白夜に惑う夏 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ク 13-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488245061

作品紹介・あらすじ

シェトランド島に夏がやってきた。観光客の一団が押し寄せ、人びとを浮き足立たせる白夜の季節が。地元警察のペレス警部が絵画展で出会った挙動不審の男は、次の日、桟橋近くの小屋で道化師の仮面をつけた首吊り死体となって発見された。身元不明の男を、だれがなぜ殺したのか。ペレスとテイラー主任警部の、島と本土をまたにかけた捜査行の果てに待つ真実とは? 大好評『大鴉の啼く冬』につづく、現代英国ミステリの精華〈シェトランド四重奏〉第2章。解説=千街晶之

感想・レビュー・書評

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  • シェトランド島白夜の季節に起きた殺人事件。今回も住人達に何度も話を聞くペレスの捜査が面白く引き込まれた。タイプ全く違うけど何故かポアロを思い出す。狭い世界の人間関係の描き方が上手い。ペレスとフランの恋愛の行方も気になる。

  • 安定のアン・クリーヴス。
    やっぱり好きだわぁ。
    と言ってもまだ3作品目だけど。

    本書はシェトランド四重奏(カルテット)の2作品目。
    すごく昔にたまたま読んだ3作品目が面白かった印象が強く、およそ1年半前に思いついたように1作品目を読み、暫くご無沙汰してしまったが、この度『哀惜』が発刊されたのを目にしこれは、まずは仕掛り中のシリーズものを片付けておかねばと今更ながらに取り寄せた一冊。

    スコットランド北部に位置するシェトランド諸島。
    緯度的にはノルウェーのオスロよりも北になり、白夜が続く夏が訪れる。
    そんなシェトランド署の刑事ジミー・ペレスは、恋人フランと地域の有名人ベラが共同で開催する絵の展覧会のオープニングパーティーにフランと共に出席する。
    そこに現れた黒い衣装で固めた芸術家風の謎の男。
    絵を熱心に眺めていたかと思うと、突如泣き崩れる。

    どうやら本土から単身来た人物なのか、知人もおらず、誰も声を掛けようとしないので、しぶしぶ自分の役目かとペレスがその男に声を掛ける。
    落ち着きを取り戻した男に話を聞くが、自分が誰で何故ここに居るのか分からない。身分証明の類はおろか財布すら所持していない。
    どうしたものかと思いながらちょっと席を外した隙に男は忽然と姿を消す。

    という謎な出来事に遭遇した翌日、近くのボート小屋でその男と思われる人物の死体が発見される。
    道化師の仮面を被り、首吊りの状態で。
    自殺なのか、他殺なのか。

    本土から来たテイラーのせっかちで高圧的な捜査方法による結果へのプレッシャーがある中、どちらかというとペレスの優しく律儀で思慮深い言動のペースでじわじわと真相に近づいていくのが、島のゆったりとした空気感を感じ面白い。

    また、このシェトランド諸島もので凄く感じるのが事件に関わっている人以外の存在感がほとんどないところ。
    捜査の過程で、島内の色んな場所に行くけど、出会うのは事件関係者達ばかりだし、雑多な人が集うような場面の描写もあるけれど、大抵知人(どこどこのだれそれで昔こんな関係だったが今はご無沙汰みたいな)だし、知らない人間は観光客なので、コミュニティとしての小ささを凄く感じる。
    そんな小さなコミュニティで起きた事件だからこそ痛ましさが増し、”誰が、何故、何のために”の要素が強まる。

    次は『野兎を悼む春』。
    が、読了済なので『青雷の光る秋』。

    北欧の四部作と言えば、ヨハン・テオリンのエーランド島四部作、ヨルン・リーエル・ホルストのコールドケース(未解決事件)カルテットも頭に浮かび、これらも読みかけのまま放置している、消化しきらねばと思う今日この頃。

  • シェトランド四重奏、2作目。
    今回も前回同様に、物語の半分くらいまでエンジンがかからず。
    なんだか自分の中にシェトランド時間が流れるかのごとく、まったりとしてしまう。
    ミステリーなんだけど、所々でその地方特有のアクティビティが描写され、空気感を感じられるのが良い。
    (今回は羊の毛刈り)
    登場人物の心の声やその恋の行方など、サイドストーリーもその人物を知る助けとなり、気になるところ。

    中盤に来てようやく被害者が誰だか明らかになり、
    数多くの怪しげな人々のつながりが見えて来始めると
    あとは怒涛の一気読み。
    あれこれ推理するものの、犯人はまたまた意外な人物だった。
    前回の展開と類似する部分もあり、学習したはずなのに…。
    4作読み終えるまでに的中できるだろうか⁈

    • ちぃさん
      海外の作家さんはなかなかどの方がおもしろいのかわからなくて、いつもブクログの感想を参考にさせていただいています。「哀惜」も読みたいです!
      と...
      海外の作家さんはなかなかどの方がおもしろいのかわからなくて、いつもブクログの感想を参考にさせていただいています。「哀惜」も読みたいです!
      ところで、今頃になって気づいたんですが、ブクログにはメモ機能があるんですね。
      お話の結末や、気になったことなど、忘れないように書き留めておけて、自分だけが読める。。
      便利!
      これまでは、感想の欄に書くのをためらわれるので、
      “どうしようかな?本専用ノート作ろうかな?”と思ってたので、ありがたいです。
      2023/11/22
    • 111108さん
      メモ機能、私も最近気がついて少しずつ活用しています!レビューに書くほどでもない些細なこと書いたり、解説に出てきた作品を読みたいリストとしてメ...
      メモ機能、私も最近気がついて少しずつ活用しています!レビューに書くほどでもない些細なこと書いたり、解説に出てきた作品を読みたいリストとしてメモしたりで便利ですよね。
      2023/11/22
    • ちぃさん
      ご存知でしたか?良い機能ですよね。
      ご存知でしたか?良い機能ですよね。
      2023/11/22
  • シェトランド島の夏。
    ペレス警部に、記憶喪失らしいと打ち明けたよそ者の男が、翌日死体で発見される。

    古き良き、といいたいのはなぜだろう…と考える。
    小さな村での濃密な人間関係。表面的な事実は裏返る。誰が何を知っているのか。
    現代だから携帯電話だって、DNA鑑定を初めとした科学捜査だってある。けれど、この話は、警部がひたすら話を聞いて知り得た事実で構成されている。効率的ではないかもしれないが、人々との対話を通して得られるのは言語情報のみならず、時にそれよりも雄弁な非言語情報
    で、だから古き良きイメージがあるのかもしれない。

  • シェトランドシリーズ第2巻。
    前回と打って変わり、今回は夏のシェトランド諸島。描写が良い。

    北極圏に近いからか、夏は白夜があるらしい。
    いまいち距離感が掴めないけど、イギリス本島(と言っても良い?)の北の方でもそうなのだろうか?

    2作目の今回も、事件自体は結構シンプル。
    ペレスとフランの前で泣き崩れた記憶喪失の男が、翌日ボート小屋で死体となって発見される。しかもピエロの仮面を被って。シェトランド諸島の北側が舞台。夜でも明るいことによる不協和音と、前作以上に閉塞感のある人間関係。

    今回も、最後の最後まで犯人がわかりません笑
    2作目でようやく気付いたけど、伏線は張ってあれども、真相まで辿り着くには難易度高い張り方のような気がする。。。
    次は春!

  • シェトランド諸島を舞台にした第2弾。

    1弾は何故か途中で挫折してしまったので、今回も最後まで辿り着けるか心配だったが無事に読了。

    私の生まれ育った場所も割と地方の田舎なので、噂がすぐ広まるなんていうのは共感できた。
    それに、今回も本土からやってきたテイラー刑事が田舎の人の行動やそれ以外の点で色々と苛立つ部分があるが、それも東京に出てきて十数年をこちらで過ごし、たまに実家に帰省するとふとした瞬間にテイラー刑事と同じ様な感じに陥る事がある。その部分も共感できる。

    白夜は体験した事がないのでどんな感じが分からないけれど一晩中、外が明るいのはキツそう。。。絶対に睡眠不足になるし、本文でも"気がおかしくなる"と表現されていたけれどそれも納得。

    ペレス刑事とシングルマザーのフラン、ちょっとぎこちないけれど良い関係になってきたんではないかと思う。
    この2人、あとの春、秋のシリーズでどうなるんだろう。
    そちらも含め、先が楽しみ。

  • シェトランド諸島シリーズの2作目。原題はWhite Nightsで、夏の白夜の季節の出来事が書かれています。ペレス警部とフランは慎重になりながらも互いに抱いていた好意を大切にしながら付き合いを深めており、読みどころとなっている島の住人たちの人間関係の中で、ひとつの大きな流れになっています。前回ペレスとタイプは違いながら良好な協力関係を築いた本土の警部ロイ・テイラーも登場。今回は都会のペースで物事が進まないことにジレて自分を制御しきれないテイラーと、島の時間、島の感覚で地元を理解しながら捜査を進めたいペレスとの間がかなりギクシャク。仕事にやりがいと意義を認めつつも、フランとの関係も大切で、どちらにも優劣をつけられずに割り切れない悩みを抱えるペレスがとても人間くさくて好感が持てます。事件は、フランが島に住むカリスマ女性アーティストと一緒に開いた展示会のオープニングセレモニーに現れ突然泣き始めた謎の男が、翌朝死体となって発見されるという、島の日常とはかけ離れたもの。真相は過去に起こったことに端を発しており、ペレスの粘り強く根気のある聞き込みなどから、明らかになります。謎ときと同じくらい、島という濃密な小社会の人間関係が興味深く読み応えがあります。解説が丁寧でした。順番にあと2作も読むつもりです。

  • イギリス最北の島を舞台にした、シェトランド島シリーズ、2作目。
     
     島出身の有名な画家、ベラ。ペレス刑事の恋人のフラン、二人の絵画展が開かれる。しかし、道化師に扮した男が配ったチラシによって邪魔される。その後、男の死体が見つかる。ベラは若いときから奔放だが、今は甥の音楽家がいるだけだ。過去にはローレンスという島の若者が傷心のあまり島を出て音信不通になった。残された弟ケニーとその妻エディスは農場を切り盛りしながら待つ。捜査には本土からせっかちなテイラー刑事がやってくる。その後、甥の音楽家も転落死で発見される。

     相変わらず静かに進んでいくわー。今回は夏で、良い季節だけど白夜。人々のリズムが来るって調子がおかしくなる。十五年前の出来事も関係してくるけど、島ではあまりにも人と距離が近すぎるから、何か見ていてもあえて気づかないように暮らしている。それが今回の事件をわかりにくくさせている。全部の手がかりが薄いもやとか膜に覆われている感じだから、最後、ペレスが真相に気づいたときの足取りが速くてびっくりした。

  • シェトランド四重奏の二作目。絵画展の後で不審人物が殺される。思慮深いペレス警部と、本土から応援に来た合理的なテイラー警部が、事件に挑む。終盤、呆気なく解決に向かうが、イギリス最北の島、シェトランド島の静かで濃密な時間が堪能できる。

  • シリーズ2作目。
    前作が良かったので期待して読んだが、残念ながらあまり好みではなかった。
    ミステリというより人間関係に重点が置かれたドラマだと思った。
    主人公は個人的な事で捜査が上の空だし、ある登場人物の視点からの情報で印象が誘導されているので、推理小説としてはあまりフェアではないのでは?とも思ったが、少ない登場人物の中で犯人がすぐ分かってしまわないためのテクニックなのかな。
    でも、個人的には自作は捜査関係者の恋愛事情とかには左右されないストーリー展開にしてほしい。

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