みちくさ道中

著者 :
  • 平凡社
4.19
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本棚登録 : 164
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582835922

感想・レビュー・書評

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  • 小説『ある男』を読んで著者に興味を持った。(直木賞受賞作も読んだが『ある男』の方が好き)。作家のエッセイというと、小説のイメージとはちがって、けっこう楽しくはじけているようなものが多いが、この著者のエッセイは小説のイメージどおり。”老成”という言葉が思い浮かんだ。正直おもしろみには欠けるが、誠実で思慮深い人柄をしみじみ感じつつ、自身の生き方の戒めにすべき文章が並んでいる。「胆力」という言葉が何度か出てくるが、そんな時代小説っぽい言葉が違和感なく居住まうエッセイである。

  • ただのエッセイなのに、感動的エピソードが出てくるわけでもないのに、涙が出てしまった。

    最後の方に、「木内さんは自分語りをあまりしないと言われる」というようなことが書かれていたが、私にはこのエッセイから木内さんの内面がビシビシ伝わってきた。特に最後の章。

    私は物事を頭の中でこねくりまわして先の先まで考えてしまう性質で、「自分はちゃんと考えてる!」という自負がある。と同時に、自分の考えの甘さも痛いほど感じている。
    そのせいか、自己啓発本とか、主義主張がドンと書かれた文章を読むのはすごく嫌だ。たぶん凝り固まったプライドがあって痛いとこ疲れるのが怖いんだと思う。

    でもこの作品は(もちろん説教臭い内容ではないけど)素直に読めて、自然に心動かされた。それって何でだろう?と考えたのだけど、たぶん木内さんの小説を何冊も読んで、信頼が出来上がってたからかな。小説読んだだけなんだけど、木内昇さんという人をすごく信頼している気がする。

    なんか自分の話ばかりになってしまったけど、改めて、ずっと追いかけたい作家さんだと思った。

  • フォローさせていただいている方のレビューで、萩の月で大爆笑なさったという一文を読み、気になって仕方がなかった本書。
    萩の月、大好き~♪しかしなぜに爆笑??

    謎を解くべくいざ読まん、と勇んで開いた一ページ目。
    ご本人の言葉にもあるように「やる気のない書き出し」で少々不安に。

    ところが、めくった次のページ。
    豪儀な将来の夢(目くらまし)にくすっと笑い、太宰治の当て台詞「俺がそんなに?井伏じゃなくて?」にぷははっと笑い。
    続く妄想大全開には身に覚えがあるものの、笑いながらなんでやねんと突っ込む余裕がまだあったのに、「あげる」の不本意なイカで涙が出るほど大笑い!
    やっと笑いが治まって目にした次の文が、件の「萩の月」。
    いやー、まさかイカと萩の月がコンボとは・・・!
    辿り着いた体育会系らしい結論も、もうなにがなんだかわかったようなわからんような、でまたまた大笑い。
    ・・・噴き出したコーヒー返してください。

    「寂しさの考察」という稿をはじめ、いろんなところに何度も出てくる「寂しさ・孤独」「己の考えていることが誰にも伝わらない」という言葉。
    見るだけではマイナスな印象を受けそうだけれど、けしてそういうふうに書かれているわけではない。
    離れていても繋がっている、そういう存在があればひとりでいても寂しくない。
    言葉はたやすく通じないけれど、発されなかった言葉もなにがしかの力を持ち、その人のたたずまいとなり周囲になにか伝えるのではないか。
    落ち着いた目線で自分と周りを冷静に見つめている文章の底には、大切だと思っている人たちへの揺らがない信頼があるように思う。

    “「孤独」がすなわち「寂しい」とは限らない。”
    寂しがりやの孤独好きのわたしには共感できる言葉がたくさんあり、読んでよかった一冊。

    • 九月猫さん
      円軌道の外さん、こんばんは♪

      こちらこそ、コメントとたくさんの「いいね」を
      ありがとうございます!

      屋台でお酒、いいですね~!...
      円軌道の外さん、こんばんは♪

      こちらこそ、コメントとたくさんの「いいね」を
      ありがとうございます!

      屋台でお酒、いいですね~!
      わたしも一人酒派ですが、寝オチするので家呑みオンリーです(笑)
      屋台、行ったことないので憧れちゃいます♪

      円軌道の外さんも「寂しがり屋の孤独好き」さんですか。
      お仲間ですね(*´∇`*)
      読書が好きな人はそういう傾向が強いのかも??

      そうなんですよね、「孤独」だから不幸とも
      限らないんですよね・・・。
      「孤独」を覚えてはじめて、外との繋がりに気付く事もありますし。
      どんなに仲良くて好きな人でも、始終一緒にいると息が詰まることもありますし。
      独りのときって、自分に向き合って自分のことを考える時間でもありますし。
      (自分のことを考える時間って大切だと思うんです)

      そう考えると「孤独」って「贅沢」な時間でもあるのかもしれません。

      とか、えらそうなこと言ってもわたしの場合、ただ単に
      「本読んでるときは放っておいてよ」ということに過ぎませんが(汗)
      2013/05/15
    • 円軌道の外さん

      屋台いいですよ(^O^)

      最近はオシャレな屋台も多いし
      焼き鳥やおでんやラーメンや
      目の前でさばいてくれて
      新鮮な刺身が食べ...

      屋台いいですよ(^O^)

      最近はオシャレな屋台も多いし
      焼き鳥やおでんやラーメンや
      目の前でさばいてくれて
      新鮮な刺身が食べられる居酒屋風なところもあるし、
      女性だけのお客さんも沢山います。


      風情のある店で呑む日本酒も美味いけど、
      知らない人と風に吹かれて
      壮大な宇宙の話なんてしながら呑む
      お酒がまた格別なんですよ♪
      (大人で良かったって思う瞬間です笑)


      また、一杯やった帰り道の
      上気した頬に当たる夜風が
      今の季節は心地いいし(^^)

      星や月を見上げながら
      小さな声で
      好きな歌を口ずさんで帰る家までの時間も
      孤独だけど
      贅沢だなってホンマ思います。


      自分が好きな小説で
      吉田篤弘の『空ばかり見ていた』という
      連作短編集があるんですけど、

      その中の一編に
      「星はみな流れてしまった」というタイトルで
      不思議な野良猫のホクトと
      屋台を営む夫婦の話があるんです。

      コレを読むと
      いても立ってもいられなくなるくらい
      無性に屋台に行きたくなりますよ(笑)

      スゴくロマンチックな連作短編集なので
      オススメです(^_^)v

      2013/05/29
    • 九月猫さん
      円軌道の外さん♪

      屋台、楽しそうですねぇ(* ̄∇ ̄*)
      寝オチするので、お外飲みはとんとご無沙汰ですが、
      ちょっとふらりと出かけて...
      円軌道の外さん♪

      屋台、楽しそうですねぇ(* ̄∇ ̄*)
      寝オチするので、お外飲みはとんとご無沙汰ですが、
      ちょっとふらりと出かけてみたくなりました。
      ・・・でもうちの町、屋台ってどこにあるのかしら(^^;)
      最近は流行りのバルばかりできてます。

      「星はみな流れてしまった」
      不思議な野良猫のホクト、気になります!
      吉田篤弘さんの『空ばかり見ていた』に収録されているのですね。
      (メモメモ φ(・ω・ ))
      連作短編集は大好きなので、ぜひ読んでみたいと思います♪
      2013/05/30
  • 今日から私の人生の指南書にしたい!それくらい、まっすぐ響いてくるエッセイだった。
    いかにもわかったようなエラそうなことを書くでもどんな感動のエピソードがつづられているわけでもない、どちらかというと、力の抜けた、笑いを誘うくらいのトーンに終始しているのに、読んでいる途中で3回もじーんと泣けてしまった。なぜだ?自分でも不思議なくらい。

    彼女の小気味よい文章もいい。
    こんな風に肩ひじ張らず、身の丈に合った生き方を、それと意識しないでさらっとやっていけたら、とうらやましくもなった。

    自分で作ったそっけないほどのお弁当が恥ずかしくて、窓際に座って外を見ながらかきこむ男子高校生を「かっこいい」と評してしまう木内さんが素敵。

  • 著者が直木賞作家であることは知らなかった.また、女性であることも本書を読み続ける中で分かった次第だ.含蓄のある内容のエッセイ集だ.妙に構えないところや結構ずぼらなところが気に入った、

  • 08年からの雑誌や文藝誌、新聞などで掲載されたエッセイのまとめ本。主に木内氏の生い立ちや身の回りのこと、編集者だった時のこと、「ブンガクの言葉」のような小説エッセイなどが4つに分類されて載っている。
    読んでから気がついたけれど、木内氏が直木賞獲ったのは同時受賞が道尾さんで芥川賞の方も西村賢太、朝吹真理子などかなり個性的な作家さん達の時だったのね。

    「じわじわ読む」に分類された小説エッセイが好き。
    いずれは小説を書いて身を立てたいと思っていた訳じゃなくて、小説を書いてくれと頼まれて気が付いたら小説を書いて生活をしているように、生活の中、思考の中に小説が在る人。
    それが感じられるから好き。

  • 時代小説家にふさわしい小気味よく潔い文章。
    飾ることなくおごることなく端正な文章がスッと心に入り込み、時にはユーモアで笑わせ、時にはじっと考えさせられる。
    私自身、彼女の作品は一つしか読んだことがないが、このエッセイを読むだけですでに虜になってしまった。

    このエッセイの中で木内さんは作品と自分自身は全く別ものであると繰り返すが、それでもなお彼女の人柄の魅力が作品に反映されていると思わざるを得ない。
    一言でいえば“粋”だろうか。
    飾らない正直で無理をしない姿勢がかっこいいのだ。

    木内さんは、人生は風任せ、道草の連続だと言う。
    作家になる野望も持たず、人生の目標も掲げてこなかったと。
    これだけ聞くと努力もせずに成功をした人のように感じるが、いやいやとんでもない。
    努力の人だと思う。
    作家になる意志はなかったと言うが、なるべくしてなった人だと思う。

    それにしても、“萩の月”にまつわるエピソードはたまらなくおかしかった。
    一人大爆笑。
    これを読めただけでもこの本を読んだ価値はあった。
    是非。

    • vilureefさん
      nejidonさん、こんにちは!

      時代小説好きなんですね♪
      私はほとんど読んだことがありません(^_^;)
      だからこのエッセイ集でも歴史上...
      nejidonさん、こんにちは!

      時代小説好きなんですね♪
      私はほとんど読んだことがありません(^_^;)
      だからこのエッセイ集でも歴史上の人物や時代小説家について書かれていることも、ふーん、そうなんだ~くらいで(笑)

      そういえばそうですね、これだけ絶賛しつつ☆4つ・・・。
      私の☆5つの評価は、読後にどれだけ余韻が残るかが鍵ですかね。
      本の世界に入り込んでしまって帰ってこれないそんな状態の時に☆5つにしています(^_-)-☆

      木内さん、名前だけじゃ女性だなんて思いませんよね。最近、作家の名前も色々で性別がわからないことが多いですよね(^_^;)
      2013/03/23
    • 九月猫さん
      vilureefさん、こんにちは☆

      >“萩の月”にまつわるエピソード
      の「萩の月」って、あの仙台銘菓の萩の月のことでしょうか?
      こ...
      vilureefさん、こんにちは☆

      >“萩の月”にまつわるエピソード
      の「萩の月」って、あの仙台銘菓の萩の月のことでしょうか?
      このお菓子、大好きなのでつい反応してしまいました(^m^)
      「大爆笑」エピソードだからお菓子とは違うのかしら??
      ああ、興味津々です!

      上でnejidonさんも書いていらっしゃいますが、
      ブクログでいろんなレビューを読ませていただいていると、
      読みたい本が増えてたいへーん!でもやっぱり幸せ~♪です(*´∇`*)
      2013/03/23
    • vilureefさん
      九月猫さん、こんばんは♪

      そうです!あの「萩の月」です!!
      ここで語ってしまうとネタばれになってしまうので、是非九月猫さんにも読んでほしい...
      九月猫さん、こんばんは♪

      そうです!あの「萩の月」です!!
      ここで語ってしまうとネタばれになってしまうので、是非九月猫さんにも読んでほしいです(^_-)-☆

      ほんとうですよね~、ブクログを始めてからあれもこれもとある種の強迫観念のように本に追われる毎日です(^_^;)
      なかば中毒ですよね、ふふふ。
      2013/03/23
  • 木内さんのエッセイです。
    ゆるい感じが素敵。

  • 図書館の新館の棚にあったので、つい手に取ってしまった。
    書き手は淡々と考える。そして、読まれたものをまた粛々と受けとる。そんな感じか。ひきこまれるとは、違う、なんか不思議な気分。この人の作品、読んでみなくちゃ。

  • 木内昇さんのエッセイ。
    たんたんとした、落ち着いた語り口にほっとする。
    それでも時に「月に暈がかぶってますから、明日は一雨きますぜ」などと江戸っ子口調が出てくるのは歴史小説家ならでは。
    木内さんは可愛い方だな。
    まだ小説の方を読んだことがないので、次はそちらを読もうかな。

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著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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