みちくさ道中

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 164
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582835922

感想・レビュー・書評

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  • ご自身の生き方を道草の連続、とおっしゃる木内さんのエッセイ集。
    学生時代の体育会系気質が見事に反映されたスッキリハッキリした文章が読んでいて気持ち好い。
    意外な(?)妄想癖ぶりに思わずクスッとなったり。

    文章のあちらこちらで今まで読んだ木内作品の礎が垣間見れた。
    「世はいつも曖昧で、人は不規則な線を描いて生きる。なのに、その白と黒のあわいや、横道に逸れた瞬間に、ハッとするような光が宿るのだからたちが悪い。…」
    生きた人々の切実で不可思議な佇まいに触れたくて小説の頁を操る、という木内さん。
    ますます目が離せない作家さんだ。

  • 木内昇さんのエッセイ集。
    しっかりと一本通った芯を感じさせつつも、時折笑いをまじえるバランス感覚がとても好みの1冊でした。

    著者ではなく作品そのものを評価してほしい、という気持ちの強さに、作家としてのプロ意識を感じます。
    押し付けがましくなく、けれど気付くと読み手の背筋も伸びているような、きりりとした空気感を持った文章に惹かれました。

    「臍の緒が切れたら別の人間」というお母様の子育て理念に驚いたけれど、変に過保護なのより断然清々しくていい!
    バリバリの運動部員だった学生時代、そしてバリバリと仕事に励んだ編集者時代…など、作家・木内昇として活躍する前のエピソードも豊富なのもよかったです。 

  • 木内昇のエッセイ集、未読と思いきや、日経新聞夕刊連載のコラムが半分弱を占めており、結構な部分を読んでいた。

    この人のコラム、ゆっくり読めるのが好き。ユルーく活字を追いたい、でもあまりにくだらない内容では時間の無駄かなぁ…って時に、適度に脳みそ刺激してくれて、視点もしっかりしてて、説教っぽくなくて、でもそれなりに「さぁ、頑張らないとなぁ」と思わせてくれる。

    直木賞受賞あたりのエッセイは、本人の気持ちも揺れたのか、少々足元不如意になっている感もあるけど、それがまた、「どうした木内!」と応援したくなる感があって良かった。

  • 木内さんのはそんなにたくさんは読んでないけど
    外れはない、という印象で、好きな作家さんの1人。
    今回たまたま手に取ったのがエッセイで、
    へえーそうゆう経緯で作家になったんだーっと。
    書かれていることから感じるに、自分の視点というものをもっている人だなあっと。
    こーゆー人には非常に憧れます。
    作品自体も好きだったので、書かれている方も好きだなーっと思えて嬉しかった一冊。
    作品を作品自体として受け止めてほしい、書いている人間は関係ない、という姿勢はとても真摯なものだと思うけれど、読む方からすると、これはいい~っと自分が思った作品をどーゆー人が書いたのかってのは、
    結構気になることだったりする。
    なんなんだろな?

    「へその緒が切れたら別の人間」とゆーお母さまの子育て理念やら、「直木賞くらいでいい気になるな」発言が素敵だった。

    あと「私の人生のポイントはそこではない」な松陰さんに爆笑。そして激しく納得した。
    そして
    「人間のたったひとつの務めは生きることであるから、
    その務めをはたせ」にも。
    そーゆー言葉を生まれたばかりの子に贈ることができるなんて・・・・。
    それはこの人がすごいのか、そういう時代だったのか。
    でも、どちらにせよ、たった一人に向けられた言葉が
    もっと多くの人にとって意味のある言葉になることがあるんだ、と思う。

  • まず章立てが洒落ています。「まっすぐ働く」「ひっそり生きる」「じわじわ読む」「たんたんと書く」。これだけでも木内さんという人が見えてきそうではありませんか。
    このエッセイを読んで、木内さんが体育会系なのを知りました。ただ繊細なだけではない、理詰めで持って行くだけではない骨太なところは、木内さんがカラダで覚えられたことだったのだと。
    妄想する癖のあるところ、褒められたことがほとんどないと書いておられるところ、細かな表現がとても気になるところなどは作家さんらしく、この剛柔併せ持つところが木内さんの層の厚さなのだと思いました。
    しかもここには、木内さん書く小説にあるいちばん要が何かということが明かされていました。なぜ「名もなき人」を主人公にして小説を書くのか、時代を調べ尽くし、リアルに書くことへのこだわり。
    私はこれを読んで、嬉しくなりました。それでいいんだ、私もそうやって生きていこうと思いました。

  • 『運命に翻弄される、とはよく言われるが、私たちは運命を勝手に、しかも自分に都合よく創作する力を持っているのではないか。偶然誰かに再会して運命を感じるその裏で、あまりピンと来ない人と五回も六回もすれ違っている可能性もある』ー『創作される運命』

    人は他人に対して、首尾一貫していることを求めたがる。作品と作品を産み出す人との間にも。 かつて深夜放送のパーソナリティーをしていた中島みゆきを思い出す。繊細な言葉、練りに練られ紡ぎ出された言葉。そんなものはなんでもないと言わんばかりのあっけらかんとしたおしゃべり。震えるような哀しみや、挫けそうになる心を奮い起たせる力強さを表現する、あの歌声とは似ても似つかぬような、奇妙きてれつな声。それを面白がって受け入れる者もいれば、あれは別人だと認めない者もいた。それと似た戸惑いめいたものを、木内昇のエッセイを読む自分に発見する。

    その戸惑いを越えた先に待っているもの、それは作品から想像していた通りの価値観、いや、作品を読むうちに自然と響いてしまうものとよく似た個人と歴史の関係性についての考え方。木内昇が、直接的に語り掛ける言葉の選び方、作品では触れることのないユーモアの精神。そんなことは小さなことに過ぎなくて、やはりこの歴史観に自分が惹かれていたことがよく分かる。

    『ありきたりの風景やささやかな暮らしには、実はおもしろいものが山と含まれているのだ。歴史的事象に直接かかわらずとも、私たちは日々歴史を紡いでいるのだと、改めて知らされるような気さえする』ー『今和次郎ー人々の営みへのまなざし』

    大きなうねりの中で、一個人の生はしばしば矮小化される。しかし矮小化する側の理屈で必ずしも歴史が動く訳でもなく、物事を動かしているのはやはり個人。一つひとつのことを伝えて行くのも個人。名を残した人たちだけで歴史が成り立つ訳ではない。教科書的な歴史観に対峙する木内昇が、竹を割ったような性格の持ち主で、歌わない時の中島みゆきのようであるのは、案外必然的なことなのかも知れない。

  • 読み易くて読み応えあり。惹きこまれて深い。好きなエッセイ。

  • ご本人は数少ない読者様と謙遜していらっしゃるがそんなことはない!と豪語する私はこれまでの作品は全て(ウソ!…ほとんど) 読破している木内昇フリークのひとりである。
    さてふと書架に見つけた彼女のエッセイとはどんなものだろうか?それは所謂ありきたりのペットがどうのグルメがどうのという商業的なエッセイでなく木内昇が木内昇たる所以が滔々と綴られているファンには垂涎な一冊。
    詳しくは述べないが「地虫鳴く」や「茗荷谷の猫」になぜ心惹かれるのかを見事に種明かししてくれている。他にも本好きには堪らないこだわりの書評もさらりと描かれてますますこの作家が好きになること請け合い。
    ホントにこの人は良いよ!是非とも多くの人に手にとって貰いたいファン代表でした

  • 端正な感じが、とても素晴らしい。。。

    平凡社のPR
    http://www.heibonsha.co.jp/book/b162769.html

  • 二三の例外を除いて時代小説は読まないので、木内昇さんの小説も読んだことがない。エッセイを読む気になったのは、「直木賞受賞エッセイ集成」にのっていたのがとても良かったから。そういえば「本の雑誌」の図書カード三万円使い放題企画のときも面白かった記憶がある。軽いタッチで、笑いのツボが好みだなあと思ったのだ。

    このエッセイ集は割に真面目に(?)書かれていて、期待したお笑い要素はあまりなかったけれど、やはり文章はぴったりくる感じがした。うーん、小説の方も読んでみようかな。

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著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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