祝祭の子

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 403
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575245530

作品紹介・あらすじ

かつて、宗教団体〈褻〉のトップ・石黒望は、子供たちに命じ信者らを殺害する。殺人を犯し生き残った子供は〈生存者〉と呼ばれ、その存在は多くの議論を呼んだ。時が経ち、生存者のわかばは警察に石黒の遺体が発見されたと聞くが、その後何者かに襲われる。共に暮らした仲間と再会するが彼らもまた被害に遭っていた……ミステリー界注目の作家が贈る、新境地!

感想・レビュー・書評

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  • 14年前山梨県の宗教団体が<祝祭>という暴力による大量殺人事件を執り行い33名の犠牲者が出ました。

    やったのは石黒望という女性の首謀者とコミューンに捨てられていて、石黒が育て上げた12歳の夏目わかばら5人の子どもたちでした。

    わかばたち5人の子どもは<生存者>と呼ばれ、まだ、子どもだったので罪に問われることはなく、でも世間の目には晒されながら逃げるように生きていました。

    そしてとある事件をきっかけに5人が再会します。
    後藤睦巳は光太という母親のない子どもを連れていました。
    逆井将文は事件を逆手に取ってユーチューバーとして暮らし、川端伸一(旧名・長治)と斎藤彩香(旧名・弥生)は共同生活を送っていましたが、伸一は精神疾患を患い、彩香は勤めていた歯科医助手を辞めなければならない事態になっていました。

    そして5人は自分たちが<刺客>と呼ぶ何者かに狙われて命が危ないことに気づきます。

    宗教施設で5人が受けていたのは軍事訓練でした。
    わかばは暴力をふるうと気が高まるという根っからの性質と立派な体格で戦闘要員。
    将文は稼いだお金で銃を買いなかなかの腕前です。
    睦巳も、わかばと同じ暴力性があり、つい光太を殴ってしまうことがあります。
    伸一は<祝祭>の日本当は一人も殺していませんでした。
    彩香も同じくその場にいただけで一人も殺していません。

    そんな5人が再会した後、睦巳が<刺客>にさらわれ、わかばたちは、光太を連れてコミューンに来なければ睦巳を殺すと<刺客>からのメッセージを受取りますが…。
    <刺客>とは果たして<祝祭>の被害者遺族なのか…。
    <刺客>の真の目的は何か…。

    八王子市から相模湖、コミューンのある山梨まで傷つきながら熊と闘い、雨にさらされながら山道を歩き続けるサバイバルゲームのような行動を強いられる4人と光太。


    全部で500ページある力作ですが救いのもたらされることのない作品でした。
    でも、なぜか心に5人のことが、残ってしまう。そんな作品です。
    <刺客>の正体は意外性がありラスト数ページはミステリーとしては大変面白く読みました。

  •  この作品もいつか読もうと思っていた作品です。

     14年前、宗教団体〈褻(け)〉コミューンで33名の犠牲者を出した事件『祝祭』…。中心になって犯行を企てたのは石黒望という宗教団体のトップ。石黒望はコミューン前に捨ておかれた子と信者同士の間に生まれた子をひそかにコミューンの地下室で育て、そして体育と言う名の軍事訓練を受けさせこの『祝祭』に参加させ、子供たちに信者の虐殺を命じたのだった…。当時未成年であった5人の子供たちは〈生存者〉と呼ばれ、罪に問われることはなかったが、社会的な制裁を受け続けながら生きていた。そして、逃亡した石黒望が何者かに襲われ死亡すると、〈生存者〉5人の身にも〈刺客〉の影が…。14年前の被害者遺族か?それとも??

     かなりのボリュームでしたが、中盤からラストに向かっては一気読みしちゃいました。えっ??なんで??って独り言を言いながらです。ただ、どうかなぁ…全面的に登場人物に感情移入はできなかったな…そもそもが私の中での想定を越えたストーリーだったから?というか、小説なんだから当然なんだけれど…読了後のいちばんの感想は、また“えっ?”に戻ったのでした(汗)。

  • 14年前、宗教団体が運営する施設内で大量殺人が行われた。
    施設内ではトップの石黒望が、捨て子を引き取り森の奥で教育していた。
    そして、子どもたちを操り殺害を命じていた。
    洗脳されていた子どもたちは、加害者となりそれぞれ過酷な運命を生きていたが、石黒の遺体が発見され、彼らたちが何者かに襲われる。
    終わったはずの過去に再び向き合うことになる彼らたちの行先は…。

    すべては、石黒望の過去が起因する。
    子どもを育てる方向性が、間違っている。
    自分の復讐の手足に利用しているものであり到底許せるものではない。

    彼らに安らぎというものがなかったことに大人の身勝手さがどうしようもなく許せなく感じた。


  • かつて、新興宗教団体〈褻〉で、同団体の幹部、石黒望が、コミューンの住民30数名を惨殺するという事件が起きた。しかも、実際に手を下したのが、彼女により戦闘訓練を受けた5人の子どもであったことが明らかになり、世間は大騒ぎとなる。当時まだ未成年だった子どもたちは、罪に問われることもなく、大人になった今、一般社会でひっそりと暮らしていた。そんな彼ら〈生存者〉の日常が突然、崩されていく。SNSで身元をバラされ、次々とナイフで襲撃される。相手は素人ではなさそうだ。敵は誰なのか。彼らは生き残れるのか。

    なかなか登場人物に感情移入ができないまま、終わってしまった。主犯者の動機も、過去の契機も、何もかもよくわからなかった。だからといって、まるでおもしろくないかと言えば、そんなことはなく、アクションを想像しつつ、B級バイオレンス映画を観るような楽しみ方で読んだ。 

  • 前情報なしで読み始めたため、勝手に社会派を想像して倫理や罪と罰を問うような物語かと思いこんでいた。〈生存者〉の5人はそれぞれの特徴がとても明確でキャラクターが際立っており、想像しやすく印象的。皆の中では逃れられない苦悩であるが、罪の意識を感じるものとも違う過去の大量殺人事件。〈刺客〉が迫ってくることで否応なく戦闘の中に身を投じていく。避けていた過去に安らぎがあり、戦いの先に未来を見つける。感情も痛みも何もなかった心に、赦す意志が生まれたのは全てを知ろうと思えたからなのだろう。

  • 宗教団体で洗脳された子供達も利用して起こった大量殺人。
    その子供達のその後の人生、そして新たな事件について描かれている。
    設定がちょっと苦しいかなと思ったけど、現実に起こる事件だってとんでもないことが理由だったりもするので、これもありかなと思ってみたり。
    やはり心情描写などがとても良くて、500ページをあっという間に読んだ。

  • 新興宗教モノは鬼門なのに読んでしまったが、やはり愉快でない。登場人物の動機もイマイチだし、驚きも小さいし、結局良い人いないんじゃん!テーマは何。赦し?と不完全燃焼。

  • 最後までよめた
    最後に戦闘シーンを
    沢山詰め込んできた印象があったが
    個人的にはもう少し内面的な事を書いてある方が好きだった
    これは好みの問題なので
    他の人が読んだらまた違うと思います

  • 宗教団体のコミューンに捨てられた5人の子供達を団体のトップである石黒望が殺人の英才教育を施し、「祝祭」と称し信者30数名を殺害させた事件。未成年者であり洗脳されていたという事も含め罪に問われることはなく、しかし子供たちは「生存者」と呼ばれ15年ちかく世間から迫害されて生きてきた。ある日SNSで5人の名前と住所が公開される。それを機に石黒の遺体が発見され刺客が5人を襲う。石黒はなぜ子供たちを洗脳してまで集団殺人を行ったのか。死してなお生存者を脅かすのか、刺客の正体とは。その真実にたどり着くことができるのか。
    よく読む手が止まらないというのを聞きますが、久々にその言葉を実感しました。ミステリー・サスペンス・ハードボイルドなんて形容したらいいのか。逸木裕さんの書かれたものはどれを読んでも胸がざわつき、そして引き込まれます。

  • 最初からバイオレスシーンいっぱいで不安を抱えて読み始めた。が、元テロリストにより、宗教施設と言う名目の場所で洗脳され、軍事的に鍛えられて育った子らの、当時と現在が、交互に描かれる。
    あり得ない事件だが、不条理な現実が見え隠れして哀しかった。

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著者プロフィール

小説家。1980年、東京都生まれ。第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、2016年に『虹を待つ彼女』(KADOKAWA)でデビュー。2022年には、のちに『五つの季節に探偵は』(KADOKAWA)に収録された「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した。このほか著作に、『少女は夜を綴らない』(KADOKAWA)、『電気じかけのクジラは歌う』(講談社)などがある。

「2023年 『世界の終わりのためのミステリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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