和解のために-教科書・慰安婦・靖国・独島 (平凡社ライブラリー740)
- 平凡社 (2011年7月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582767407
作品紹介・あらすじ
日韓の歴史問題はなぜ解決の糸口さえ見出せないのだろうか。本書は、日韓・左右の間に横たわる「不信と怒りの連鎖」を読み解き、「和解」の「土台」を示すことで多くの読者の共感を集め、第七回(二〇〇七年度)大佛次郎論壇賞を受賞した。
感想・レビュー・書評
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日韓関係がここまで悪化する前に書かれた本とは思えないくらい、今の世の中に必要な本だと思う。
この本を読んで、少し希望が見えた気がする。
著者の朴裕河さんの勇気と洞察に敬服。
・戦争をしてまで、すなわち平和をこわしてまで「守る」価値のある領土はない。かりにそこでは膨大な埋蔵量をもつ天然ガスが出るとしても…最上の価値は、韓日間の平和だ。
・被害者の示すべき度量と、加害者の身につけるべき慎みが出会うとき、はじめて和解は可能になるはずである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歴史教科書、慰安婦、靖国、独島という、問題でありながら一方ではタブーともいえる問題を取り上げたもの。もともとは韓国で出版されたものの日本版。
日本での刊行にあたり、意識的に日本の責任を問うような加筆をしたというが、そうだとしても日本人にとっては救いになるような本だと思う。韓国側の再三にわたる責任追及パフォーマンス、それに対する日本政府の態度、日本の一部の人たちの強硬な言動……。こういったものに辟易している人たちにとっては、「韓国側にこんなふうにとらえてもらえるなら、日本側も何とかしたい」といった思いになるのではないだろうか。日本人を癒してくれる内容だと思う。そういう点では、まさにタイトルどおり「和解のため」の本なのだ。
和解することはいいことではあるだろう。でも、こうも思う。今このまま和解していいのだろうかと。それぞれが自分の責任をもっと真摯に考えたほうがいいと。そのためには、いつか真っ向からぶつからなければいけない。それなくして、過去が水に流れることはないだろう。ただし、今はまだその前段階。国同士の話になるなら、国内の意思をもっとまとめるべきだろうし、互いの立場を理解したうえでないと意味がない。自分としては、両国を取り巻くコアな問題は、もう少し現状のままにしておくしかないかなとも思っている。
などと書いてみたが、決して本書が駄本だというわけではない。互いを理解するうえで道標になる本だ。両国それぞれの風潮に巻き込まれること覚悟のうえで、このような本を書いた著者、出版した出版社はすごいと思う。読後に巻末の解説を読んで知ったのだが、著者の朴裕河氏は女性。体制に寄らず物が言えるのはやっぱり女性なのかも。 -
先に同じ著者の「帝国の慰安婦」を読んで、こちらも読んで欲しいと著者が対談で言っておられたので読むことにした。
「教科書・慰安婦・靖国・独島」という日韓に横たわる4つの問題について、考察が綴られている。
多くの事実、成り行き、参考文献、資料があげられ、まず、どういう過程で進んできたかを知る意味でも、とてもわかりやすい。
私は特に独島・竹島の何が問題なのか、どういう歴史的な経緯があるのか知らなかったので、とても勉強になった。
「和解のために」まずは韓国の人に向かって書いてくださった。勇気のいることである。韓国での立場が大変なことになっていることをお聞きし、申し訳ないような気持ちになる。体を張って、日韓の関係がうまくいうよう、活動してくださっている。両方の間に立って、両方に向かって和解のための説得をする。著者以外に誰がしてくれているだろう。
この問題は単純に解決するものではないことが知れば知るほどわかる。
この本が書かれて、14年経つが、日韓関係が良好になったとは言えない。3歩進んで2歩下がる、2.8歩下がるくらいだろうか。
一度読んだだけで、まだきちんと読めてないとも思うし、感想もうまくまとまらない。またじっくり読み直し、理解を進めて行きたい。和解のために。 -
大佛次郎論壇賞、解説:上野千鶴子・星野智幸
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大学の先輩が書いた本です。
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日本と韓国との間に横たわる問題を解決するための前提を示している。
日本にも不誠実な点があり、もちろん韓国にもある。
特に日本版では日本の点について詳しくしており、その点も著者の素晴らしいところである。
先日、著者の方にお会いして、やはり頭の良い方だなぁという印象を持ちました。
容易には日韓問題は解決しないでしょうね。 -
確認先:川崎市立中原図書館
2007年に大佛次郎論壇賞を受賞した朴裕河の同名著書の「文庫化」にあたる。単行本時に寄せた上野千鶴子の解説に加えて、新たに小説家星野智幸による解説、そして朴自身の刊行後からの5年で考えあぐねたことを記したまえがきが新規に書き下ろされている。
朴が「和解のために」頭に入れなくてはならないこととしての「赦し」と、本書が再三にわたって指摘を繰り返す(というよりもこれこそが本書最大のテーマである)「不信と怒りの連鎖」は、もしかしたらこれを書いている私自身もそうであるのか常に自戒しながら考え続けなくてはならないという―ちょうど、テッサ・モーリス・スズキが『過去は死なない』において提言した「歴史への真摯さ」とも一致する―もどかしくも大切な作業こそ経なければならないのではないかということであり、それらをすっとばして自らの陣営に都合のいい結論に話を持っていくことの危険性を指摘している。
さらに言ってしまえば、近代社会の前提条件そのものでの話を繰り返している以上、どちらもスタート地点は鏡像関係にならざるを得ないのである。「被害者の個人的名誉回復支援」として始まったはずの韓国挺対協のなかに入り込んだナショナリズム(「被害者と無視してきた韓国戦後史の恥の記憶」の責任の他者化→これについては山下英愛も批判している)と、2000年代の「草の根保守」と僭称し国粋主義を展開した日本の「ネット右翼」(日本の戦後史がせざるを得なかった「公共という言葉を宙吊り状態にしたこと」の責任の他者化)とのあいだに奇妙なほどの類似性を嗅ぎ取ってしまうのは気のせいだろうか。少なくともゼロサムゲーム的な発想を双方がとっていることは現象として(JR九州の日韓高速船)ビートルの両岸で見られることである。
解説で上野は言う。朴の営みは「「複雑なことを複雑なままに」理解しようとする最大限の努力」(本書P308)であると。複雑なこと単純化しようとおもねる多くの自称「解説本」執筆者たちはこの言葉を肝に銘じるべきであるし、読み手の側も「世の中そんなに単純じゃない」し「善か悪か」のような二項対立にもって行きやすい自分の営みを振り返って総括することが求められよう。『サンデルよ、正義を教えよう』と開き直ってはいけないのである(同書の著者批判はそのうちします、乞うご期待)。 -
従軍慰安婦問題では、日本軍よりも売り飛ばした父親が憎いと思っている女性たちも多かった。
靖国問題は重要。この重要な問題は日本人にしか理解できないだろうな。
靖国とは、国を平安にするという意味である。