誰かが足りない (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575517170

感想・レビュー・書評

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  • 「 年をとってよくなかったことなんてなんにもない。どこもかし
    こもぴんぴんしていた頃の身体とは違うけれども、少しずつ少
    しずつ変化が来るからその間に十分慣れることができる
    顔や首や手の甲に皺ができるようになったのも、もともと美人
    だったわけでもないから、そうたいしたダメージはない

    若い頃の無用な焦りや見栄や欲望や何かそういった追い立てら
    れるようなものから解放されて、私はずっと生きやすくなった
    流行りのものを気にしなくていいし、今さら何かを成そうとし
    なくていい 」
    『 予約2 』より

    老いることを恐れるのではなく、こんな風に受け止められたら、
    何と楽だろう
    カツ!を入れられたような爽快感だ

  • どの話も、一歩踏み出した後をもう少し読みたいと思ってしまい不完全燃焼気味。。
    予約4の兄妹+妹の友達の話はそこが解消されているのでよかった。不器用が3人の関係性がこの後も微笑ましく続いていってほしい。

  • 面白かったです。レストラン「ハライ」に同じ時に訪れた6組のお客さんたちがハライを訪れることになるエピソードの短編集でした。
    どれもヒリヒリ始まるけど、各話を読み終わる頃にはじんわり、しんみり。特に予約2と予約6が良かったです。失敗の匂いがわかるけど、わかった時にはもう自分は失敗した人に何も出来ない…の繰り返しはつらい。でも、こうすればよかったんだ、と気づけたのでほっとしました。
    失敗したって絶望しなければいい、わたしも心に留めます。
    ハライ、こんなお店あったらいいな。探そう。

  • 洋食屋・ハライに纏わる6組の物語。
    どの話もしみじみ良かったけど、予約3(クミとヨッちゃん。2人なら支え合えるね)、4(ビデオカメラで精神の安定を保つ兄と妹とその友達。妹が良い子すぎる)、6(失敗の匂いが分かる女の子。普通ならこの能力にはかなり苦労させられそうだが、留香は強いな)が好きだったかな。

    予約1(コンビニ勤務のパワーストーンを売らされている男の子)は読むのが辛かったけど、最後はなんとか前を向いた風で安心。
    予約2(認知症気味のおばあちゃん)は、変化を探るようなことは逆に相手を傷つけることもあるんだなぁ(たとえ良かれと思った行動でも)と自分への警告にしたいと思う。
    予約5(ブッフェのお店で働く調理師を目指す男の子)はオムレツが食べたくなった(笑)。

    宮下さん自身の書評で、本当はプロローグ?で誰か亡くなる文章があったけど削ったということを書いていたような。
    個人的には削ってくれてよかった。
    (ちょっと調べたけどそんなことを書いているレビューはなく、勘違いかも?)

    10月31日18:00予約の人達に明るい未来が来ますうに。
    ---------------------------------
    - 失敗自体は病じゃないんだ。絶望さえしなければいいんだ。

  • この本が好きな方にとっては酷評になってしまうかもしれないけれど、私にとっては難しい本でした。

    全体的に女性らしい感性と感情からの書かれ方していたなというまろやかな雰囲気ですが、どこか哲学の話をしているようで、淡々としたその雰囲気も相まって難しかった。

    もっと分かりやすく起承転結な方が、私としては好きなのです。

    宮下奈都さんの作品はこれ以前にも読んだことがあり、好きな感じだったのですが、
    書き方の柔らかさはその時のものと同じでも、思想・思考、そんなものの中で膨らませたようなお話になると難しさが出るなあ〜と。


    この本は、とある町のめちゃくちゃ美味しい『ハライ』という誰もが知るレストランがあって、
    オムニバス形式で、それぞれの登場人物たちが最終的には「ハライでごはん食べよう」になるお話。

    こう書くとめっちゃライトだな!

    読み始め〜『予約3』の章の途中までは、どことなく陰鬱で重苦しい雰囲気が先立つものがあって、
    なんとなく悲しい、なんとなく寂しい、そんな雰囲気。
    『予約3』の途中から、どことなく希望が見え隠れするような明瞭さと爽やかさのお話という感じで、
    『予約』した人々の今後の希望をなんとなく感じられるような仕上がり。

    どの『予約』の登場人物にも、それぞれに何かの問題があって『誰かが足りない』気持ちのまま過ごしていて、それがその人の人生にとってのネックになる部分であるんだけど、
    それぞれがそれぞれに、なんとなく向き合おうという気持ちになって、ハライへ行く。

    そう思うとお店の名前の「ハライ」が「祓」な気がしてくるんだよねえ。


    とりあえずプロローグでは『誰かが足りない』ことについて負の印象で描かれているのに、
    最後のページでは、『誰かが足りない。そう思えるのは、もしかしたらしあわせなことではないだろうか。』という前向きな言葉で描かれます。

    同じ事象であっても、見る方向・向く方向が違えば、物事の捉え方も、またそこからの思考も変化するんでしょうね。

  • ハライというレストランにまつわる短編集。
    レストランという場所はハレとケのハレの場に当たるのかなと思う。
    ハレの場へ向かう人たちそれぞれのエピソードが宮下さんの優しい文章で綴られている。
    どこにでもいる誰かの特別な食事になるといいな。
    ハライでご飯食べてみたい。
    モデルがあるのかしら?

  • 『誰かが足りない』、ミステリーのような面白い題名で興味をそそる。

    十月三十一日にレストラン『ハライ』に予約を入れた、誰かが・何かが足りない、様々な事情を抱えた人々の予約1から予約6までの連作短編小説です。

    「ふと、おかしな考えが頭をもたげる。
    誰かが足りない。いつからか私もそう思っていた気がする。それが誰なのかはわからない。知っているはずの誰か、まだ会ったことのない誰か。誰なんだろう。いつ会えるんだろう。わからない。ずっと誰かを待っていることだけはわかっているのに。」

    予約1、内定の会社が倒産、以来深夜のコンビニ勤務、恋人にも去られた「僕」。壊れかけた心を取り戻して行く。

    予約2、認知症になったようだけど、得意料理をつくるときは、ちょっと「元通り」になるわたし。孫・子の気遣いはありがたいけど・・・やっぱり、「おとうさん」「おとうさん」⁈

    予約3、同僚たちの中からなぜか女の私ひとりが係長になったけど、「要するに尻拭い要員」。元彼は残業しないで帰るかわいくて要領のいい子と!
    そんな時、隣の家の幼馴染のヨッちゃん(義晴)が帰って来た。

    予約4、三年前、シングルマザーの母に発病したと笑顔で告げられた僕。
    母の病気以来、人の顔が信じられない。
    ビデオを撮っていないと部屋の外に出られない。
    妹の友だち(篠原さんもある事情が)との関わりにより僕の心は変化して行く。

    予約5、ホテルのブッフェレストランのオムレツ係の俺は、淡い恋をしている。

    予約6、鼻の奥の奥がひりひりするような、酸っぱさと、焦げ臭さと、ほんの少しの甘さがまじったような匂い、失敗の匂いを感じてしまう留香。

    「誰かの失敗を、なんでもないことのように扱ってはいけない。当事者でないからこそわかることもある。この人は、きっとだいじょうぶだ。この失敗でだめになってしまうようなことはないだろう。」

    十月三十一日当日、レストラン『ハライ』にて、

    「今、この店にも濃淡のある匂いが渦巻いている。だけど、絶望じゃない。ただの失敗なのだ。どんなに大きな失敗をしても、取り返しがつかないほどに思えても、いつかは戻る。」

    「誰かが足りない。
    そう思えるのは、もしかしたらしあわせなことではないだろうか。足りない誰かを待つことができるから。満たされる日を夢見ることができるから。
    アーチ形の扉を開けて、誰かが店に入ってくる。店にいる誰もが、期待を込めてゆっくりと振り返る。誰かの、足りなかった誰かが、今、現れる。」

    で、物語は終わる。

    様々な苦しみ、事情を抱えた人々のお話だが、読後は、優しく肯定してくれるような温かさを感じた。

     

  • レストラン「ハライ」を巡る6つの物語。「スコーレNo.4」を読んだ時にも思いましたが、宮下さんは心理描写が本当に丁寧で繊細だと改めて思いました。この本を読んでいると、心の内側から温まっていく感覚になります。さすが宮下さん。

  • 6つのストーリーからなる短編集
    それぞれのストーリーではタイトル通りに
    誰かが足りないと言うことが盛り込まれており
    最終的には「ハライ」という小さいけど人気の
    予約を取らないとなかなか行くことができない
    レストランを予約して行くことになる。

    色々な思いを胸に「ハライ」という
    小さなレストランに魅かれ集まる
    人たちのもの悲しさもありながら
    心温まるストーリーって感じかな

    個人的に一番衝撃的というか
    びっくりしたのは4つ目のストーリー
    離婚により母子家庭になった家庭で
    母親が病気で余命宣告をされたことを
    子どもに伝えるところから始まり
    早々に子どもたちだけで暮らすところからが
    メインストーリーの始まりなのだが
    苦労している家庭の話しという感じよりも
    もっとびっくりする展開がおきるため
    最初のショッキングな出来事を凌駕する
    内容となっていた
    徐々に心温まる展開に行くので
    救いはありました

  • 2021/8/25
    おー寸止めが遠い…
    最近お気楽ななろうにハマってしまってこの繊細さに針が振れなくなってしまったのか?
    大丈夫か?私。
    最後の失敗のにおいの話がよかったです。

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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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