伝説の森 下 (創元推理文庫 F ラ 3-11 ヴァルデマールの風 第 3部)
- 東京創元社 (2007年10月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488577117
感想・レビュー・書評
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もう、素晴らしい以外の言葉が出ません。
なんで、こんな物語が紡げるのだろうかと、毎回、Lackeyの作品を読了するたびに思います。
主人公がエルスペスへと変わった、<ヴァルデマールの風>三部作、その最終巻。
ヴァルデマールの宿敵である、ハードーン国王アンカーとの決戦が語られます。
もうなんと言っても、その演出の巧みさと丁寧な描写は、本作でも健在。
ハラハラドキドキしながら、ただただ夢中で頁を繰りました。
電車で読んでいると、駅に着くのか速すぎて、もう少し読みたいのにと不満になるほど。
Lackeyの作品に登場する主人公たちは、決して万能ではありません。
エルスペスを初め、<達人>と呼ばれる最上位の魔法遣いではあります。
けれど、彼女たちの「敵」は、「存在自体が悪」という、紛うこと無い悪者です。
力のためには手段を選ばず、禍々しい力を存分に振るうことが出来るのです。
そんな強大な力を持つ敵に対抗するために、彼女たちは知謀を駆使して対抗します。
仲間との信頼、綿密な計算に基づく大胆な賭け。
そして、彼女たちを見守る「女神」と、その使いたち。
数々のsceneを丹念に描いていくことで、物語はその深みを増していきます。
本作は、これまでの作品と比べ、ちょっと地味な印象です。
派手な戦いや、奔放な会話などが控えめだったように感じました。
その代わり、心の機微や風景が、とても繊細に描写されている印象。
結果、これまでとは違った種類のclimax、という感じを受けました。
本作のclimaxは、単純な対決なのではなく、そこに至る過程。
そして、そのあとにもたらされる解放。
違う種類のCatharsis、だけど感動の大きさは変わらない。<blockquote>エルスペスはヴァルデマールの弓から女王の手によって放たれた正義の矢なのだ。</blockquote>この一文に、震えが来ました。
本当に、どうしたらこんな文章を紡ぎ出せるのだろう。
そして、このような日本語へと訳すことが出来るのだろう。
いや、感服致しました。ここが、ぼくにとって本書のbest sceneです。
未読のかたにとっては、どこがすごいのか分からないかもしれないですけれど。
Mercedes Lackeyさんと山口緑さんから産み出されるharmonyは、まさに極上です。
そしてまた、決戦の最中に新しい火種が発生してしまいました。
Storm三部作が、どんな展開になっているのか、本当に楽しみです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
再読ー。
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ふうん、使者って結局司祭みたいな役回りなんだ。