- Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569760841
作品紹介・あらすじ
なぜ頼朝は狭く小さな鎌倉に幕府を開いたか、なぜ信長は比叡山を焼き討ちしたか……日本史の謎を「地形」という切り口から解き明かす!
感想・レビュー・書評
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地形専門家の著者が、地形から日本史の史実考察をする。
本当に地形から考察しているものもあれば、強引にこじつけているものもある。なかなか面白い本である。
自分の日本史の知識がもっとあればさらに面白かったと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
地形や天候から為政者の行動を読み解く。面白い。歴史の見方、その土地の見方が変わる。
文献的な証拠がないので仮説の域は出ないが、なるほどと納得させられる仮説が多々ある。空想と言いたくなる仮説もいくつかある。無理があると言うより、なんで歴史上の心情がわかるねんと突っ込みたくなる。 -
真偽のほどはともかく、地形をカギとして歴史上の事件を読み解く、というのが謎解きっぽくて面白かった。ほんと、真偽のほどは不明なので笑、そこにこだわらず仮説を楽しむ読み方で。
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京都。日本海側と太平洋側、どちらも船運交流ができる位置。
京都遷都の理由。
道鏡など奈良仏教から遠ざかる。
水と森がより豊かな京都へ。
江戸遷都の理由。
木材が豊富な関東へ。
江戸は湿地帯、天下の睨む地の利も関西より悪い。
かつて森林の宝庫だった黄河、今は砂漠化が進む。黄砂が発生。朱鎔基首相は北京からの遷都を考える。 -
歴史は人類が積み重ねてきた経歴であり、文系というか人の考えありきで動いてきたと信じて止まなかったが、こういう土木的視点で見ると今までの思い込みが覆された。ブラタモリみたいで、読みながら地理が苦手な自分は地図を横にし、その土地を散策しているような気分になって楽しかった。どこまでが、当時の人の考えや動きと一致しているかは分からないが、理系的考えは答えが単純明快で客観的に見れるから、強ち間違ってはいないのかな、と思った。昔は人知を超えることを成すのは不可能に近く、自然の摂理に任せて物事、人は動いていた。今は、ある程度は自然に逆らっていくことも可能であり、その上に現代社会が成り立っている。だから、今が地形的にベストなのかは分からず、このように数百年後の未来で推測することは難しくなっているかもしれない。ただ、エネルギー不足なり自然災害被害なり、今ある環境問題は人間の摂理に合わせようとし過ぎて綻びが生じている結果。だから、これを機に自然復帰も未来に人類が生き残るためには良いのかもしれない。
印象的だったのは、江戸の町。家康の偉大さ、徳川幕府の凄さが分かった気がする。 -
国土交通省の官僚だった著者が、地形と気象条件などの事実やデータを踏まえながら、日本の歴史への独自の解釈を披露。
時代の覇者たちの判断や行動には、政治や宗教などの理由もあったと推測されるけれども、そしてそれらを否定しないとしても、そうせざるを得なかったことが他にあるはず、と、手がかりを探る発想が興味深く、日本史の見方が変わる気がしました。
古地図と現代図と歴史年表と人物相関図を傍に置いて再読してみたいです。
正直、関東エリアの章については、私自身の土地勘のなさで、ふぅん、そうなのか、と読む感じ。でも、比較的土地勘がある西日本の諸々を取り上げた章は、地名に加えて地形や距離感がだいたいわかるので、とても理解しやすかったです。
なぜ都が奈良から京都に移されたのか、その結果、奈良に何が起きた(というか起きなかったというか)のか。大いなる田舎の奈良、千年もの間眠っていた、なるほど!
信長の比叡山焼き討ちの理由も、納得。
また、「情報の塊である人間が動く」という、交流軸に変化をもたらす道路や鉄道網がいかに都市の発展に寄与するか、ということも、さまざまな事例で示されており、腹落ちするものでした。
教科書では習わなかった歴史解釈。著者が各地を歩き回り、ちょっとした気づきを大切にしながら整理していく、その探求心と粘り強さと発想力を見習いたい。知的好奇心を心地よく刺激してもらえた一冊でした。 -
職場の上司が薦めていたので読んでみました。日本史の謎を、地理的な観点から解き明かそうとする本です。たとえば、家康は征夷大将軍に任命された後すぐに江戸に帰ってるけど、なぜ?とか、なぜ信長は比叡山の焼き討ちをしたか?など。いわゆる人文科学系のアタマの私にはすごく新鮮でした。ブラタモリもそうですが、地理の見地から事象を見ていくのはおもしろいですね。大阪アースダイバーはちょっと受け付けませんでしたが、この本はよかったです。【2018年12月19日読了】
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地形から日本史の謎に臨んだユニークさが売り物。
全体には面白いが、中には強引な我田引水のものもあります。
例えば、江戸城の半蔵門。大手門が正規の正門ではなく、半蔵門が正門という主張。城外から城内へ唯一橋ではなく土塁で繋いでいるのは正門の証しだと強引に結論付けている。
別の本で調べたら、半蔵門が土塁で築かれているのは、将軍の脱出用として、橋では万一壊れたり、焼け落ちたりするが、土塁にしてそういうリスクを避けている。そして半蔵門に繋がっている甲州街道を使って天領である甲斐まで落ち延び易いように、半蔵門の周辺や甲州街道沿いには、百人隊や千人同心は配置されているとある。
こちらの説の方が説得力があるようです。
というような箇所もあるが、ユニークな切口で、それなりに歴史を楽しめる。 -
建設省の土木・ダム・河川関連の専門家が地形から
導かれる歴史を書いた本。やはり着眼点が面白くよかったです。
江戸の治水、江戸城半蔵門、逢坂山と比叡山、鎌倉、赤穂浪士と吉良氏
の話。吉原。奈良の衰退。大阪に緑が少ないわけ。遷都に関して
それぞれの話が地形をカギとして説明されているのですが
本当にそうかはいろいろあると思いますが、それぞれとても
面白い論理かと思います。 -
なるほど、いわれてみれば確かにそうだなあ、の連続。歴史を地理の観点から見直すと、まったく違った説得力を持ってくる。
徳川家康が、いかに河川(治水)の重要性に精通していたのか。関東平野は平野ではなく沼地湿地だった。利根川の流れを変える大工事が関東平野を平野にしたのだ、と説く。
首都はなぜ奈良にできて、なぜその後に京都に移ったのか。当時の海面の高さや川の位置から船による交通の便を想像し、もう一方で山と川が提供する薪(=エネルギー)と水の供給能力から収容できる人口を見積もってみる。遷都は必然だった、と結論づける。
東京には緑が多いのに大阪の街には緑がない。なぜか。テヘランや北京の街でみた風景からひらめく。大阪は民衆の街で王侯貴族に支配されなかったから、庭園が緑地公園にならなかったのだ、と。
他にもヘェ〜と膝を打つような話しが満載。
江戸幕府が吉原を移転した本当の理由は。
江戸城の半蔵門は裏門ではなく表門だ。
赤穂浪士は潜伏中、江戸幕府に保護されていた。
奈良の歴史的遺物が1000年の長きに渡って保存された理由は。
信長が比叡山を徹底的に焼き討ちした理由は。
元寇が攻略できなかった日本の自然の砦とは何だったのか。
博多は大都市の四大条件、安全/食料/エネルギー/交流軸をほとんど満たしていないのに繁栄しているのはなぜか。
本書を読み終わる頃には、すっかり歴史を見る目が変わってしまう。
惜しいのは、語り口。「AだからB」というときのAについて、意図的なのか不明だが、必要条件と十分条件を混同しているように見受けられる。言い切った方がドラマチックではあるけれど、その分、眉に唾つけながら聞いてしまう。本書は歴史についての「科学」というよりは「もう一つのお話」として楽しむのが吉。
最後に、著者も意図してない本書の効果をあげたい。それは、地理という学問の面白さと奥行き、可能性。小学校中学校で習った地理は面白くなかったけど、こうやって歴史と組み合わせてみると立体感がでてきて、歴史と地理の両方が面白くなる。