- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488472023
感想・レビュー・書評
-
桜庭ー樹の初期の代表作を書け、と編集に言われた。さらに、桜庭さんは全体小説が書ける人だと思います……
そう言われて、大きな物語を書くことにワクワクして書いたのが本作である、と作者は語っている。
そうして本当に代表作を紡ぎ出した手腕は見事。さびしい山だしの娘が語る素朴さと、山陰の暗さと赤朽葉のあざやかさ。楽しい読書だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
めっちゃ面白い。
こんな小説初めてです。
すっかり桜庭一樹ファンになった!!
女性作家ぽくない骨太な小説。
海外ミステリーを知り尽くしている著者。
うなずけます。
まさにそれが裏付けるようだと思いました。 -
先週末に「私の男」を一気読みしてあまりに面白かったので、文庫版解説で北上次郎さんが強く薦められていた「赤朽葉家の伝説」を購入して、これま面白くて一気読み。
これは好き好きだけど、「私の男」よりこちらの作品のほうが心に残っていく一冊。作家自身のあとがきに「担当編集から初期の代表作品をつくりましょう」というプレゼンから生まれたというだけに、まさに力作。
作家自身は、ガルシア・マルケス「百年の孤独」やヴァージニア・ウルフ「オーダンドー」などが書き始める前に抱いたイメージだったとあったが、個人的な読後感としては、ジョン・アーヴィング「ガープの世界」「ホテルニューハンプッシャー」なども頭を過った。
またこのような作品を「全体小説」と呼ぶということもこれまで知らなかったのでググってみると、中上健次三部作「岬」「枯木灘」「地の果て至上の時」などがジャンル的にはその代表作ということで、なるほどなあという想いに駆られる。それで言うとこの作品の第一部は「鳳仙花」にも雰囲気がとても近い。
「全体小説」は好きなジャンルなんだと知れたので、しばらく漁ってみたい。全体小説について解説されているサイトで、高村薫「晴子情歌」は中上三部作の影響を感じるという感想があったので、まず読んでみたい。 -
鳥取の旧家・赤朽葉家の万葉、毛毱、瞳子という女三代の壮大な物語。ほとんどの話が屋敷の中と周辺で展開するのに、本当にスケールの大きな物語を読み終えた気分だ。万葉の秘めた思いと、冒頭に出てくる「未来視」の謎が最後に解けた時には何とも言えず切ない気持ちになる。時代に、社会に翻弄され、でも必死で生き、その生を全うする人たちの強さを見た。目を閉じればそこに、巨大なお屋敷とそこを出入りする人々が浮かんでくるようなリアルさと、なんとも言えない不思議さが同居した物語で、桜庭一樹作品特有の美しい余韻が残る。
-
題名から推測されるように、おどろおどろしい脚色でありながら、尚且つどこかコミカルな雰囲気もある長編小説です。伝説とあるように時代背景は1950年代、場所は山陰地方の辺境と称される一帯が話の発端になります。語り手は、この地で財をなした旧家、赤朽葉の系統者であるわたし、赤朽葉瞳子、彼女はその祖母、赤朽葉万葉の生きた時代、その母、赤朽葉毛毬の生きた時代、そして今の自分のことと、過去から未来に向けて三代に亘る一族の尋常ではない軌跡をたどります。
祖母の万葉の超能力ともいうべき、「千里眼」、10歳の少女がその時視えた未来がこのお話をひもとく鍵になっています。
祖母や母、その兄弟友人など登場する人物も多く、さらに時代の移り変わりと共にその時代の出来事などの記述も多いので、散漫になる部分も否めませんが、祖母、母も亡くなり、残ったわたしが、祖母の「遺言」ともいうべき言葉の謎を探る辺りになると、急に視界が開けた感じになります。 -
戦後から現代までの日本を軽快に描いています。
人が時代を動かしているのではなく、
時代に人が翻弄されているように感じました。
「ようこそ、ビューティフルワールドへ」という台詞は胸にくるものが…。
旧家に生きた祖母、母、わたしと続く三世代の物語です。
面白おかしくもあり、赤朽葉家の人々のつながりや生き様に、
じんときたりします。
近代から現代にかけての歴史的背景を織り込みつつも、
伝説とか神話が似合うファンタジーで、とても読み応えがあり、
濃密な時間を過ごせました。
時代の大きなうねりと主人公の生きざまが自然に
リンクしている迫力あるエンターテインメント小説です。 -
桜庭一樹さんの本は何冊か読んだけどその中でダントツで好きな本。
スピンオフの製鉄天使も読んでみたい。 -
万葉、毛毬、瞳子。旧家赤朽葉家に生きた三代の女たちの物語。
桜庭一樹さんの描く世界は本当に美しい。
文章ひとつを取ってもため息が出るくらいだ。
特に万葉の世界はどこか空想的で、体が宙を舞う感覚におそわれた。
それに比べ、毛毬と瞳子の世界が妙に現実じみていて、どこか違和感を感じた。
その違和感のせいか、ラストはありきたりな話のように思いながらも、今までにない切なさを感じるという、複雑な気持ちになった。
空想が当然で現実がおかしい。
この話はそんな物語なのかもしれない。 -
島根の山奥の、とある女系の本家の血を引く最後の一人なので、小説の設定にかなり興味がありました。
この小説の舞台は鳥取だけれど、同じ山陰で、近いですものね。
それに、日本推理作家協会賞を受賞していますし。そんな訳で、文庫化されると割とすぐに読み始めました。
三部構成になっていて、第一部では、赤朽葉の千里眼奥様と呼ばれた祖母・万葉の話、第二部では、伝説のレディースヘッドにして、後に有名漫画家となった母・毛毬の話、そして、第三部では、まだ若く、何者でもない、「わたし」・瞳子の話。
しかし、語り手は一貫して、瞳子です。
万葉は元々は、土地の人に「辺境の人」、民俗学者には「サンカ」と呼ばれる山の民だったのですが、ごく幼い頃、里に一人置き去りにされ、若夫婦に拾われて育てられました。
この万葉には、未来や、見えない筈の遠くのものまで見えたりする不思議な力があり、彼女に何かの縁を感じた赤朽葉タツに、息子の嫁に、と迎えられます。
万葉が持つ不思議な力以外にも、様々な奇妙な現象や、その土地の持つ力のようなものが描かれていて、全体の雰囲気は、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』のような感じでした。
三代にわたる年月が語られる訳ですが、単に家族の事だけではなく、当時の社会の事等もあわせて書かれているので、戦後史といった趣もあります。
万葉は息を引き取る直前、孫の瞳子に、人を殺したことがある、と告白します。そこで、瞳子は様々な人に話を聞いたりしながら、そして、彼女自身が受け継いだ血の力によって、死んだのは誰なのか、を調べて行きます。
その結果は、推理がメインの小説程衝撃的でもないので、推理、という部分に関しては、正直、読後はやや物足りない感じがしました。
でも、少し経つと、じわじわと、良いなぁ、と思えてきました。
あぁ、こういうのも良いなぁ。
推理以外の、土地の力や、たたらの赤い魂、血を受け継ぐと言う事、そういう辺りの描かれ方は、すぅっと体に馴染みました。
語られる年月が長いので、登場人物もかなり多いです。
その中で、特に私が好きなのは、万葉とみどりの友情と、万葉とタツの関係。後、豊寿が凄く好きです。