海峡を渡る幽霊:李昂短篇集

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  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560095997

作品紹介・あらすじ

世界的な台湾女性作家の傑作短篇集
 李昂(リー・アン)は、女性の内面や性、社会の伝統との葛藤をテーマに創作を続けている、台湾で最も著名な女性作家である。英・仏・独・蘭・伊・韓・スウェーデン語など、世界各国で作品が翻訳刊行され、注目を集めている。
 本書は、デビュー当時から翻訳を手掛ける藤井省三氏が、1970年〜2000年代に書かれた作品から八篇を独自に選んだオリジナル短篇小説集である。初期の抒情性に溢れた作品、実験的な心理小説、そして中期を代表する二・二八事件の後日談としての政治とセックスの物語、最近作からは、台湾の歴史を描く幽霊物語と政治的グルメ小説を収録した。
 都市化の波に取り残された港町に生きる女性、結婚後の夫との関係に悩む妻、幽霊となって故郷を見守る先住民の女性など、女性の視点から台湾の近代化と社会の問題を描く。李昂の豊饒な文学世界を堪能できる一冊。
 「母、娘、妻、花嫁、老婆、若い女、死んだ女、鬼になった女、いまここを生きている女。――時を超えて響きあう彼女たちの声に圧倒された」――中島京子氏推薦!

感想・レビュー・書評

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  • 舞台は台湾の古都鹿城と台北。若い娘から老婆、そして鬼(幽霊)となった娼婦たちが見つめる、清朝から民主化した現在までのこの島のさまざまな姿。あらゆる支配や血なまぐさい事件を背景に、愛もエロスも怒りも悲しみも全て混沌となった中に投げ込まれるような思いで読んだ短編集。女たちの強烈な生き方が全編に残り、社会を支配した男たちは影が薄いか、滑稽にも見える。どこであっても立場は違っても、たとえ共感はしなくても、女たちの思いはどこかわかる。うまく言えないが。

  • 「谷の幽鬼」があまりにすごすぎてそれ以降読めなかった。
    混血の女性(たくましく、胸も足もでかい)の娼婦が冤罪で拷問にかけられ、亡くなった後幽霊となるのだけど、その拷問というのがまたひどくて性器だけでなくその周辺に多数の性器を切り開く、乳房に性器の肉を埋め込むとかいう男の女性性に対する局所的・短絡的な認識の表れかよ〜〜と思う酷さで、そのあと塩塚に埋められるという有様。当の本人(幽鬼)の回想も辛いことには辛いし嘆き悲しんだ末にオッシャ復讐やでと塩塚が崩れ落ちた暁にぴゅっと飛び出したら300年経っていて、あれよあれよという間に何故か祠が建てられていたり、彼女の身体に開けられた無数の人為的に開けられた性器の数が、宝くじの当選番号の占いに使われたりという珍奇な状況になるのなんだかコミカルで笑えないのに笑ってしまう。

    最後に彼女はとても美しいダンスとともに男に負わされた傷跡をふるい落としてゆくのだけれど、そのダンスが本当に色鮮やかで美しくて。天照大神のダンスや、チベットの女神、ターラーを思い出した。このシーンはすごく印象深くて忘れられない。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=11433

  • 私も、幽霊になって見守ろうかな、、、

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    現代台湾を代表する女性作家の傑作短編集
    中島京子氏推薦!
    寂れゆく港町に生きる女性、幽霊となり故郷を見守る先住民の女性など、女性の視点から台湾の近代化と社会の問題を描く、実力派作家による傑作オリジナル短編集!
    http://www.hakusuisha.co.jp/book/b345216.html

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著者プロフィール

1952年、台湾彰化県鹿港生まれ。本名は施淑端。中学2年で小説を書き始め、高1の作品「花の季節」が新聞文芸欄に採用され、『1968年短篇小説選』に選ばれ作家デビュー。1970年台北の文化大学哲学部に入学、75年アメリカのオレゴン州立大学演劇学科大学院に留学、78年台湾に帰国後、創作活動を再開。78年、『愛情試験』で聯合報文学賞佳作、81年「誤解」で時報文学賞佳作、「別可憐我,請教育我」で報導文学賞、83年 『殺夫』(邦題『夫殺し』)で聯合報中篇小説賞主席を受賞。2002年第11回台湾頼和文学賞、04年フランス文化部の芸術文化勲章、12年第35回呉三連文学賞受賞。16年台湾中興大学名誉文学博士を取得。現代女性の内面や性、社会の伝統との葛藤をテーマに創作を続ける。邦訳書はほかに、『迷いの園』(国書刊行会)、『自伝の小説』(国書刊行会)いずれも藤井省三訳。作品は日本語のほか、英・独・仏・蘭語など各国語で翻訳刊行されている。

「2018年 『海峡を渡る幽霊 李昂短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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