殺人者の顔 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M マ 13-1)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488209025

感想・レビュー・書評

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  • スウェーデンの作家「ヘニング・マンケル」の長篇ミステリ作品『殺人者の顔(原題:Mordare utan ansikte)』を読みました。
    「アンナ・ヤンソン」の『死を歌う孤島』に続き、スウェーデン作品です… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    ●「関口苑生」氏推薦――「これは世界のミステリー史上においても瞠目すべきシリーズとなることは間違いない」

    【CWAゴールドダガー受賞シリーズ/スウェーデン推理小説アカデミー最優秀賞受賞】
    雪の予感がする早朝、動機不明の二重殺人が発生した。
    男は惨殺され、女も「外国の」と言い残して事切れる。
    片隅で暮らす老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。
    燎原の火のように燃えひろがる外国人排斥運動の行方は? 
    人間味溢れる中年刑事「ヴァランダー」登場。
    スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの開幕!

    *第10位『IN★POCKET』文庫翻訳ミステリーベスト10/評論家部門
    -----------------------

    本作品は、第1回ガラスの鍵賞を受賞した「ヘニング・マンケル」の処女作で、警察小説「クルト・ヴァランダー」シリーズの記念すべき第1作、、、

    意に反した離婚から立ち直れず、娘は家出し、老いた父親との関係もうまくいかず、不規則な食生活がたたって中年太りで、飲酒運転を同僚に見逃してもらったり、酒に酔った勢いで既婚の女性検察官にセクハラまがいの迫り方をしてふられるという、格好良くない中年の刑事「クルト・ヴァランダー」が主人公なのですが、その人間的に弱い部分に、何とも言えない人間味あふれる魅力があるんですよね… このシリーズ、愉しく読めそうです。


    1990年1月8日、スウェーデン南部のスコーネ地方レンナルプ村に住む農家の老夫婦が何者かに襲われた… 隣人の通報によりイースタ警察署の「クルト・ヴァランダー」らが現地に到着すると夫「ヨハネス・ルーヴグレン」は既に死亡し、妻「マリア・ルーヴグレン」は瀕死の状態であった、、、

    強盗の仕業と思われたが負った傷の状態から両者共に拷問を受けており、奪われた物も不明であった… 目ぼしい財産を持っていそうにない田舎に住む老夫婦に犯行の動機となりえるものがあるとは思えない中、重傷を負った「マリア」が「外国の」と言い残し死亡した。

    被害者を縛っていた縄の特徴ある縛り方と外国人という手掛かりで捜査を進めようとした「ヴァランダー」と相棒の「リードベリ」は、外国人に対して人種差別的な反感を持つ一部の人々を刺激することを恐れて、外国人容疑者の線を伏せるが、この配慮は警察内部の何者かにより裏切られ、犯人は外国人という噂がマスコミに流れ、報道されてしまった… 国外から流入する外国人との軋轢を抱える社会情勢を知る「ヴァランダー」等は、不安な思いを抱えながらも捜査を続けるが、案の定、これをきっかけに移民排斥運動を強めようという不穏な動きが始まった、、、

    「3日以内に老夫婦惨殺事件を解決しなければ、移民地区から死人が出る」という脅迫電話が「ヴァランダー」にかかる… その後、「マリア」の兄「ラース・ヘルディン」から、妻も知らなかった「ヨハネス」の一面に関する情報提供があり、その背後関係を調べている最中に移民の収容所が放火され、更には移民逗留所でソマリアから来た移民の1人が射殺され、「ヴァランダー」等は二つの事件を追うことになる。

    車の音から犯行に使われた車種を特定したことをきっかけにして、ソマリア人の殺害事件を解決した「ヴァランダー」等は、再び、レンナルプ村の事件の捜査に戻る、、、

    捜査を進めるうちに、「ヨハネス」が第二次大戦時にドイツ相手に密かに稼いだ巨額の資産や、愛人と息子の存在が明らかになるとともに、競馬好きの刑事「ハンソン」の情報から、息子の経済的な窮状が判明し、「ヴァランダー」は、その線を追うが… 真相究明のきっかけとなり、犯人特定の決め手となったのは、フレーニングス銀行の窓口担当「ブリッタ=レーナ・ボデーン」の素晴らしい記憶力でしたね。

    結果的には、「外国の」というダイイングメッセージが、的確に犯人を指示していたことがわかるのですが… 「ブリッタ=レーナ・ボデーン」の存在がなければ迷宮入りしていたかもしれませんね、、、

    スウェーデンの人口の約五分の一が移民、または親が外国生まれ、あるいはスウェーデンに帰化した外国人らしいです… スウェーデン社会が抱える、流入する移民に関する問題がテーマとして扱われていますが、現在では世界的な課題になっており、他人事ではないですね。



    以下、主な登場人物です。

    「クルト・ヴァランダー」
     イースタ警察署の刑事。主人公

    「リンダ」
     クルトの娘

    「モナ」
     クルトの元妻

    「クリスティーナ」
     クルトの姉

    「ステン・ヴィデーン」
     クルトの旧友

    「ヘルマン・ムボヤ」
     リンダの恋人

    「リードベリ」
     イースタ警察署の鑑識担当刑事

    「マーティンソン」
     イースタ警察署の実習中の巡査

    「トーマス・ネスルンド」
     イースタ警察署の刑事

    「ハンソン」
     イースタ警察署の刑事

    「スヴェードベリ」
     イースタ警察署の刑事

    「ビュルク」
     イースタ警察署の警察署長

    「エッバ」
     イースタ警察署の交換手

    「アネッテ・ブロリン」
     イースタ検事局の新任検察官

    「ユーラン・ボーマン」
     クリシャンスタ郡警本部の刑事

    「ヨハネス・ルーヴグレン」
     農民

    「マリア・ルーヴグレン」
     ヨハネスの妻

    「ニーストルム」
     ルーヴグレンの隣人夫婦(夫)

    「ハンナ」
     ルーヴグレンの隣人夫婦(妻)

    「ラース・ヘルディン」
     マリアの兄

    「ブリッタ=レーナ・ボデーン」
     フレーニングス銀行の窓口担当

    「アニタ・ヨアンソン」
     主婦

    「マルガレータ・ヴェランダー」
     美容師

    「ニルス・ヴェランダー」
     マルガレータの息子

    「エレン・マグヌソン」
     薬局勤務

    「エリック・マグヌソン」
     エレンの息子

    「ルネ・ベルマン」
     元警察官

    「ヴァリフルド・ストルム」
     ルンドの男

  • 出だしはこんなんだったか

  • 池袋・梟書茶房で出会った本。
    (全ての本にカバーが掛けられて売られており、あらすじで本を選ぶ体験かできる本屋)
    スウェーデンのこと、知らないんだなと気づかされた一冊であった。ミステリーとして面白かったが、スウェーデンの地理、移民を積極的に受け入れている政策などを知ったうえで読んだら、もっと面白かったし、違う読後感だったのかなと思う。

  •  スウェーデンのミステリー作家ヘニング・マンケルの''ヴァランダー刑事''シリーズの初刊です。現在邦訳作品は、創元推理文庫から12作発表されてます。
     ヴァランダーは、スウェーデン南部(胡蝶蘭の様に垂れ下がった島がスウェーデンとしてその先っぽ)のスコーネ地方のイースタという小さな街の警察署の刑事です。

     事件は、イースタの西にある田舎町の農夫が隣家の友人農家宅で人が死んでいると通報が有った。隣人の農夫は惨殺されその妻はロープで首を絞められていた。犯人は強盗目的と思われるが、老夫婦には狙われる様なお金は持っていなかった。

     容姿は中年のそのままで趣味はクラッシックオペラ、妻からは離婚を宣言され別居中で未練タラタラ、父親は痴呆症、娘も寄り付かない悲惨なプライベートだが、捜査に手抜きは無く不眠不休で犯人を探す執念は凄いヴァランダー刑事。

     惨殺された農夫は戦後、闇の商売や違法な商売で相当の金を蓄えた上に絞殺された妻以外に子供を産ませた女が居る事が判明した。金目当ての犯行か、

     この事件は1990年に起こった設定です。既に難民(ポーランド等の東欧)流入が社会問題化しており、田舎町イースタでも例外でなく大きな問題だった。この物語はスェーデンの難民問題を背景に様々な事件が発生し難民もスェーデン人も加害者であり被害者なのだ。

     スェーデンは日本の1.2倍位の国土に1,000万人が暮らしてます。分母が小さいのに積極的に移民受け入れをし首都ストックホルムでは人口の2割が移民で人種の坩堝と化してます。
     本作では、難民、移民を排斥するとか受け入れるとかの政治的な話題は一切有りません。

     派手さは無く淡々と物語は進行しますが、駄目な中年ヴァランダーから目が離せない面白さが有ります。

  • 名推理があるわけでもなく、見込み違いや捜査の停滞もあり、ザ警察小説という感じ。特捜部Qシリーズが巻を追うごとに長く、筋の事件と関係ない事件やエピソードが増えて食傷気味になってきたので、今度はこちらに期待しよう。

  • ヴァランダー刑事シリーズの一作目、読もう読もうと、思いつつ、やっと読み始めてやっぱりはまった❗
    これは、シリーズ全部読むやつ!!嬉しくて楽しみ!
    移民問題、離婚、子供の問題、親の問題、etc.そりゃもう、事件だって重ねて起こるし、彼(主人公)と、共にどっと疲れるけど、人間の日常って、やっぱり綺麗事だけではないもんね。
    さぁ、何処迄も一緒に解決して行きます!

  • クルト・ヴァランダーシリーズ第1作。
    順を追わずにいくつか読んでいるこのシリーズだが、未読作品も読んでみたくなり手を取った。

    クルトの私生活描写が生々しい。奥さんに愛想をつかされ、娘には異国の恋人ができ(それを知らされず)、乱れた食生活で太り、酔っ払い運転で部下につかまり、酔った勢いで美人女性検事の腰を抱きかけてどつかれ…、なんという駄目っぷり。
    認知症気味の父親とのぎこちないやりとりや、その父親の今後を姉と相談するシーンなどは、駄目なわけではないが、高齢者福祉社会に住む中年男の悲哀感もたっぷりで、妙なところに親近感がわく。

    でも仕事になると、猛烈に働くねんなぁ。決して天才肌の名探偵ではないが、綿密にしつこく念入りに事件を捜査し、決して諦めない。行き詰ろうと、迷宮入りしそうになろうと、予測が外れようと、その場では落ち込んで苦しんでも、執拗に粘っこく解決への糸口を探す。

    そんなモーレツな業務をこなし、わずかなプライベート時間を家庭の諸事と酒と美人検事にちょっかいかけることで潰してしまうクルト。過労死するんちゃうかと心配になる。

    と、本筋から外れた楽しみもできる本作だが、もちろん警察小説としても読み応え十分。ミステリーという意味では、謎解きが弱く、どんでん返しも荒っぽいが、犯罪捜査に取り組む警察の描きっぷりは見事である。

    なるほど、これはシリーズ化するはずで、この後傑作も生まれるわけだ、と納得のシリーズ第1作だった。

  • 意外な展開を期待してたのでちょっと物足りない。。
    携帯がない時代の刑事は大変だな。
    何故残虐な殺され方をしたのかがスッキリしない。
    怨恨の線を匂わせてたけど結局お金のありかを拷問して吐かせたってことなのか。
    次作も読むかは迷う。

  • 刑事ヴァランダーシリーズ第一作目。北欧発の作品だけあって、移民政策に排斥運動といったデリケートな社会問題に鋭く切り込んでいるが、テーマが先行し過ぎて警察小説としては些か盛り上がりに欠け、作中での問題提起も突発的で散乱しており、まだどうにもこなれていない印象が強く残る。展開そのものはスピーディーで読み易いが、単巻でこの情報量だと上下巻のシリーズ後作は一体いかほどの密度だろうか。直情的なのに内省的なクルトのキャラクターは面白いし、イースタ署のチームワークも見所だが、このシリーズを追うべきか否か未だ目下思案中。

  • 元はフィジカル

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