失踪者〈下〉 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488211097

作品紹介・あらすじ

発見された女はなぜ、エレインのパスポートを持ち、エレインを名乗っていたのか? 彼女はなぜ隠れるように生きていたのか? 本物のエレインはどこにいるのか? 生きているのか? それとも……? 当時疑われた弁護士を取材したロザンナは、彼に惹かれ始め、その無実を証明することに熱中する。そして 彼女の行き着いた真実とは? 震えるほどの衝撃が最後にあなたを待っています! ドイツで210万部のベストセラー・ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • ドイツのベストセラー、後半。
    5年前に行方不明になったエレインはどうなったのか?

    ロザンナは5年前に結婚して、ジブラルタルで暮らしていました。
    義理の息子を育て、幸せもあったが、結婚後も仕事はするはずだったのに何のかのと家庭に縛りつけたがる夫に阻まれ、ついにイギリスでの仕事の依頼を引き受けることを決めたのです。
    自分の結婚式に招待したのにその途上で失踪した幼馴染のエレインの追跡取材だから、他人事ではない。
    もしかしたらどこかで生きているのか、どんな事情が隠されているのか、それとも‥?

    エレインは障害のある兄の世話に縛られていたため、それで家出したという説もあった。
    当初疑われた弁護士のマークに会ったロザンナは、マークに惹かれ始めるが‥?
    一方、エレインのパスポートが発見される。

    身元を隠して生きている女性の描写が書き込まれ、それがエレインなのかそうでないのかという謎もあり、引き込まれました。
    普通の人が多いところにリアリティがあり、その人なりの必死さと愚かさに複雑な気持ちに。
    犯罪者も出てくるので、これは‥普通の人にはなかなか歯がたたないところ。

    ロザンナは基本は正直で前向きな人で、だからこそ悩みもします。10代の義理の息子にちゃんと信頼されているけど、次々に起こる出来事に目をくらまされるあたり。
    エレインもなんか感じのいい人でもなかったり。
    読後感にいまいちなところがあったので、すぐ感想を書けなかったのですが~
    このリーダビリティとインパクト、読まずにいられないだけでなく、1年以上たってもずっと話を覚えているのは‥
    人の心に突きつけてくる何かがあったのだと。
    力のこもった作品だったと思いますね。

  • ストーリーとしては非常にシンプル。元ジャーナリストの女性が、5年前の失踪事件を取材するというもの。幼馴染が失踪したのは自分の結婚式に出席する道中だったため、主人公はある種の責任を感じながらの取材となる。

    複雑なトリックも、凄惨な描写も、奇抜な設定もなく、日常生活がそのまま事件につながっていく展開にも関わらず、ページを繰る手が止まらない。その要因は巧みな人物造形だと思う。主人公に関わらず、「モヤモヤ」を抱えたキャラクターが次々登場するのだが、彼らの描写は表層的に終わらず、人間の持つ多面性、迷いなどが重層的に描き出されるので、どうにもこうにも目が離せない。ドイツで売れっ子作家というのも納得。普遍的なずるさや弱さが巧いという点では、宮部みゆきと似たタイプなのかもしれない。

    二転三転する巧みなストーリーテリングと丁寧な心理描写で、物語に説得力と厚みが出ているが、ミステリとしては弱いかも。期待していただけに、若干の強引さが目立ってしまいただただ残念でした。謎解きは二の次で、人物に注目して読むならば、久々に期待できる作家を見つけたなー、という感じ。

  • 読み終えて改めてマークの立場になって考えてみる。依頼された取材を放ってしまい、取材対象者に首ったけのロザンナは、世間の彼に対する疑惑を消し去ろうと躍起になり、お節介にも旧妻宅にまで押しかける。やがて自分でもいよいよ制御が効かなくなり、新しい証拠を探し出しては、「どんどん突拍子もない推理」にのめり込んでいく。しつこく食い下がる彼女に振り回され、息つく暇も与えられず、最後には逃げ道さえも塞がれ、とことん追い詰められるマーク。ある種ホラーだし、優秀なんだかポンコツなんだかわからない恋人探偵の物語の結末は、最悪。

    その夜、エレインとマークとの間に起きたことが描かれ、真相が判明するが、複雑な感慨。誰も他人のことなど気にかけない昨今、途方に暮れ泣きじゃくる彼女に、親切心から声をかけた結末が、あのように終わるとは。「不運なことに、エレインは語りすぎた。それも、間違った話題で」という一文にグッと来る。なぜエレインを結婚式に招待したかの真相も明かされる。障害のある兄からは家に縛られ、古くからの友人からは、自分の寛大さの道具として扱われ、最後には自由に思いの丈を喋ったがために、殺されるエレイン。あまりに不憫だ。

  • あらすじ
    エレインかと思われた女性は、パスポートを手にい入れた、別人だった。彼女はサイコパスの元恋人から逃げていたのだ。ロザンナ、ロザンナの夫、義理の息子、生みの母、疑われた弁護士、ロザンナの兄…いろいろな人の事情を巻き込みながら事件はゆっくりと進んでいく…。

    上下巻あって、事件の進みがすごくスロー。日本人の感覚より1.3倍くらい遅い。でも読んでしまう。前作でもそうだったけど、主人公の女性が普通なのに、ときどきどうしようもない行動をとってしまうところが、理解しやすい。他の登場人物もそうで、普通の人が事件に巻き込まれる日常が丁寧に書かれているところがこの作品の魅力。

  • 心理描写がはまってる。
    不穏な空気とか不安感の煽り方もうまい。

  • 安定のおもしろさ。中盤の山場はほんとにハラハラした。
    この著者、加害者 - 被害者のラインが2本に収束していくプロットと、DV男に心身を支配される女の描写が本当に上手い。
    後半、いかにも中高年の西洋人の価値観…っていう臭いがどうしてもちょっと気になってしまった。

  • ドイツの作家「シャルロッテ・リンク」の長篇ミステリ作品『失踪者〈上〉〈下〉(原題:Die letzte Spur)』を読みました。
    「フォルカー・クッチャー」、「ライナー・レフラー」の作品に続き、ドイツミステリです。

    -----story-------------
    〈上〉
    イングランドの田舎町に住む「エレイン」は幼馴染みの「ロザンナ」の結婚式に招待され、ジブラルタルに向かうが、霧で空港に足止めされ、親切な弁護士の家に一泊したのを最後に失踪してしまう。
    何があったのか?
    五年後、ジャーナリストとしての仕事で「ロザンナ」は、「エレイン」を含む失踪者たちについて調べ始めた。
    すると、「エレイン」を知るという男から連絡が!
    彼女は生きているのか?!

    〈下〉
    五年前に失踪した「エレイン」生存情報に、「ロザンナ」は急遽現地に駆けつけたが、「エレイン」のパスポートを持つその女性は、まったくの別人だった。
    どうやって彼女はパスポートを手に入れたのか?
    「エレイン」失踪で疑われ、人生を狂わされた弁護士に「ロザンナ」は惹かれ始め、彼の無実を証明することに熱中する。
    真実はどこにあるのか?
    最後の最後にあなたを待つのは、震えるほどの衝撃だ。
    訳者あとがき=「浅井晶子」
    -----------------------

    ドイツの作家による、イギリスを舞台にしたミステリ… 謎に満ちた、愛憎渦巻く人間ドラマにひきずりれ込まれ、ページをめくる手が止まらない感じでした、、、

    面白かったですね… 二転三転する巧みなストーリーテリングと丁寧な心理描写により、重層的な物語に仕上がっていましたね。


    イングランドの田舎町に住む「エレイン・ドーソン」は、幼馴染みの「ロザンナ」の結婚式に招待され、ジブラルタルへと出発したが、霧で空港で足止めされ、親切な弁護士「マーク・リーヴ」の家に一泊したのを最後に失踪した… 何があったのか?  結婚後、仕事から離れていた元ジャーナリストの「ロザンナ」は、五年後、事件の取材を始める、、、

    弁護士は何か知っているのか?  彼女は自発的に姿を消したのか?  「ロザンナ」は調査に深入りしていく… そして「エレイン」生存の情報が……。

    発見された女「パメラ・ルーク」はなぜ、「エレイン」のパスポートを持ち、「エレイン」を名乗っていたのか?  彼女はなぜ隠れるように生きていたのか?  本物の「エレイン」はどこにいるのか?  生きているのか?  それとも……?  当時疑われた弁護士を取材した「ロザンナ」は、彼に惹かれ始め、その無実を証明することに熱中する… そして 彼女の行き着いた真実とは……。


    多くの登場人物の視点を切り替えながら物語は進みます… 一見、無関係とと思える人物やブツ切れに思えるエピソードや事件がじわじわと関連付けられていく展開が愉しめました、、、

    消えた女、疑われた男、死んだ女、追う男、逃げる女、助けようとする男、探る女… 点だった存在が線としてつながる瞬間が快感でしたね。

    抗い難く引き込まれる筆力… とでも言うのかな、、、

    ストーリーはシンプルで、奇抜な設定や大掛かりなトリック、どんでん返しがあるわけじゃないんだけど、登場人物の心理を絶妙に生かしたスリリングな展開に心を鷲掴みにされましたね… 理屈抜きで愉しめる作品でした。

  • 結局、女主人公にはまったく感情移入出来なかった。
    これは俗に言う「いやミス」だったのか…

  • ヒロインが容疑者と近づくところから話がハーレクインの世界になり、途端に話がもたつきだした。
    心情描写が細かいと言えばそうだが、それがモタモタと続くし、(義理の)息子との話とか全く関係ない描写がひつこすぎる。

    多彩な人物を配して濃厚なドラマにするというのは分かるけど、サスペンスのジャンルから考えたらストーリーの展開が単調になってしまった。
    そのまま後半は物語が失墜していて、惹句にあった衝撃のラストなんて全くなし。

    読み終わってみれば、二流のサスペンスで終わった。

  • ようこそ。ロクデナシの世界へ。

    主要人物のロザンナが自分の結婚式に出席できなかった
    エレインを5年ぶりに探すことから物語は始まるが
    その理由もジブラルタルでの鬱積した結婚生活に
    嫌気がさした為
    昔の仕事仲間が振ってくれた仕事に飛びついて
    ロンドンで羽を伸ばせるからという理由なので
    おおぅーとなる。


    だからかロザンナに全く感情移入できない。
    (身勝手なわけではなくて、今の自分より仕事をバリバリしてたあの頃の自分は正しかったはずでそれを証明したいが為にエレインを探し始めるというのはいただけない)


    終いには最後の目撃者弁護士のリーヴと恋仲みたいになって、それで本当に真相究明できますか?とはなるが

    彼女自身の視点から見れば、
    満たされない結婚生活から逃げ出してきて
    真相究明が本当の主題ではないわけで
    少し紳士的な男にほだされたらそうなりますぅぁーね。と

    ミステリー、謎解きと思うと
    少しイライラしてしまうので
    2時間ドラマ的な群像劇と思えば
    ただ出てくる人ほぼロクデナシなので(笑)
    ロクデナシが悪いんじゃなくて
    貴方はこの人達に何か言えるほどのものをもってますか?と言われてる感じがして‥‥‥

    それこそが本作品のナーメテーターな所で
    2時間ドラマ作品と思ってナメてたら
    人間の業をドーンと見せつけられるという。

    ただ哀しむべき事に、この人達が少しでも、
    ちょっとでも人に優しく出来たなら
    エレインの失踪は無かったんじゃないかと
    ありえない未来を思わせるわけです。
    ただそれは覆水盆に返らずで
    そんな事は考えても無駄なんですけど
    無駄だからこその、
    無念さを心に残す読後感になりました。

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