晩夏に捧ぐ (成風堂書店事件メモ(出張編)) (創元推理文庫) (創元推理文庫 M お 5-2 成風堂書店事件メモ 出張編)
- 東京創元社 (2009年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488487027
感想・レビュー・書評
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まさかの長編に嬉しい誤算。結構スケールも大きい話だったけど、本屋からははみ出てしまっているのも確か。
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なるほどと思う内容だったかな。
主人公が読んだ本の内容とも少しリンクしてて、でも比較的こっちは納得のいくところに落とされてるって言う。
本屋は好きだけど、あまりディスプレイとか興味を持ってなかったな。
でも、思えば平積みから買うことがほとんどだったり。
どうか面白い本を平積みしてください。 -
駅ビルの書店で働く杏子のもとに、長野に住む元同僚・美保から手紙が届いた。彼女の勤める地元の老舗書店に幽霊が出るようになり、おかげで店が存亡の危機にあると知らされた杏子は、アルバイトの多絵と共に信州へ赴いた。だが幽霊騒ぎだけでなく、二十七年前に老大作家が弟子に殺された事件をめぐる謎までもが二人を待っていて…。人気の本格書店ミステリ、シリーズ初長編。
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よみにくい。登場人物の人物像や各自の心情等、細かい部分が雑で最後まで誰が誰だかイメージし難い。
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元同僚・美保から依頼された幽霊騒動を解決しようと信州にやってきた杏子たち。
ところが二十七年前の殺人事件まで絡んできて・・・。
作家・嘉多山成治が自宅の離れで殺され、翌朝遺体の側に立ち尽くしていた住み込みの書生・小松秋郎が逮捕される。
彼はそのまま有罪が確定し、獄中で亡くなっていた。
老舗書店に突然起きた幽霊騒動。
そしてすでに時効も成立し、犯人と思われる男性も亡くなっている過去の殺人事件。
ふたつの出来事が絡み合い、真犯人の思惑と事件の真相が暴かれていく。
作家になりたいと夢をみる人たち。
だが、どこかで読んだけれど作家として名を成す人たちは作家になりたくてなるのではない・・・と。
書かずにはいられないから、結果として作家になるのだと。
彼らはなるべくして作家になっていくのだと思う。
真犯人がわかったとしても、過去に戻ることはもう出来ない。
果たして犯人の汚名と引き換えにするくらい強い理由だったのかと疑問を感じた。
心の内に抱えた闇はそれほどまでに深かったのだろうか。
作家とは、物語を書くということは、どれだけ業の深いものなのだろう。
ただひとつ、嬉しかったのは杏子の書店や本に対する愛情の強さと書店員としての誇りだ。
亜矢子との会話からそれが伺える。
インターネット上で物語が読めるようになっても、人と物語を結ぶ存在。
それが書店なのだと思う。 -
成風堂書店の出張編。このシリーズを読んでいると、本屋さんで働きたくなる。
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〇 概要
「成風堂」という駅ビルの書店で働く木下杏子と大学生アルバイトの名探偵,西巻多絵が活躍する日常の謎系ミステリの番外編的位置付けの作品。かつて,成風堂で働いていた有田美保から届いた手紙に,「噂の名探偵を連れてきて,長野にある老舗書店,まるう堂の幽霊騒動の謎を解いてほしい」と書かれていた。杏子と多絵は,長野県に行き,まるう堂の幽霊騒ぎの謎を解明する最中,27年前に起こった老大作家が弟子に殺された事件をめぐる謎を知る。多絵は,ゆうれい騒ぎと27年前の殺人事件の二つの謎を解明することができるのか…。
〇 総合評価 ★★★☆☆
人間が魅力的に描かれており,トリッキーな謎や意表をつくプロットなどはないが,丁寧で分かりやすくすっきりした作品として仕上がっている。まさに,ミステリの教科書と言えるようなよくできたミステリ。ミステリ初心者にこういう作品をお勧めすべきなのだろう。好みの作風という訳ではないが十分楽しめた。
〇 サプライズ ★☆☆☆☆
27年前の老大作家嘉多山成治を殺害した真犯人は,現在,公立中学校の教頭をしている野沢裕一だった。まるう堂に現れた幽霊の正体も野沢裕一。ただし,有田美保が経験した幽霊騒ぎは,噂を聞きつけてまるう堂に忍び込んだ小松秋郎のかつての恋人壱橋亜也子の仕業だった。ミスディレクションらしいミスディレクションはなく,野沢裕一が真犯人と分かっても,ほとんどサプライズはなかった。サプライズについては厳しい点をつけざるを得ない。
〇 熱中度 ★☆☆☆☆
作者の大崎梢は,小説巧者という印象。文章は味があるのだが,先が気になる!熱中する!というような作品ではなかった。そもそも,まるう堂の幽霊騒ぎにしても,27年前の殺人事件にしても,読者を引っ張る謎としては,そこまで魅力的な謎ではない。捜査手法も,杏子と多絵が,美保と一緒に,27年前の事件の関係者の話を聞くというワンパターンの展開。たんたんと進んでいく印象で,そこまで熱中できる内容ではなかった。
〇 キャラクター ★★★★☆
やや一本調子ではあるが,杏子,多絵,美保を始めとして登場するキャラクターには魅力がある。杏子は清楚な本屋さんの店員という感じだし,多絵は,元気で聡明な女子大生。美保は,元気いっぱいのおばさんで,ほかの登場人物も,生き生き描かれている。犯人の野沢教頭ですら,嫌悪感を感じる人物というより,悲しい存在の人物と描かれている。大崎梢が小説巧者と感じるのは,人間が描けているからだろう。
〇 読後感 ★★★☆☆
27年前の老大作家の殺人事件の犯人が小松秋郎ではなく,服役中で死んでいたので冤罪にはならなかったとは言え,真犯人がずっと罪にさいなまされて生きていた…という,あらすじだけ見れば悲しい話だが,不思議とそれほど読後感は悪くない。多絵と杏子の魅力的な人物描写がそうさせているのかもしれない。
〇 インパクト ★★★☆☆
物語全体の構成がすっきりしていて分かりやすいので,サプライズはないが,不思議と印象に残る。凄惨な殺人も,意表をつく真犯人もないが,野沢教頭が犯人であるという図式と,話の展開などは忘れなさそうな,妙なインパクトがある作品である。やはり,人間が描けているというのは小説として強いということかな。
〇 希少価値 ☆☆☆☆☆
人気作家,大崎梢の人気シリーズの作品ということで,希少価値はなさそう。