冬雷 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488427214

作品紹介・あらすじ

大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが……。第1回未来屋小説大賞を受賞した、長編ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 第1回未来屋小説大賞受賞作。

    物語は2016年に孤児の夏目代助30歳が、18歳の時に養子として暮らしていた家に、弟だった千田翔一郎の遺体がみつかり、葬儀に出席するところから始まります。

    18の時まで代助が養子だった千田家は冬雷閣という市内でも最も大きな家であり、養父であった千田雄一郎はやり手の実業家と鷹匠としての顔を持っていて、11歳の時まだ子供のいなかった千田夫妻に引き取られた代助は鷹匠となるべく、会社も継ぐべく、数年間育てられました。

    雄一郎の弟の倫次の婿入りした加賀美家は神社で、家の女性は代々、巫女として一生を終えるしきたりでした。
    その家の娘で代助の従姉妹にあたる真琴は代助と懇意になりますが、二人はいくら仲がよくなっても、家柄上、結婚はできません。そして一生離れることもできないという間柄でした。

    そして、代助が15歳の時に、雄一郎と妻の京香との間に実子の翔一郎が生まれます。
    代助は自分の立場を悟り、厳しい雄一郎からは高校卒業後は家を出るように言われます。

    そして倫次から、事情を察して「家の婿に来ないか」と言ってもらい、さんざん迷ったあげく、代助は真琴と生きていく道を選びます。

    そして翔一郎が三歳になりますが、代助と最後に過ごしたあと、行方不明になります。
    皆に疑われる代助。
    しかし、翔一郎は見つからず、証拠がありません。
    雄一郎は代助に「出ていけ」と言い。倫次からも見放され代助は真琴を連れて町を出て行こうとしますが、真琴は代助との約束を破りついてはきませんでした。

    なんだかすごい、昼メロのようなすごい展開のお話だと思いました。
    他に、代助のストーカーの愛美やその兄で不良の龍なども登場します。
    ページをめくる度に、新たな近親者の新局面の展開があり横溝正史っぽくもあり、すごいストーリー展開で、おどろおどろしい話だと思いました。

    でも、最後は希望のみえるラストでほっとしました。

  • 大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。
    12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。
    孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。
    初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。
    しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。
    葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが…。

    おどろおどろしい因習と住民だけの隠し事、閉鎖空間、
    因習や迷信に囚われた地方共同体の物語だが、登場人物全員が知り合いなだけに、
    人間のどす黒い「業」がこれでもかというくらいよく描かれている。

  • 大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。
    12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。
    孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町(おのみやまち)の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。
    初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。
    しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。
    葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが……。


    遠田先生独特の走り出し。
    周りが何も分からないまま、今起きている事件の様子だけが分かる。

    代助の過去の回想から、次第に全貌が浮き上がってくる。

    この人が、こう繋がるのではないか!?真相はこうなのではないか!?
    新事実が判明する度、頭の中は妄想の渦(笑)

    雪の鉄樹ほどではなかったが、十分楽しめる物語だった。
    読みだすと止まらくなってしまうのは、さすがの筆力。

  • 遠田潤子『冬雷』創元推理文庫。

    遠田潤子もハズレの無い作家の一人。相変わらずのストーリーの上手さに唸らされた。

    重く暗い雰囲気に冒頭から圧倒されていくミステリー。まるで横溝正史のミステリーを読むかのような忌まわしい町の伝承や旧家の因縁などが渦巻き、全く救いの無い結末を予想し、鬱々とした気持ちで読み進むが……

    かつて孤児だった夏目代助は日本海沿いの魚ノ宮町名家・千田家の跡取りとして引き取られる。千田家の跡取りとしての厳しい躾と千田家と共に町を守る鷹櫛神社との因縁……いつまでも誠実に生きる代助は鷹櫛神社の娘・真琴と恋人関係になり、全てが上手く行くと思われていた時、事件は起きる。千田家に産まれた代助の弟・翔一郎が何者かに連れ去られた……信じていた義理の親にも、町の住人にも疑われ、恋人の真琴にも裏切られた代助は町を去る。

    12年後、大阪に暮らす代助に失踪した翔一郎が遺体で発見されたと知らせが届き、代助の中で一度止まった歯車が再び動き出す。

    後半、一気に畳み掛けるように多くの謎が明らかになり、鬱々としていた気持ちは晴れやかになり、感動の結末を迎える。

    第1回未来屋小説大賞受賞作。

    本体価格780円
    ★★★★★

  • 大阪で鷹匠として働く夏目代助のもとに、12年前に行方不明になった義弟の訃報が届く。代助は孤児であったが、跡継ぎとして名家・千田家に迎えられた過去をもつ。しかし、義弟が行方不明になった事件をきっかけに町を出ていくことになったのだった。葬儀に出るために町に戻った代助は、義弟の行方不明事件の真相を探る。

    ドロドロ!
    因習にとらわれた町が舞台で、人間関係も複雑。倫理観とかおかしくなってる。読み進めるにつれてドロドロが増していって、うわ〜・・・ってなったけど面白かった。昼ドラ?映像化してほしい!

    ここのところずっと遠田潤子さんの作品ばかり。暗さとドロドロ加減が刺さる。この『冬雷』もそうだけど、現代のパートから入って【何があったの??】状態から、過去のパートが描かれて明らかになっていく形が良い。


    「誠実なんてものよりも強いものがあるんですよ。薄っぺらい理屈じゃ勝てないものが。俺には一生手に入れられないものが」

  • 遠田潤子は期待を裏切らない。
    この作品もよく練られたストーリー、プロットにいろいろな愛を絡ませた秀作だった。
    古い習慣に縛られた町の閉塞感の中、もがく若者達の姿がいたいたしいほどに描かれていて、早く先を読みたい衝動に駆られる作品だった。

  • 大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが……。第1回未来屋小説大賞を受賞した、長編ミステリ!

    町人がよってたかって冤罪でっち上げはあかんだろう。

  • 先が気になり一気に読みました。
    それぞれの人間模様が凄く描かれてて
    凄く面白かった。
    最近読んだなかでは、一番面白かったです。

  • 昔の因習が残る港町が舞台というだけでおどろおどろしい設定だが、作者が描く暗くてどんよりした空気が全編に広がる。そんなに背負い込まなくてもいいのにと思いながらも抜け出せない、振り切れない人々の心情が哀しい。ちょっと強引なストーリー展開もあるが終章でほっとする話に纏まったのは悪くない。

  • 古い因習に囚われた家族や村の人たちとの過去など、読み始めた時には謎な事柄がとても気になり、読むモチベは終始限界突破状態。

    代助と愛美、真琴の関係。雄一郎が“諦めた覚悟”とは何か。真琴と雄一郎はただの親類なのか。

    そうした点に加え、百合若大臣や怪魚伝説など、村の言い伝えが主要人物たちの行く末を暗示しているようで、先の展開が常に気になってしまい、久々に読書で夜更かししてしまいました。

    最初抱いていた謎が徐々に明らかになっていき、クライマックスの冬雷閣ですべてが明らかになるわけですが、今思えばその内容は概ね予想通りで驚きはやや少な目。

    ただそれは、主要人物たちとそれらの関係性をとても丁寧に描いているがゆえになせる業(わざ)なのでは、と。各キャラの行動原理が分かるくらい人物を描いているので、彼ら/彼女らがどのように行動するだろうかという予想が立てられるようになってる気がしています。ある意味、作家の力量の凄さが表れてるのかも?

    しかし、結季の本当の両親については予想外で超ビックリさせられました。あの堅物雄一郎が代助の子をよく受け入れたもんだと、その点も驚き。そうした点で、彼女が過去の因習を超えた象徴的存在に思えてきて、終劇後は代助が師となって結季が千田家の鷹匠を継ぐ未来などを妄想したりしちゃいます。

    驚き以上に溜飲が下がる点が多く、そうした点で満足度が非常に高い作品でした。唯一小さな不満があるとすれば、クライマックスで明らかになる要素が多すぎたところで、個人的には少しずつ、1つ1つの要素を明らかにしてほしかったかも。もうちょっとこの作品世界に浸っていたかったりもしたので、そうやってボリューム増してくれてたほうが個人的にはうれしかったですね。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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