ゲゲゲのゲーテ (双葉新書)

著者 :
制作 : 水木プロダクション 
  • 双葉社
3.51
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本棚登録 : 273
感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575154665

作品紹介・あらすじ

水木しげるの人格形成に多大な影響を与えたゲーテ。本書では、そんな賢者の言葉を、水木が暗記するまで何度も繰り返し読んだ『ゲーテとの対話』の中から厳選。真理を鋭くついた格言・箴言・警句の数々は、明日を明るく照らし、前を向いて歩き続ける力になる。混迷を深める時代を生きる現代人の杖となる座右の書!

感想・レビュー・書評

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  • 2017.2.12 amazon

  • ご逝去前後の企画本。
    水木はゲーテの作品を、以上に、ゲーテ自身を、好きになる。
    それは、少なからぬ人が、鬼太郎を越えて水木サンを好きになるのと、同じ現象だ。

  • 水木しげるさんのとんでもなさがとても面白かった。し、どんな風に生きることを捉えているのか水木しげるさんが教えて下さっているようで、なるほどなぁ、と思いました。ゲーテはもう少し時間がかかるけど、水木しげるさんのフィルターを通したゲーテならいける、と思いました。

  • 自分のことを「水木サン」と呼び、尊大なようで何だか全てが愛らしい巨匠水木しげる。
    読みやすいけれど核心をついた内容で、良い出会いだったと思う。

  •  『戦争と読書』を読んだ流れで再読する。
     妖怪マンガの第一人者なのだからロマンチックな夢想家に思えて、その実、徹底したリアリストの一面がある。
     ロマンチストかつリアリストのおっしゃる警句と箴言は、実生活に根ざした重みが感じられる。
     『悪魔くん』にファウスト博士が出ていたから『ファウスト』がお好きなのかと思いきや、『若きウェルテルの悩み』の方がお好みとは意外だ。
     「母へあてた手紙」の一節、恋愛問題について「悪魔と云ふ点に於ては満々たる自信を持ってゐますから」というのは、ゲーテの名言「恋愛の中でその本領を発揮する悪魔的なものを忘れてはいけないよ」を踏まえているのだろうか。

  • 戦争は水木サンが少年の頃に始まった。
    十代の終わり頃、戦争に行くのが嫌で、死ぬのを恐れ、聖書や哲学書、小説などを読みまくって死の恐怖を克服しようとした。人生とは何か。答えは見つからなかったが、痛切に「死にたくない」と思った。ゲーテ的な考え方をするようになった水木サンは戦地にも文庫本『ゲーテとの対話』上中下三冊を持って行った。
    片手を失って帰国して、貧乏な暮らしをしながら数十年かけて漫画家として大成する水木サン。

    まるで人生そのものが一つの作品のようだ。
    そんな水木サンに影響を与えたのは聖書とゲーテらしい。正直なところ、ゲーテの言葉より、水木サンの文章をもっと読みたいと思った。

  • ●下では人生をじっくり味わった言葉ですよね。ショーペンハウエルやニーチェとかは、喧嘩腰で喋るような感じで共感できなかった。
    ● ひとかどのものを作るためには、自分もひとかどのものになることが必要だ。
    ●何もかも独学で覚えたと言うのは、褒めるべきこととは言えず、むしろ非難すべきことなのだ。
    ●他の人々には青春は1回しかないが、この人々には、反復する思春期がある。(天才)
    ●精神の意志の力で成功しないような場合には、好機の到来を待つほかない。(仕事)
    ●重要な事は、決して使い尽くすことのない資本を作ることだ(何のために学ぶのか)
    ●自分自身を知るのは、楽しんでいる時か、悩んでいる時だけだ
    ●ただ聞いているだけでは何事も覚えられるものではなく、どんなことでも自分自身でやろうと努力しないなら、物事の表面的に、半分ほどもわからない(手を動かして学ぶ)
    ●決して無理をしないことだ。生産的でない日や時間にはいつでも、むしろ雑談をするなり、居眠りでもしていたほうがいいよ(眠るのが1番)
    ●他人を自分に同調させようなどと望むのは、そもそも馬鹿げた話だよ。
    ●政治と言うものもまた、学ばなければならない職業の1つであり、それを理解しないようなものが、差し出がましいことをしてはいけないのだ。
    ●足るを知り、分に安んじることを知ってさえいれば、誰だってたやすく十分な自由を手に入れられるのだ。いくら自由が有り余るほどあったところで、使えなければ何の役に立つだろう。

  • 水木しげるにとってゲーテの言葉は生涯にわたって生きる指針だったのだなと分かる本。

    死の直後に出された本として、水木しげる自身が書いたものというより、水木しげるプロダクションが今までの著作やインタビューなどから編集したものなので、企画モノ的な雰囲気も漂う。

    第二次世界大戦に招集される前、絶対に死ぬと、死を前にした中、水木しげるは哲学や聖書、ゲーテの本を読みまくる。

    そして戦場に『ゲーテとの対話』を持っていく。
    まさに生死の境を一緒に切り抜けた大切な本なのだ。

    また新約聖書もかなり読み込んでいるということも、妖怪、万のモノに神が宿るという立場なのかなと思っていたので、意外だった。
    本書にもあるが、宗旨とかは関係なく、フラットに良い考えを吸収しようとする姿勢が素晴らしいと感じた。

    私は、水木しげるは、ほんわか、達観したようなイメージを持っていたから、かなり堅い名著を貪り読む、探究的な部分が少し意外だった。

    この時代とその後の戦争において、しっかりとした考えができたからこそ、その後の漫画にどっしり一本の筋がとおって、名作がかけたのではないかと思う。

    また、水木しげるの痛快な金言もたくさん
    老人の説教臭い戯言ではなく、中身があるのにポップ。
    爽やかでありながら考えさせられる言葉。
    さすがだな。

  • 漫画家【水木しげる】は、『ゲーテとの対話』(岩波文庫版:上・中・下)を雑のうに入れて、戦地ラバウルまで持っていったという。常に死の恐怖と隣り合わせだっただけに、精神的な支えとなる「お守り」が必要だった。そのゲ-テの言葉に支えられて、本書のインタビュ-での答えは「今も80パ-セントは、ゲ-テ的な生き方をしている」と。〝人は窮屈な家の中にいると、ちじこまってしまう〟(デーテの言葉)。〝戦わずして土俵を降りるのはつまらんぞ〟(水木しげるの言葉)。

  • 水木しげるが20代から30代のころに暗記するくらいまで読み込んだというエッカーマンの「ゲーテとの対話」。その本の中から水木が傍線を引いた箇所を出版当時(2015年)の水木の年齢に合わせて選び出した93の箴言の数々を解説を交えながら紹介している。自分も少し前から初めて「ゲーテとの対話」を読み始めたが、当時の社会情勢や前提とする知識がないのでよくわからないことも多く、読み進めるのにも一苦労だったが、水木さんのように時間を掛けてじっくりと何度も味わうべき本だと分かった。

    〇メモした箇所
    6、比較的才能のとぼしい連中というのは、芸術そのものに満足しないものだ。彼らは、制作中も、作品の完成によって手に入れたいと望む利益のことばかり、いつも目の前に思い浮かべている。

    →この文章を読んだ時まさに自分のことやと思った。作ること、そのものを楽しむ。

    42、マンネリズムは(中略)いつでも仕上げることばかり考えて、仕事そのものに喜びがすこしもないものだ。

    →ここ最近はまさにこの状態に陥ってて、いつの間にか楽しむことよりも数を稼ぐこと起き出してが目的になっていた。楽しみながら作ることに主眼を置いたら少し打開できそうな糸口が見つかった。

    60、性に合わない人たちとつきあってこそ、うまくやって行くために自制しなければならないし、それを通して、われわれの心の中にあるいろいろ違った側面が刺激されて、発展し完成する。

    →いかに今現時点で自分の興味がないことでも興味を持てるような考え方が出来れば、さらに限界を広げ自身の能力の幅が広がるだろうと思う。だから苦手なこともやってみるべきはそういうことだと思う。

    92、生きているかぎり(中略)頭をおこしていよう。まだものを産み出すことのできる限り、諦めはしないだろうよ。

    →この姿勢こそが大事でこれこそが目的。

    またいつか読もう。

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著者プロフィール

1922年(大正11年)生まれ、鳥取県境港市で育つ。太平洋戦争時、ラバウル戦線で左腕を失う。復員後、紙芝居画家を経て貸本漫画を描き始め、1957年『ロケットマン』でデビュー。以後、戦記もの、妖怪ものなど数多くの作品を発表。1965年『テレビくん』で第6回講談社児童漫画賞を受賞。1989年『昭和史』で第13回講談社漫画賞を受賞。1991年紫綬褒章受章、2003年旭日小綬章受章。主な作品に『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』『総員玉砕せよ!』『のんのんばあとオレ』など。2015年11月死去。

「2022年 『水木しげるの大人の塗り絵 あの世紀行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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