公が今している仕事について。本当は自分は何が書きたいのか?何を書かなければならないのか?

    殺人事件が解決する時には、今までと違う主人公の姿がありました。

  • ミステリー作品として読むと謎解きなどはそれほどではないがヒューマンドラマとして読むと人間性を深くえぐるような鋭さがある。

    「満願」同様完成度は高い作品だと思いますが、もう少しエンタメ要素がある作品の方が好み。

    それでも他の作品も読んでみたいと思わせる作家です。

  • 結末は想像していたものだったが、アジアの地の空気感を存分に堪能出来た。映像が脳裏に浮かび、緊張感を感じた。

  • 面白かった

    う〜んサーカスかあ
    うまくなぞらえたともちょっと思えないんだけど
    言いたいことはわかるようでそれ言ってもなあというね

    ただテーマも含めた最後のどんでん返しは意外性ありつつもちょっと納得

  • 期待していたほどではなかったので三つ星。
    でも面白い。

  • 誰でも
    (自分とは何者なのか?)
    フト、わからなくなる時がある。

    ここ、カトマンズに滞在している
    日本からやってきた女。
    彼女もまた、魂が抜けた線の様なシルエットしか見えず、
    (私は前作を読んでいないので特に。)
    最初、見知らぬ女の案内で
    初めて訪れる異国を巡ってでもいるかの様な旅気分でぼんやりと、ページを捲っていた。

    そんな女の二の腕を
    いきなり掴む冷たい手。

    「おい、
     この国の王が今、死んだぞ!
     殺したのは息子で
     家族も巻き添え、
     しかも自身は自殺を図ったそうだ。」
     
    そのNEWSを聞いた途端、
    彼女の体に熱い血がどっと流れた。
    (そうだ、私はジャーナリスト!)
    我に返った彼女は
    さながら目を描き入れた仏像に魂が宿るがごとく
    自分が何者であったか?に気付いた。

    なぜ、息子は王を殺した?
    さらに、家族をも殺す必要がどこにあった?
    そして
    自分の命を立つ事情とは…

    国は必死で事実を隠蔽しようとする。
    彼女は自らの身に危険が迫りつつも
    (それでも事実を暴き、
     国民に伝えるのが私の役目。)
    と、使命に燃え、ペンを握るのだが

    「一体、それは何の為だ?
     民衆とは自分の身に降りかからぬ陰惨な事件は好物だ。  
    それは、さながらサーカスでも見るようにな。
    お前らジャーナリストは
    民衆の好奇心を満たし、その見返りでただ飯を食っているだけじゃないのか?」
    と、問う者。

    更に
    ジャーナリストの存在意義に対する否定的な正論に揺らぐ彼女。

    何の罪もない市民を無残に殺す兵士を撮った写真を世界に配信し、賞賛を受けるカメラマン。
    それで戦争の悲惨さを伝えたつもりか…
    写真一枚撮ってるヒマがあれば、人の命を救えたのではないか…

    読者はジャーナリストなんかじゃない。
    が、それは
    死刑制度の賛否を問われて
    正しい答えを導き出せぬ事と同様、
    全ての人達に隣接している真っすぐな問いかけ。

    ミステリー要素も加わり、
    深い霧の中を彷徨うような物語の中にあって、
    それでも
    彼女が一歩一歩すすむべき方向を選択し、
    歩む道の後からは、柔らかい光が追いかけている様に思えた。

    正解も間違いもないこの世界で
    <正しい>を導き出すのは
    やはり人が持つ信念なんだなぁ。

    貴重なゲラ刷りの献本、ありがとうございました!

  • ネパール動乱の雰囲気と、全体的に沈み込みながら妙に高揚感のある展開が惹きつけます。ミステリーとしての出来よりもジャーナリズムへの憧憬を掻き立てる骨太の物語でした。もちろんミステリーとしても一級品ですが、結構初めからあやしそうなやつも・・・。

  • ネパールについて知らないことだらけだった。
    1日に2回しか食事を取らないことも、大国の間に位置する難しさも、チャイではなくチアという甘い飲み物のことも。

    マスコミの意味とは?
    何のために政治的に関係のない国に我が国の惨事や恥をさらすのか?それで助けでもくれるのか?そんな力がマスコミにあるのか?

    遠い国で起こっている悲しい出来事をサーカスとして見ていないか、振り返りたくさん考えた。
    多くの人は次のニュースがあればすぐに忘れる、しかし当事者にとっては一生忘れられない出来事のことを。

    何のために報じる?
    お前にそんな力があるのか?
    お前は誰なのだ?

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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