- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488426019
感想・レビュー・書評
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デビュー作だったのか。加納さんはとても好きで、あれば(古本オンリーだけど)買います。人をいやな気持ちにさせない素敵な作品ばかり。
駒子さんがいい。「いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです」という言葉がいい。
三部作、一気に読みます。 -
加納朋子さんのデビュー作。『ななつのこ』という絵本に惚れ込み、その勢いでファンレターを書いた短大生の駒子。ファンレターに駒子の周りで起こる不思議な謎も書き添えると…。
連作短編小説で、最後に全ての話が繋がるお洒落な物語になっている。日常の謎というジャンルを確立させた北村薫さんへのファンレターのような気持ちで書き上げたとインタビューでお話されていたように、北村薫さんの作品同様、謎が解き明かされた時、登場人物たちの心の機微が鮮やかに浮かび上がる。どれ程この物語に考え方の影響を受けたことか…。とにかく最高。 -
ちょっとトボけた女子大生、駒子さん。
本屋で一目惚れした童話集「ななつのこ」の作者、佐伯綾乃さんにファンレターを出したことから、文通が始まる。
駒子さんの周囲に起きた、日常の小さなミステリが佐伯綾乃さんの返信で鮮やかに解かれる。
読み始めは、はやてくんのお話と駒子さんの日常とが微妙に被っているものの、なんでこんな、別々のお話でどっちもゆっくり読みたいわーって気分だった。
それが読み進めるうちに、はやてくんの日常と駒子さんの日常が違和感なくつながっていく。
自分と共通点が多く、他人と思えない駒子さんの日常に、時間を無駄遣いした贅沢な学生時代を思い出す。
未来を思って不安だったこと、友達の逞しさが羨ましかったこと。
はやてくんの怒り、切なさ、喜び。
駒子さんが白いたんぽぽを描いた真雪ちゃんにそっと寄り添って心を通わせたように、駒子さんとはやてくんに何時の間にか心を添わせている。
いろいろなことが最後にピタリとはまって、あったかくてニヤニヤするラスト。
「いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なことすべてに納得してしまうようになってしまったのでしょうか?」
いつもの穏やかな生活にもこんなにミステリが潜んでいるのにね。
なんだか今までがもったいなくなってきちゃった。
「結局、世の中なんて、うまくいくか、いかないかのどっちかよ。まあ統計学的にみて、五十パーセントはうまくいくわけですよね。四捨五入しちゃえば、十割だわ」 -
以前読んでたもの思い出しました。
日常のミステリーにほっこりさせられます。
ブクログの本棚見てると本当に本屋さんをみてるみたいになります。感想評価、面白いです。
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この作者の文庫新刊をほしい本のリストに入れているのだが、中古本屋にはまだ出て来ないので、代わりに100円の棚にあって★も良かったこの本から買ってみた。
短大生の駒子ちゃんが主人公。
表紙に惹かれて手にした「ななつのこ」という本に惚れ込んだ彼女が、作者の佐伯綾乃にファンレターを書こうと思い立ち、身近に起こった事件を交えて手紙を送ったところ、その事件の”解決編”ともいうべき返事が返ってきて、そこから二人の間のやり取りが始まって…というお話。
7つの短編からなるが、それぞれの中に「ななつのこ」の話が出て来て、そこで謎解きが行われる一方、それと似通った駒子の日常での何となく腑に落ちない出来事についても綾乃による絵解きが届けられる。
何だか変わった作りで、最初の2つの話はちょっとこなれなかったのだが、3つ目の話がなかなか泣かせる話で、この辺りから興が乗ってきた。
4話目で瀬尾さんが登場して、茶目っ気がある5話目に続く。12,000年後のヴェガの話もいいよね。
駒子ちゃんがなんともいい塩梅の子で、思い出し笑いをしたり自分で思いついたことに一人で照れたりするところも、そこはかとなくほのぼのとする。
その一方、真雪ちゃんの抱える生き辛さに気付き寄り添うことが出来る心根を持っていて、まさに作中にあるように『ありふれているようで、本当は滅多に出会うことができない』女の子。
6話目の北原白秋の歌に対する解釈がまた見事で、最後の話で明かされる瀬尾さんの秘密も如何にもと思わせながらもうひと捻りひねりあって読ます。
はやて君の村の生活に加えて、プラネタリウムとかデパートの屋上とかアルバムの写真など、郷愁を誘う背景の色々も佳い雰囲気。 -
女性作者に多いリリカルな作品を苦手としている男性読者も多いだろう。
本作はそういう方にこそお薦めしたい、リリカルでありながらちゃんととした構造をもった作品だ。
マンガに例えるなら『 動物のお医者さん 』や『 のだめカンタービレ 』のようなものといえばわかりやすいか。
あらすじはこうだ。
短大生の入江駒子が『ななつのこ』という本と出逢い、人生初のファンレターを書こうと思い立つ。
身の周りで起きた些細でありながらちょっと興味を引く事件を交えて長い手紙を送ったところ、作者から返事が届く。
その返事にかかれていたのは事件の解決編とも言うべき内容だった。
つまり、主人公駒子の体験談とそのファンレターの内容がリリカルな部分で、そこに解決編がつくことでミステリーの体裁をなしているというわけだ。
で、この構造が後々もうひとつ大きな謎を構成していて……というのは読んでのお楽しみ。
身近に起きるちょっと不思議な謎についてのリリカルなタッチの小説というのはジャンルとしてあって、普通そういう作品は謎を解決しないまま、そこから受ける情感を重視する内容になっているのだが、本作はそこに解決編がつく。
そういう解決編は得てして理に落ちがちだが、本作が良いのは、論理的な内容を語りながらもそこから浮き上がる人物の繊細な情感を大切にしている点だ。
短編集だが、同じ主人公による連作になっているので、人物設定を新たに頭に入れる必要がないのも助かる。
他の読者とどの話が好きか話したりしたら面白いだろう。
ちなみに僕は白いたんぽぽの話が好きだ。 -
2回目。最初に読んだのは、14年ほど前、
この文庫が出てすぐだったのかもしれません。
図書館でたまたま見かけて、表紙に惹かれ、
加納朋子作品デビューしました。
主人公の駒子が、絵本「ななつのこ」の作者、佐伯綾乃さんに
手紙を書いたことで始まる文通(懐かしい表現ですねぇ)。
駒子が日常に会った謎を手紙に書き、返事として謎の答えが戻ってくると、
言う形式のお話です。
表紙と同じような、絵本のように
ほんわかした柔らかい雰囲気で物語が進んでいきます。
最後の「追伸」が一番好きかな。駒子から綾乃さんに送った後日談のようなお話。
駒子の文章を通して、綾乃さんや麻生さん(表紙作者)の性格が見えて面白かったです。
あと「白いたんぽぽ」も好き。
駒子のように女の子らしく、ふみさんのように美しく強く生きられたら
理想の女性だなーと思いながら読んでいました。
さぁ、復習も終わったし、続編も読むぞー^^ -
本棚の整理をしていて久しぶりの再読。いいね!
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駒子のキャラが好きすぎる〜
鮎川哲也賞なんでミステリ的には、
ひとつひとつの謎は結構おもしろい。し、
『いったい、いつから疑問に思うことをやめてしまったのでしょうか?いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なことすべてに納得してしまうようになってしまったのでしょうか?
いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです。』
心に刺さる。いつもとちょっと視点を変えて世界を見渡せば、不思議で満ちていてきらきらかがやくはず。
全体でひとつの物語になってるってやつは、わりかしわかりやすいと思うけど流れがとてもきれいで好きだなぁ
言葉選びのセンスが好き
私も、『星を見ることと、本を読むこと』とてもよく似ていると思う。
今後も本棚、感想、参考にさせていただきます。夜分に失礼しました。