心理学化する社会: なぜ、トラウマと癒しが求められるのか

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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569630540

作品紹介・あらすじ

事件報道にかつぎ出される精神科医たち、トラウマに席巻された映画・小説・音楽、ACブーム、そしてカウンセリング・ブーム。この潮流はどこへ向かうのか?"こころ"の理解の美名のもとに踏みにじられるもの-。

感想・レビュー・書評

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  • 【内容紹介】
    発売日:2003年09月25日
    在 庫:品切れ重版未定
    判 型:四六判上製
    ISBN:978-4-569-63054-0

     80年代以降、先進国では心理学的なものの見方や精神分析的な人間観が支配的になりつつある。「動機の不可解な犯罪」が起きると、マスメディアは精神科医や心理学者にコメントを求め、ワイドショーでも、PTSD、ADHD、人格障害といった心理学的語彙が無造作に飛び交う。カウンセラーが若者のあこがれの職業になり、大衆文化においてはトラウマ・フィクションや告白本が流行する。さらに、災害時や教育現場では「心のケア」や「カウンセリング・マインド」が叫ばれる。いまや、社会全体が「心理学化」しているのだ。
     こうした現象に問題はないのだろうか。「心の理解」の美名のもとに踏みにじられるものはないのか。本書は精神科医である著者が、内側から「心理学化」の様相を眺めて遠因を探り、そのゆきすぎや退行に注意を促す目的で書かれた。そこから見えてくるものは、我々自身と現代社会が抱える根深い問題である。
    http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-63054-0



    【簡易目次】
    はじめに [001-008]
    目次 [009-013]

    I章 表象されるトラウマ――書籍・音楽編 015
    II章 表象されるトラウマ――ハリウッド映画編 037
    III章 精神医学におけるトラウマ・ムーブメント――PTSD、多重人格、ACにおける濫用 059
    IV章 カウンセリング・ブームの功罪――来談者中心の弊害、そして心のマーケット 081
    V章 事件報道にかつぎ出される精神科医――「不可解な犯罪」を物語化する欲望 123
    VI章 こころブームから脳ブームへ?――「汎脳主義」への批判 149
    終章 「心理学化」はいかにして起こったか――ポストモダン、可視化、そして権力 167

    巻末対談 「社会の心理学化」がもたらしたもの〔宮崎哲弥VS斎藤環〕 [213-235]

    おわりに(二〇〇三年九月九日 市川市行徳にて 斎藤環) [236-238]

  • イマドキは中景がないという話は東浩紀さんの言葉らしいですけど、恐らくこれは著者も関わっているひきこもりにもある程度通じる考え方なのでは…。この本の少し前に「毒になる親」が流行りましたが、この立場からはどういった批評になるんでしょう。カウンセラーであるフォワードの実績も、親への責任に帰することは科学的な根拠に欠けるということになるのか。そうした思い込み(があるとして)こそが社会を分断していく心理学化の根深い問題ということなのか…。映画音楽の絡みは表象的に見る身としては何ら感興を呼ばなかった(^q^)

  • 殺人事件の報道は殺人事件を追体験したいと言う欲望の現れである。また、精神医学や脳科学が軽く扱われている事へは理解しなければならない。

  • 「精神医学と心理学は外から見ているとよく似ているように見えるが、内実は全然違う」といいながら、結果的に違いは、医師免許の有無くらいだとか、現在では、境界が曖昧になってきているとか言っていて、大丈夫なのだろうかという感じで疑りながら最初のほうは読んでいたが、読み進むにつれて面白くなってきた。カウンセリングは、治療者と患者の対等なやり取りと見せかけて、実は、カウンセラーの上の立場からの管理であるといい、納得のいくような説明もされている。ほかにも、いままで思ったこともないような視点からの批判が新鮮で面白かった

  • 本については読めばわかる。それが全てだ、と思っていて。あ、ちょっと古いな、とは感じたのだけれど誰かの俯瞰に連れてってもらう面白さというのはやはりある、今いるわたしの時間の線分上と平行な線分からの世界はまったくがらりと見えているものが違う。
    一つ一つの項目をあげれば知らないことばかりで、得るところもすごくあるのだけど、それよりも新しい知の享受と発展につながる性質が大きいなーと思う。素直に知らないより知っている方がやっぱり世界は面白い、と再認識。あと慎重に書いてるな〜という手触りも安心して読めた。
    なんとなく好きなものが似てて興味のあるひと、というところで知らない人だとどうなるかなという不思議はある。

  • いやー難しかったです。最後は集中力が持たずほとんど流し読みで覚えていませんwトラウマの話がちょっと面白かったのでそれを少し。トラウマってのは過去の忘れられない記憶みたいなものだと思うのです、特にネガティブな。そんなトラウマが今日の小説や映画の演出方法というか道具として数多く用いられているとのことでした。自分自身がそんなに映画を見ないのですが確かに回想シーンとかフラッシュバック的な要素として入ってますよね、ウンウン。
    なんというか今の世の中“普通”であることが良くないこと、ではないけれど軽視され、何か困難や障害を持つ人が(語弊を生みそうですが)もてはやされ、憧れの的になっているような気がします。事件を起こした犯人にも絶対と言って良いほどそのようなトラウマ的過去があるし、むしろそのようなサイドストーリーを期待して凶悪犯罪のニュースを見ている人もいるのかもしれない。(まぁこれは情報提供側が作為的にそのような犯人像を持つ事件を取り上げている可能性が強いですね)

    カウンセリングってのは管理なんじゃないか。最近ではイジメの問題も大きく取り上げられるようになって、多くの学校にスクールカウンセラーなるものがいる。けど、そいつらのせいで不登校者は「不登校する権利」を奪われているのではないか。とか書いてあった気がします、うん、確かに。

    で、ここ最近の心理学ブームとかなんとかの原因は何かと言うと人の心を取り扱うことは「万能感」を得ることに簡単につながる可能性を持っているということにあるみたい。心をコントロールすることが人の行動をコントロールする上で最も有効な方法であると漠然と考えられ始めているからであって、そのためカウンセラーはその治療の中で患者との間に権力関係を出現させ、無意識的に万能感を得ている、みたいな。

    もやもやだね!

  • 最近きゅうに注目された「ひきこもり」そしてなにかというと「心理学」関連の学者がマスコミにでて注釈をくわえたりします。どんどん心理学化する社会について独特の視点でコメントしています。なんか事件があるとカウンセラーを派遣すればそれでよし!のような風潮に疑問をかんじるのがよくわかりました。

  • 2004

  • ¥105

  • 心理学ブームである現在、こういう本も必要であると思う。

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著者プロフィール

斎藤環(さいとう・たまき) 精神科医。筑波大学医学医療系社会精神保健学・教授。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)共同代表。著書に『社会的ひきこもり』『生き延びるためのラカン』『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』『コロナ・アンビバレンスの憂鬱』ほか多数。

「2023年 『みんなの宗教2世問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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