ビジネス難問の解き方: 壁を突破する思考 (PHP新書 199)

著者 :
  • PHP研究所
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569621692

感想・レビュー・書評

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  • 商品開発のプロセスを汎用の課題解決ツールにするという考え方。「情報量とは驚きの大きさ」…これは何にでも当てはまる。驚きを与えることこそが、企業乃至個人の使命。技術もアートも同じ。この人の文章は明快かつプラクティカルで好き。また何か書いてほしい。

  • 「いま打てる手から打っていく」

  • 一般的な問題解決手法を踏襲しながらも、物の見方や考え方について筆者の経験から色んなスパイスを加えている。
    頭の使い方を教えながらも、実際にどのように解を出して、それをどう展開していくかという実地の部分を説いている本が少ない中、本書ではその部分がきちんと述べられていてとても参考になった。とりわけ本書の中で取り扱っている具体例がどれも興味深く、また説明としてしっかりとしているため非常に分かりやすい。筆者の他の本が気になる。

  • 世界が注視するなか、かけひきの”切り札”を握っていたのはシンガポールだった。むち打ちの刑は非人道的だ、と避難するアメリカに言わせるだけ言わせておいて、「こうした制度のおかげで、ここはニューヨークのようにならずにすんでいるのだ」とやり返したのである。p.25/では、こうした非論理的な意思決定を避けるにはどうすればいいか−−−何より、思考の材料となる情報や知識の収集に力を注ぎ、客観性を高めることが肝心だ。p.40/はじまりは「何のためにニュースを流すのか」という問いかけであった。 どのようなプロジェクトでもそうだが、まず目的を徹底して分析すること、そして、どのような結果になったら成功したといえるのか、という評価システムを明示することが大切である。p.59/これは何なのか、なぜそうなるのか−−−好奇心が働かなければ、価値ある情報に接してもピンと来ないし、記憶にも残らない。したがって、そこから何かを学ぶこともない。p.74/好奇心や他者への感受性は、まず視覚的観察力からはじまる。p.76/このように、性別、年齢、職業、生活環境など、本来さまざまなクラスター(集団)に分けられるサンプルを十把ひとからげにして集計し、データを取ると、誤差が大きくなって、実態を反映しない情報しか得られないものである。問題解決の際、こうした事態が予想されるときは、あらかじめ均一的なグループに分け、そのグループごとにデータを取って比較すればいい。これを「層別の原理」という。p.88/大きなマーケットよりも、むしろ隙間がいい。そこに技術力のすべてを結集して、その隙間のなかでは、よそが絶対追いつけないような製品を開発するのだ。そうすれば、それがデファクトスタンダードとなり、売り上げは小さくてもシェアを独占できる。p.128/暗いニュースは、世の中全体の空気まで暗くしてしまうのだ。国民は将来に漠とした不安を抱き、消費よりもリスクヘッジとしての貯蓄に金をまわすようになる。これが目下の不況の最大の原因である。私に言わせれば、明らかに「マスコミ不況」の色彩が強い。p.188/だが、生身の人間は決してそれだけではない。合理的であろうと思いながら、情に流され、ムードに乗せられる現実的な生き物でもあるのだ。総体的に見れば、たしかに人々は最大の利益を求めて行動するが、個々のより身近な場面では、結果として理屈で割り切れない決断をしているのがふつうである。勝負は、数字や理論では説明できない人の心を、いかにしてつかむかに尽きるのだ。p.199/

  • p59
     どんなプロジェクトでもそうだが、まずその目的を徹底して分析すること、そしてどのよ
    うな結果人なったら成功したといえるのか、という評価システムを明示することが大切である。
    その際、どんな条件やしがらみにもとらわれてはならない。原点に戻って、理想を追求するべ
    きである。
     じつは、何のためにそれをやるのかという目的を検討する段階で、成否の90パーセントが
    決まるといっても過言ではない。これをつきつめていくと、結局、プロジェクトを組んでかか
    るほどの問題ではなかったというケースも少なくないのである。

    p68
     報告書というものは分厚ければ分厚いほど、多くの情報がつまっていると思いやすいが、そ
    の中身がすべて自分の知っていることばかりだったとしたら、そこから受け取る情報量はゼロ
    に等しい。逆に、たったひとことしか記されていなくても、それが読む人に大きなインパクト
    を与えることもある。これが、「情報量」の定義である。
     すなわち、文字の多寡だけでは情報量の大小ははかれない、「受け手が知らなかった内容をど
    れだけ伝えているかが」が、情報量のものさしになるというわけだ。ただし、これだけではまだ
    不十分である。じつは情報量というものは、受け手の「予測」をどのくらい覆すかという点に
    価値基準をおくべきなのである。

    p73
     重要なことは、目的をもって、意識的に自分の知的体系を拡大していくことである。
     もちろん、自分の専門分野だけでは間に合わない。むしろ専門外のあらゆる分野にわたって、
    そうした知的ストックを充実させる必要がある。これにはいい方法がある。
    「得手に帆を揚げて」という言葉があるが、要は専門分野や得意分野をテコにして、周辺分野
    を征服していくという方法だ。たとえば数学が専門なら、英語で書かれた数学の本を読んで、
    英語をマスターするとか、将棋や以後が趣味なら、対戦用のコンピュータ・ソフトに挑戦して、
    パソコンの技能をブラッシュアップするといった具合である。
     いずれにせよ、その動機付けになるのはやはり好奇心だ。

    p78
     現状に満足して、何事も「これでいいや」となったら、もう本当にボケてしまいそうだ。す
    なわち、人間の脳の働きは「心配する」ことによって活性化されるわけである。

    -----------------

    序章 問題解決とは何か

    時代とかけひきした男
    戦いを避けるために、戦いに備える
    環境への適応が問題解決の本質
    問題は利害の対立から生まれる
    「死の承認」が暗躍する世界の現実
    アジアの論理は「人権」よりも強し
    国際競争を勝ち抜く切り札とは
    マスコミは日本の実力を正しく伝えていない
    品質を上げれば原価は下がるという真実
    「技術タダ乗り論」のウソ
    原理だけでは新商品は生まれない

    第1章 思考の進め方

    意思決定の条件とは
    情報不足から生まれる短絡思考
    思考を進める四つのプロセス
    共通の目的と言葉を持つ
    警察庁を困らせた質問
    目的によってまったく異なる解決策
    稚拙な問題解決「コロンブスの卵」
    「仮説検証型」思考の欺瞞
    原点に戻れば役所も変われる
    その道のプロほど目的を見失いやすい
    報道番組の歴史を変えた「ニュースセンター」
    日本の農業は「新幹線方式で救える」

    第2章 情報戦を制する

    経済情報活動に乗り出したCIA
    ある産業スパイ事件の教訓
    「情報量」とは驚きの大きさ
    きょう考えることの95%は昨日と同じ
    「誰に」「いつ」伝わるかで価値は一変
    情報は集めなければ集まらない
    好奇心が知的ストックを豊かにする
    見ていないものは思い出せない
    心配する人ほど長生きできる
    重量だけで原価を言い当てた”神様”
    情報と経験の蓄積からパターン認識が生まれる
    現場現物主義こそマーケティングの基本
    偶然も必然と説くマスコミ報道
    大数の法則と層別の原理
    平均値では語れない街・東京
    データが表しているのは実態の一部に過ぎない
    情報を捨てる-パレートの法則

    第3章 アイデアを設計する

    「こうすればこうなる」という予測
    マッチングがアイデア開発の要諦
    何をいまさらITか
    沖縄の経済活性化は「距離」の克服から
    問題をチャンスに変えた国・アイルランド
    用途開発なくしてIT革命なし
    ほとんど知られていないシーズのすごさ
    技術は明日の社会を築く原動力
    差別化と集中によって情報量を極大化
    ”特注品”に活路を求めた隙間戦略
    古い技術が新しい技術の種になる
    隙間は目立たないからこそ隙間
    売上げよりもシェア独占を目指せ

    第4章 決断の方法

    チャーチルのスケープゴート
    「策士、策に溺れる」の危険
    天皇に口止めした企業秘密とは
    いま打てる手から打っていく
    ロシアで蝶が羽ばたけばアメリカで嵐が起きる
    生命体は「サイバネティクス」で動く
    おおまかに発射されるミサイル
    フィードバックの輪をまわせ
    マニュアル主義を超えた日本式経営
    誉められても使われない技術
    目的と手段を取り違えてないか
    交渉の成否を握るBATNAの理論
    交渉は手の内を知られたら負け
    譲歩を引き出すミスター・ニエットの交渉術
    不確実性をヘッジする「ミニマクスの原理」
    日米勝負の分かれ目

    第5章 IT時代の落とし穴

    加工された情報が失ったもの
    俳句は情報圧縮の芸術
    スケルトンニュースとは
    日本語の4割は”必要なムダ”
    ものをいいすぎる数字に要注意
    数字のトリックは数字で打ち破れ
    技術の世界ではアメリカも潔く負けを認める
    「失われた10年」説はウソだった
    実際はきわめて低い日本の輸出依存度
    貯蓄大国・日本のパラドックス
    「空気」で移ろう個人消費
    日本人の消費は「ゆとり」へ向かう
    IT関連の消費はまだまだ少ない
    なぜ東京の商店街が阿波踊りをはじめたか
    POSデータの解析でわかった意外な購買動機
    個人の意思決定は理屈で割りきれない
    論理的な解決策だけが解決策ではない
    問題解決の力学

  • [ 内容 ]
    本書は、日本経済や企業経営の難局に際して、常に卓越したアイデアを提供してきた筆者の、問題解決の方法論である。
    「データは実態の一部にすぎない」「売上げよりシェア独占を」「交渉を制するのは次善策しだい」など、そのアイデアには、現状打破のヒントが隠されている。

    [ 目次 ]
    序章 問題解決とは何か
    第1章 思考の進め方
    第2章 情報戦を制する
    第3章 アイデアを設計する
    第4章 決断の方法
    第5章 IT時代の落とし穴

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 技術は現場から。
    具体例も豊富で、指摘内容もユニークです。
    ぜひご一読を。

  • タイトルに惹かれ「難問の解き方」を探すと、読み終わっても迷ったままになる一冊。

    技術畑のすばらしいバックグラウンドを持つ方なので、そういう方面からの論旨を期待した。しかし、読み込みが足りないのかもしれないが、御大としての哲学的な持論に終止してしまっている。

    料理本に例えると「パエリアをつくるには、こんなコツがあって、調味料はこんなのも使えて、このレシピの中で大切な時間はここなんです」という具体的な内容を期待していた中で、「心にしみる一品が大事だ」という一文に出会うような気分。

  •  名著であります。著者に感謝します。仕事をする上でも大変重要な指針を与えてくれます。

     フツーに考えろ、フツーに。余計な風評にとらわれるな。騙されるな。ゼロベースでしっかり考えろ、と教えてくれます。

     「何が本当の強みで、何が本当の問題点かは、丹念にデータを集め、現場を歩いて回ればおのずと見えてくる」(p.62)

     その通りですね。しかも読者私にしてもサラリーマンでありますから、そういうデータや現場にアクセスできる機会はあるわけだ。なのに出かけなかったり、データにあたらなかったりしていてはもったいない。自殺行為なんですよね。報告だけ待っているような輩、コンサルタントに依存している輩…こういうのは職業倫理に欠ける。道義に反するんだなあ。

     最後の一言が「現場現物主義だけが成功の手段である」(p.204)です。いまの御時世には重要な考え方です。

     マスコミに対する厳しい論評は賛同申し上げます。「言論公害」(p.184)「マスコミ不況」(p.188)いいですね。

  • プロジェクトを前にして、それはそもそも何のためにあるのか、そしてどういう成果、結果を出すのかを考える。
    技術の東芝の目標は以前、ノーベル賞をとることだったらしいが、そうではない。市場に受け入れられる商品を作ることが大切だ、ということにあるとき気が着いた。
    心配性の人の方が解決策を考えるから長生きする。

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著者プロフィール

東海大学名誉教授

「2015年 『[新装版]マキャヴェリの経営語録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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